第699回 効果測定を考える
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
どんな仕事においてもその仕事の成果を測ることは大事なことだと思います。それは、仕事においては結果が求められるからで、成果が得られた結果なのか、そうでない結果なのか、その点を見極めないとその仕事が成功したのかどうかわからないからです。
こういう話は研修においても重要な要素です。特に研修の場合、研修を受けることに意識が向きがちになるんですが、実際には研修で得たモノを実務で活かしてこそ意味があります。そのためには効果測定という考え方が必要になってきます。今回はそんなお話です。
■良い研修とは何か?
研修を行った後は大抵アンケートを取らせてもらっています。
- 先生がとてもエネルギッシュでよかったです。また、内容も分かりやすくとても有意義でした。
- かなり長い時間の講習で大変だったが、実践的ですぐに使えそうな内容の講習でとても学びになった
- 高橋先生の他の講習についても参加したいと感じました。
- 高橋先生のお話の仕方がとても明るく、やる気が出る講習であった。
これらは実際にいただいた声の一部ですが、こうしたアンケートの結果が良い内容であることに越したことはないです。ただ、やはり研修を提供する側からすれば、研修の成果が実際の現場で活かされていることが気になります。
例えば、傾聴の大切さを学んだとしても、翌週の会議で参加者の話を傾聴することができなければ学びは現場に届いていないことになります。
思うのですが、良い研修とは満足度の高い研修であること以上に実務に活かすことができる研修であるべきだと思っています。そのためには、研修は"知識を渡す場"ではなく、"行動を変える場"であらねばならないです。
そして、それを確かめるためには効果測定が必要不可欠だと考えます。
■振り返ることと効果測定の違い
振り返るという行為は研修の感想だと思います。勿論、そこから次に繋げていくことはできるとは思いますが、それだけでは効果測定とは呼べませんよね。効果測定とは研修で感じたことではなく、研修で変わったことを確かめる行為です。
- 研修受講後に行動や習慣がどう変わったか
- 上司や同僚の反応がどう変化したか
- チーム全体の成果にどんな影響が出たか
こうした事実を観察し、記録することで、学びはようやく"効果"へと変わっていきます。単なる数字だけで物事を見るのではなく、行動や空気の変化も含めて測る――それが、研修を次へ活かす鍵となるのではないかと思うんです。
効果測定は一度で終わらせるモノではありません。研修直後、1カ月後、3カか月後――時間を置いて観察することで、短期的な理解から、長期的な定着への流れが見えてきます。実際に経済産業省の調査(社会人基礎力に関する調査報告,2022年)でも、研修後にフォロー面談やアンケートを継続的に行う企業ほど、受講者の行動変化が大きい傾向が報告されているそうです。
一度きりの満足度調査で終えるのではなく、時間を置いて"行動の変化"を確かめることが、効果測定の本質なのだと思います。
■効果測定を考える
効果測定をすることで私たち講師は本当に顧客の役に立っているのかがわかります。だからこそ、そうした効果測定をやりたくないという声も聞かれます。
しかし、私たち講師が研修だけに目を向けて学びを提供する時代は終わりに来ているような気がします。これからの研修は効果測定がなされ、成長を視える化しなければならないと考えます。
単なる満足度の数字だけでなく、行動や意識の変化を見つめること。結果を"評価"ではなく"改善"につなげること。それが、研修を単なるイベントから"成長の仕組み"に変えるポイントなのだと思います。