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第705回 PMBOK第8版とPMP試験のこと

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 こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。

 最近の私の研修は半分がPM絡みだったりします。その中でもPMP受験要件を満たすための講座があるのですが、そちらをほぼ毎週担当させてもらっています。

 そんな中、ついにPMBOK第8版がリリースされました。どのような内容になったかもそうなのですが、このPMBOKの改版によりPMP試験にどう影響してくるのかが気になる方もおられると思います。そこで、今回は現時点での情報を踏まえ、PMBOK第8版と今後のPMP試験についてお話ししたいと思います。

■PMBOK第8版リリース!

 2025年11月13日、PMBOK第8版(英語版)がリリースされました。まだ、現時点では英語版のみのリリースであり日本語を含めた多言語版のリリース時期は発表されておらず、恐らくは2026年中といった感じになるかと思います。

 そんなPMBOK第8版ですが、第7版との違いはこのようになっているそうです。

  • 原則の数が12から6に整理・削減された
  • パフォーマンス領域が8から7に再編成された
  • プロセス群の考え方が改めて取り入れられた

原則の数が12から6に整理・削減された

 第7版は適応型アプローチ(アジャイル・プロジェクトマネジメント)ですが、ベースとなる原則を12から6つに絞ることで、より核心となる行動指針を明確に表現したような感じになっています。
確かに、原則が12もあると分かりづらさも前に出てきてしまうので、6つに絞り込んだのは良い変更だと思います。

パフォーマンス領域が8から7に再編成された

 原則を活用する領域のことをパフォーマンス領域といいますが、第8版では第7版で定義されていた8つのパフォーマンス領域を見直し、7つに再編成しています。これにより、何をプロジェクトマネジメントとして重視しているかという視点が明確になっているように感じます。

プロセス群の考え方が改めて取り入れられた

 これはちょっと意外だったんですが、プロセスの考え方は第6版の予測型アプローチ(ウォーターフォール・プロジェクトマネジメント)の考え方です。第7版になり予測型アプローチは別冊「プロセス群・実務ガイド」という形に収まったのですが、これが第8版になり本編に戻ってきたような形になりました。

 しかも、第6版でのプロセスの数は49だったのですが、これが40に整理されているようです。この辺は詳細な情報がないので何とも言えませんが、7版の適応型アプローチは概念や考え方をメインに押し出していたことにより何をするのかが分かりづらかった点がありました。それをテーラリング(自分たちでカスタマイズして利用すること)という形で利用者に投げかけることで一応の落としどころにしようとした感じでしたが、第8版になってプロセスを復活させたことで、利用者に何をすべきかを明確に表現したかったのかなと思いました。

 これら以外にも色んな変更が盛り込まれているようですが、総ページ数が約400ページになっているそうで、第7版の約250ページから比べるとかなりボリュームがアップしたような感じになってるんじゃないかなと思います。

■PMP試験への影響

 さて、このPMBOKが第8版に改版されたことによるPMP試験への影響ですが、基本的には直接的な関係はないと思っていただいていいと思います。

 というのも、PMP試験はPMBOKの内容ではなくECO(Examination Content Outline)という試験内容の概要から出題されているからです。

 ただ、このECOですが、最近新しい情報に変更されており、新ECOは以下のような内容になっています。

  • PMIタレントトライアングルにおける出題の比率が以下のように変更されている

人材33%(現在は42%)
プロセス41%(現在は50%)
ビジネス環境26%(現在は8%)

  • 各アプローチの出題比率が以下のように変更されている

予測型アプローチ40%(現在は50%)
適応型アプローチ+ハイブリッドアプローチ60%(現在は50%)

  • 出題数が185問になっており、内10問が調査用問題になっている(現在出題集180問、内5問が調査用問題になっている)
  • 試験時間が240分になっている(現在は230分)
  • 休憩時間は5分間×2回を任意で取得することができる(現在は60問終了ごとに10分の休憩を1回ずつ取得することができる)
  • プロジェクトマネジメント経験期間が過去10年までの期間となっている(現在は過去8年までとなっている)
  • 新ECO対応試験は2026年7月からの予定
  • 新ECO準拠のPMI認定PMP試験対策講座は2026年4月からの予定

 PMIタレントトライアングルから見た出題範囲の変更はビジネス環境に大きく割かれる形となり、これは昨今の時流に合わせた変更かなと思います。また、適応型+ハイブリッドアプローチが全体の60%を占めるようになったのも、適応型(アジャイル)によるプロジェクトマネジメントが増えてきたことへの対処なのではないかと推測されます。

 その他細かな修正はありますが、一番大きな影響は新ECOに対応した試験は2026年7月からという点でしょうか。現時点ではまだ私の所に新ECOに準拠した試験対策講座のコンテンツがPMIから届いていないので何とも言えませんが、もしPMP試験を取得しようと勉強されている方は個人的には2026年6月までに取得してしまった方がよいかもしれません。なぜなら、新ECOになることで受験範囲が変わってしまうこともそうですが、PMBOK第8版になったことで新たに覚えなければならない点などが出てくる可能性もあるからです。

■新しい時代のプロジェクトマネジメントに向けて

 私がPM関係のコンテンツを扱うようになってもう3年以上になりましたが、その間ほぼ毎週PMBOKやらPMP絡みの関連書籍とにらめっこしてました。そうすると、ある程度のレベルでプロジェクトマネジメントの考え方が腹落ちしてきます。

 今はそうした自分の中で腹落ちした内容と過去の自分のプロマネ経験を元に講座の提供をさせてもらっています。

 そして、この度のPMBOK第8版のリリースです。これから先PMBOKがどこに向かおうとしているのか、そして私たちファシリテーターは何を伝えていかなければならないのか。そんなことを考えると、何だか楽しくなってきます。

 これからもPM関係の情報がありましたら、随時発信させていただきますね。

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