第675回 教える側の矜持
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
私が人にモノを教える仕事に就かせてもらってから20年以上が経ちます。その間たくさんの内容を人に教えることをさせてもらってきましたが、一貫して守っていることが一つあります。今回はそんなお話です。
■そもそも人にモノを教えることになる場合って
例えば、職場に新入社員さんが配属されることになったとします。新入社員さんは約1カ月の新入社員研修を経て初めての現場です。当然、この現場のことは何も知りません。これからOJTの形で少しずつ学んでいくことになっています。職場では新入社員さんを指導するメンターを選ぶことになったとします。さて、誰を選びますか?
当然のことながら、職場のことを熟知しており新入社員さんがこれから行う仕事をこなすことができる人であることが大前提ですよね。でないと職場のことや仕事のことを教えることができない訳ですから。
そもそも人にモノを教える場合、教えることを熟知しており、それを使いこなすことができている必要があります。ここが絶対にスタート地点にならなければならないはずです。
■教育現場の実情
しかし、実際の教育現場はそうでないケースがよく見受けられます。教育現場はいつも人手不足ということもあるとは思うのですが、研修の進め方や要点、ポイントを徹底的に教え込み、研修を遂行することに特化した人材を育てようとします。
このような人は研修という建付けを実施することについては問題なくできるのですが、教える対象を熟知している訳でもなく、それらを使いこなすこともできません。それでも、この研修を何十回と繰り返していくと研修という場に慣れてくるので、自分の知らないことを訊かれたとしてもちゃんと対応できるようスキルが身に着いてきます。それは俗に言う知ったかぶりのように適当なことを言うのではなく、ちゃんとわからないことを分からないと伝え、後から調べて伝えるという至極真っ当な方法なのですが、こうした方法を身に付けてしまうと、知らないことがあっても講師スキルで対応ができてしまうんですよね。
講師の立場からすれば、そうした対応ができることは誠実であり良いことではあるのですが、一方でいつまで経っても教える対象は研修の範囲の内容でしか理解できておらず、使いこなせないままのことが多いです。それでも、先ほどお伝えしたように研修を成立させることはできてしまっているので、このような状態であっても問題視されないんですね。
私はこれが教育現場の実情だと思っています。
■教える側の矜持
冒頭でもお伝えしていますが、私は人にモノを教えることになってから一貫して守っていることが一つだけあります。それは、自分が何かを教える場合、それを熟知して使いこなせているようになっていることです。中途半端にしか知らない、使えないといった内容を人に教えることは絶対にやりません。というかやりたくないです。
だから、今でこそ目をつぶってても対応できる7つの習慣の研修(ワークセッション)も、研修を提供するすることになったタイミングで私は7つの習慣を徹底的に実践することにしました。そうして自分の中で7つの習慣の効果が理解できるようになってから人に7つの習慣を伝えるようにしています。
また、今は国家資格キャリアコンサルタントの更新講習(技能講習)を担当させてもらっていますが、ここでお伝えする内容はすべて私は実践ができます。例えばシステマティックアプローチの詳細を解説する際、私は受講生さんを前にして面接RPを実演します。そうして私が教えていることを実際に見てもらうことで技術やスキルを習得するきっかけにしてもらうようにしています。
これは私の体感ですが、キャリコンの指導をされている先生はあまり実演をされる方はおられない印象があります。過去にある先生にその理由を訊かせてもらったことがあるのですが、その先生は自分のスタイルを見せてしまうとそこに凝り固まってしまう危険性があるから実現しないのだそうです。これを訊いてどのように判断されるかは人それぞれですが、私は受講生がどのように受けるかは受講生の判断なのでそれをこちら(先生側)が考えても仕方がないことだし、教える側にる最大限のことは実演だと思うので、私は積極的に実演をする立場を取るようにしています。
これが私の教える側としての矜持です。これだけは人にモノを教える仕事を続ける限りずっと守り続けていきたいと考えています。