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第626回 ファシリテーションを考える

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 こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。

 今回のコラムは前回からの続きです。前回は私の考える研修におけるeラーニングの効果的な活用方法を紹介させていただきましたが、この内容には一つ大きな問題を孕んでいます。それがファシリテーションです。今回はこのお話です。

■研修コンテンツは用意できたとして...

 前回のコラムを一部引用します。

 この問題を解決する一つの鍵になるのが私はeラーニングだと考えています。eラーニングをワークセッションに取り込むことによって講師の質に頼らない一定レベルの学習コンテンツを提供することができるようになると考えています。

 そして、このeラーニングにホワイトボードアプリケーションとアジャイルの概念を組み込んだ研修スタイルがワークセッションの発展形であり、現時点における研修の理想形に近い姿だと考えており、私はこれを自律型研修と呼んでいます。

 ここに書いてあることは確かにその通りなのですが、一点問題があります。それは「講師の質に頼らない一定レベルの学習コンテンツを提供する」という点です。

 確かにeラーニングを使えばコンテンツのレベル感を一定レベルまで引き上げることはできます。それはeラーニングコンテンツを視聴する上で分かりやすい説明や解説を提供しやすいからですが、こうしたコンテンツの伝え方や説明の仕方は講師の持つプレゼンテーションスキルに左右されます。

 自律型研修ではeラーニングコンテンツを自らが学び、実践し、評価することで参加者自らがコンテンツを習得していくことを目指していますので、eラーニングは「学ぶ」領域に限定され、どう「実践」し、どう「評価」するのかは誰かが指し示さなければならないのです。

■ファシリテーションとは

 そこで出てくるのがファシリテーションです。日本ファシリテーション協会(FAJ)の定義を引用させていただきます。

ファシリテーション(facilitation)とは、人々の活動が容易にできるよう支援し、うまくことが運ぶよう舵取りすること。
集団による問題解決、アイデア創造、教育、学習等、あらゆる知識創造活動を支援し促進していく働きを意味します。
その役割を担う人がファシリテーター(facilitator)であり、会議で言えば進行役にあたります。

日本ファシリテーション協会(FAJ)より引用

 一般的にファシリテーションといえば会議をイメージされる方が多いのではないでしょうか。会議の推進役としてファシリテーターが会議の参加者から様々な意見を引き出し、時には戦わせ、結論へと導いていく、そんな役割です。こうした推進役というのは研修においても必要で、これが先ほどお話した

自律型研修というのはeラーニングコンテンツを自らが学び、実践し、評価することで参加者自らがコンテンツを習得していくことを目指しています

を体現させていく役割になります。つまり、研修においては

プレゼンテーションスキル...コンテンツを伝える能力
ファシリテーションスキル...研修を推進し目的を達成させる能力

に大別されます。私が提唱する自律型研修はプレゼンテーションスキルを極小化し、ファシリテーションスキルを極大化させていくことを目指しています。そのため、従来の研修講師の枠組みとは少し違う役割が求められます。具体的には従来型の研修のようにコンテンツを説明するプレゼンテーションスキルはそれほど必要としない一方で、コンテンツで学んだ内容をどう実践し、評価するか、その方向性を指し示すためのファシリテーションスキルが重要になってきます。

■これからの研修に求められる講師の姿

 私はこれからの研修に求められる講師の姿はプレゼンテーションとファシリテーションに大別されていくのではないかと考えています。勿論、eラーニングよりも講師が直接ライブで熱を持ってコンテンツを伝えていく方が効果は高いですし、その役割はなくなることはないでしょう。それ故、そこに特化した講師はこれからもあり続けると思います。

 一方で研修を提供する側から考えると、そうしたスタイルはも属人化を招いてしまうという問題が出てきます。要するに「その人がいなければ研修が成立しない」状況を生み出してしまうのです。それは一定水準を満たすコンテンツの提供を難しくする要因になってしまいます。

 このような問題を解決する方法の一つとして私は自律型研修があると考えています。プレゼンテーションスキルが求められる部分はeラーニングコンテンツに任せ、それらを包括する研修全体を推進するファシリテーターが担う。ファシリテーションスキルはある程度やり方や枠組みは共通化できるので、ファシリテーションスキルを習得すれば、ある程度はどのような研修においてもアジャストさせていくことはできると考えています。

 こうしたことから、これからの研修においてファシリテーターの役割はどんどん広がっていくのではないかと思っています。

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