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第472回 プロセスを重視する

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 こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。

 スキルの習得を目標とした研修を行う場合、スキルを使う実践を想定したトレーニングをよく行います。トレーニングの前にスキルの有効性や有用性、効果などを説明した上で実際のトレーニングを行います。その際、参加者はスキルを使い目的を達成させることを意識して行いますが、トレーナー側は少し違う視点を持っています。今回はそんなお話です。

■例えば、ファシリテーションのトレーニングで

 私が担当する研修はキャリコンや傾聴系、7つの習慣などが多いのですが、時々ファシリテーションの研修などもやらせてもらっています。特に最近はオンライン会議やオンラインミーティングが活発になっていることもあり、オンラインにおけるファシリテーショントレーニングの需要も高まっているような感じです。ちょうど先日もオンラインでファシリテーショントレーニングを担当させてもらいました。

 この時は事前にオンラインファシリテーションの考え方や技法などを説明した上でで、いつものようにトレーニングに入りました。トレーニングでは仮想のオンラインミーティングを用意し、ファシリテーター役と参加者役に分かれてディスカッションをしてもらいます。ファシリテーター役は参加者役の熱量が上がり、ディスカッションが深まり、全員で結論を出していくようなファシリテーションを実践してもらいます。それを時間を決めて参加者全員が順番にファシリテーター役を務められるようにトレーニングを行いました。

 そうしてトレーニングが終わり、一人ずつに感想を聴いてみると、

「今回はちゃんと結論が出せました」
「今回は時間の関係で結論を出すところまではいけませんでした」

のような結論を意識した回答をされる参加者が多くおられました。

 勿論、これは参加者の感想なのでこれはこれで良いのですが、これらの感想から考えられる事としてトレーニングにおける参加者の意識は結論に向いていたことが分かります。つまり、研修で学んだスキルをトレーニングの場で使ってみて議題の結論を出せた、出せなかったという点をポイントと捉えておられたような感じがしました。

■トレーナーが考えていること

 しかし、トレーナーの目線は少し違います。正直に言えば結論が出るとか出ないとかはあまり意識を向けていません。それでは、一体何に意識を向けているか? それは、過程、つまりプロセスです。そのため、先ほどのような結果を重視した感想を答えれらた方には、追加でこんなことを聴いています。

「研修で学んだスキルをトレーニングでどのように使ってみたか? 」
「使った結果、どのように感じたか? 」
「スキルがうまくいった時、どのような感覚があったか? 」
「スキルがうまく使えなかった時、何が原因でできなかったか? 」
「このスキルを普段の仕事で実践する場合、何が障害になりそうか? 」

 こういったことを聴くことで、参加者の意識は結果よりもプロセスの方に向きます。プロセスに意識が向くからこそ、研修で学んだことを活かせているかどうかが分かります。そのように意識を向けることが、研修で学んだスキルを普段の仕事や実生活で活かすポイントになると、私は思っています。

■プロセスを重視する

 この考え方は研修だけに留まる話ではありません。普段の仕事や生活においても言えることです。

 例えば、上司が部下に仕事を教えた時のことを考えてみます。この時、部下は仕事がちゃんとできたかどうかを意識して仕事をすることでしょう。しかし、上司は結果はもちろんのことですが、それと同時にどのようなプロセスで仕事をしていたかに意識を向けられるのではないでしょうか。

 それは俗に言う「魚を与えるな、魚の釣り方を教えよ」ということに近い考え方のような気がします。仕事の結果だけを見てしまうと、その結果はたまたま偶然得られたモノかもしれません。だとしたら、次回同じことをしても望む結果は得られないかもしれません。だからこそ、どうやってその結果が導き出されたのか、そのプロセスを重視します。プロセスを意識した上で結果が得られたのであれば、次も同じプロセスを踏めば同様の結果が生まれる可能性は高まります。しかし、意図していないプロセスで結果が得られた場合、次回も同じ結果が生まれるとは限らないのです。

 何か結果が生まれた時、そのプロセスを振り返るだけでも仕事の正確さや品質を高めることに繋がります。これは私自身に言えることですが、やっぱりプロセスを重視することを大事にして仕事を続けていかないとなぁと思っております。。。

Comment(2)

コメント

ちゃとらん

いつも楽しく拝読させていただいています。


『プロセスを重視する』…まったくもって、賛同いたします。


> 結論を意識した回答をされる参加者が多くおられました
これって、日本の教育が『正しい答えを正確に早く求める』事を重要視してきた結果なんじゃないかと思っています…政府批判とかじゃなく、高度経済成長を支えた頃には良かったと思います。
ですが、変化の時代、不確定要素が多い時代においては、そもそも『正しい答え』があるのかどうかも不明ですし、『今日は正しい』事が『明日は間違い』という事もあります。
結果に一喜一憂するのではなく、プロセスそのものを楽しむ姿勢が重要なんじゃないかと思っています。
# 若干、趣旨がずれてしまいましたが『プロセスを重視する』に至るプロセスだとお考え下さい。(^^)

キャリアコンサルタント高橋

ちゃとらんさん


いつもコメントありがとうございます。


>これって、日本の教育が『正しい答えを正確に早く求める』事を重要視してきた結果なんじゃないかと思っています…政府批判とかじゃなく、高度経済成長を支えた頃には良かったと思います。


私も同様の考えです。
仕事をする上でよく言われるホウレンソウなどもそうですが、


「わからないから教えてください」ではなく
「〇〇を調べ△△だと考えたのですが、この考え方で正しいでしょうか」


のように使うことを推奨されたりしています。これは正に答えありきの訊き方でこういった表現方法からも結論を意識するような会話を良しとすることが私たちの生活に根付いていることの表れではないかと思います。。。


>ですが、変化の時代、不確定要素が多い時代においては、そもそも『正しい答え』があるのかどうかも不明ですし、『今日は正しい』事が『明日は間違い』という事もあります。
>結果に一喜一憂するのではなく、プロセスそのものを楽しむ姿勢が重要なんじゃないかと思っています。


そうですね。。。
「プロセスを楽しむ」という姿勢が何より大切なことなのかもしれませんね。

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