第423回 Zoom研修を考える・その2
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
Withコロナの時代になり、研修の在り方も変わってきました。既に集合形式の研修は行われることが少なくなり、それに代わってZoomなどのツールを使ったWeb形式での研修が大勢を占めるようになりました。私も既に何度もZoom研修を行っており、その様子は過去のコラムに書かせていただきました。あれから更にZoom研修の回数を重ねてきましたが、いろいろ見えてきたことがありました。そこで、今回はZoom研修について新たに気づいたことをお話させていただきます。
■これまでのZoom研修のスタイル
以前のコラムで私が提唱したZoom研修のスタイルは以下のような方法でした。
- トレーナーは研修を進行する「スピーカー」とZoomの制御を行う「コントローラー」の役割を置く
- スピーカーは集合研修のようにパワーポイントのスライドをモニターやプロジェクターを表示させる
- Zoomのスポットライト機能を使いスピーカーを大きく表示させた上で、ライブ配信の形でスピーカーが研修を進行させる
- 参加者同士でディスカッションをする場合、Zoomのブレイクアウトセッション機能を使い、少人数でディスカッションを行い、その内容をシェアする
- 参加者が何かしらの発表をする場合、コントローラーが参加者にスポットライトを当てて発表してもらうようにする
他にも幾つかのルールはありますが、概ねこのような感じです。
元々、Zoomには画面共有の機能があり、パワーポイントのスライドを表示させるだけならば画面共有の機能を使った方が見やすいです。しかし、この方法だと研修に参加している感覚が薄くなっているように感じていました。そこで、研修をライブ配信する形にすることで参加者も研修に参加してもらう意識を持ちやすくなるのではないかと考えました。このやり方はYoutubeの教育系チャンネルや予備校などが行っているオンライン授業のような形に近いのかもしれません。
結果的にこの方法はかなり有効で、スライドを画面共有し音声を重ねるだけの研修よりも参加者の満足度は高かったようでした。
しかし、この方法にも納得できない点がありました。
■現在のZoom研修スタイル
私は研修の中で気づきを生み出すワークセッションというやり方を実践しています。ワークセッションとはワークショップという参加者が作業やディスカッションを行うことで気づきを促す手法を発展させた方法で、トレーナーが答えを提示するのではなく、参加者同士のやり取りの中で答えを生み出していくようなやり方です。
この方法を実現させるためには参加者同士の会話が絶対に必要になります。参加者同士の会話が深まることで研修としての「場」の熱量が上がり、それが参加者への気づきに繋がっていきます。私はどうにかしてこれをZoom研修で実現させたいとずっと考えてきました。しかし、先ほど紹介した方法だとどうしてもワークセッションまでは行きつくことができませんでした。それはなぜか? 原因をいろいろ考える中である結論に達しました。それは、
全員でディスカッションをしていないから
でした。Zoomには画面を表示する方法として「スピーカービュー」と「ギャラリービュー」という2種類の表示方法があります。スピーカービューというのは特定の人を大きな映像で表示させ、その人に注目させる表示方法です。それに対してギャラリービューは参加者全員が均等に表示される方法です。
元々、私はディスカッションをする際、参加者全員でディスカッションすることは有効ではないと考えていました。それはディスカッションに参加する人数が増えると発言しない人が増えてきたり、特定の人ばかり発言したりするようなことが起こってしまうからです。これは集合形式でディスカッションをしていた時に強く感じていたことでした。そのため、集合研修でディスカッションをする場合は人数を絞ってテーブル(島)単位で行い、その後各テーブルの内容を順に発表してもらうことで、参加者全員に情報を共有するようなやり方をしていました。
Zoom研修の検討を始めた当初、私はこの考え方を強く持っていたので、Zoomのブレイクアウトセッションの機能を使って少人数のグループを作り、そこでディスカッションをしてもらった内容を全員に共有してもらうような集合研修と同じやり方を考えていました。
しかし、実際にやってみるとこの方法だと効果が薄いように感じたのです。というのも、ブレイクアウトセッション中はそこに参加してにいる人しか情報の共有ができませんし、その内容を発表してもらうにしても、その人にスポットライトを当ててしまうと、他の人が置き去りになっているような感が拭えなかったのです。要するに、スポットライトという機能はスポットライトを当てられた発表者とトレーナーとの間でのやり取りでしかなく、他の参加者が置き去りになってしまうように感じたのです。
そこで、全員が同じ大きさで表示されるギャラリービューを使って全員でディスカッションをしたらどうかと考えました。しかし、これだと発表できる人とできない人が出てしまいます。そのため全体でディスカッションをする前に、数分間2~3人一組でブレイクアウトセッションを行い、議題に対する考えをまとめてもらうようにしてみました。こうすることで、参加者は何かしらの考えを持った状態で全体のディスカッションに参加できるので、誰に意見を促しても皆一様に考えを発表できるようになりました。
ここまで来ることができれば、後はトレーナーのファシリテーションスキルを使い、参加者同士で意見を戦わせたり、考えを深めさせたりするようなファシリテーションを行っていきます。その際、一人一人の画面の大きさが均等であるギャラリービューの方が全員が平等に発言できるイメージを促すことができますし、他の参加者の様子が伺えるので発言してもらう参加者を探しやすくなります。そして、これは参加者全員が同じように表示されるギャラリービューの方が集合形式の時よりも漏れがなくやりやすいイメージを持ちました。
この方法はまだ試行錯誤中ですが、こちらの意図がハマった時はZoom研修であっても大きな熱を生むことが分かりました。集合研修とは逆の考え方がZoom研修で有効になるのは正直かなり意外でしたが、これは集合研修にはなかったZoom研修だけの新たな強みだと考えております。
■Zoom研修だからこそできること
私はZoom研修は集合研修の劣化版だと考えていました。それはZoom研修では集合研修の効果を生み出せないと考えていたからです。しかし、今回のようにZoom研修だけの強みがあり、Zoom研修であってもワークセッションの体現ができるのであれば、それはもはや劣化版などではなくなります。むしろ集合研修とは違い、参加者がどこからでも参加できることを考えると、集合研修の進化系として新たな研修の形と捉えることができるのではないかと考えています。
これは私だけの考え方かもしれませんが、新型コロナウイルスのワクチンや治療薬ができたとしても、恐らく研修の姿は元に集合形式には戻らないのではないかと思います。それは、Web形式の研修であっても集合形式の研修と同等以上の効果が生まれることが分かってくれば、会場代、交通費などのコストのかかる集合形式の研修を行うメリットがなくなってくると思うからです。
図らずともこのようなZoom研修がクローズアップされてきている今、Zoom研修の可能性を追求し新たなスタイルを作り上げていくことが、この時代を生き抜く上で必要なことではないかと思います。
ですので、私はこれからもZoom研修の可能性を追求していき、今以上に効果性の高いZoom研修を提供できるように努力していきたいと思います。
コメント
ちゃとらん
素晴らしい取り組みを拝読させていただき、私も仕事に対する熱量がアップしました。
『Zoom研修は集合研修の劣化版→集合研修の進化系』
というあたり、色々と創意工夫を積み重ねられているからこその発想だと感心いたしました。
案外キャリコンの国家資格も、情報処理技術者試験みたいに、Zoom研修資格とかに細分化されてきたりして…
キャリアコンサルタント高橋
ちゃとらんさん
コメントありがとうございます。
Zoom研修ネタはニッチなので刺さりにくいと思っていたのですが、私の備忘録的な意味もあって書かせていただきました。
今の現状をどう見るかは私に委ねられていることなので、なるべくポジティブに捉えていきたいなぁと思っています。。。
>案外キャリコンの国家資格も、情報処理技術者試験みたいに、Zoom研修資格とかに細分化されてきたりして…
この状況が長く続くようになってくると、本気でこういったことになってくるかもしれませんね。