第395回 傾聴をネタにダラダラ話してみる
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
コラムネタは毎回思いつきで書いたり、ネタがないときは何も考えずに指だけを動かしていると何となく話ができ上がってくるのですが、白柳さんのコラムで私の名前がほんのちょこっと出てましたので、今回はこのお話に絡ませてもらおうと思います。
ただ、今の時点でノープランなので、正直どんな内容になるか書いてみないとわかりません。。。ですので、お題を「傾聴をネタにダラダラ話してみる」にさせてもらいました。
■傾聴とは何ぞや?
白柳さんのコラムではちゃとらんさんのコラムで話されていた傾聴のお話に対し、別の視点で傾聴を語られています。とても興味深いお話なので、まずはそちらをぜひお読みいただければと思います。
で、実践する立場として私がどのように傾聴を捉えているか?ですが、傾聴は「場」を作るようなモノだと思います。その「場」というのは信頼関係といい換えることもできますし、何を話しても大丈夫という安心安全の場という意味合いもあります。
ではなぜこの「場」を作ることが必要なのか? それは傾聴する側の目的を達成するためにあるからです。
傾聴は相手を受容し、共感することで相手との間に信頼関係を築きます。また、傾聴によってたくさんの言葉を語ってもらうことで、相手の心の中をオープンにします。これは誰しもが考える傾聴の効果です。
しかし、問題は「なぜそうしなければならないのか? 」です。
例えば、キャリコンならば、相手のキャリアをつくるためにはこういった場が必要だと考えているからです。上司が部下に対して傾聴するのも、部下の話を聴くことで、上司の想いや考えを理解してもらおうという思惑があるからではないでしょうか。
傾聴は単なる手段でしかありません。傾聴によって何を求めているのか? に意識を向けないと本質が見えなくなってしまうかもしれません。。。
■傾聴した後に対決したらダメなのか?
ちゃとらんさんのコラムで私が少しだけピクっとなったのは傾聴によって信頼関係が築かれた後、ビジネスライクな話をしたことで関係性が悪化するというくだりです。ちゃとらんさんの言葉を読み解くと、せっかく傾聴をしていて信頼関係が築けていたのに、ビジネスライクな話をしたことで対立構造ができてしまい、それが関係性の悪化につながってしまうということではないかと思います。実際、こういったことは仕事をしていればよく起こることですよね。
ただ、キャリコンでもそういった対立構造は起こります。
例えば、今の仕事を転職したいと考えている相談者がいたとします。そうした場合、キャリコンはまず傾聴に徹し相談者の考えや想いを明らかにしていきます。そうして、相談者との間に信頼関係が築けたとしましょう。
そうすると、次にキャリコンはこの相談者の本当の問題を探りに行きます。仕事を転職したいというところを掘り下げてみると、どうも現場の人間関係、特に上司との折り合いがつかないということが分かってきました。そこで、相談者の抱えている本当の問題は、転職するではなく現場の人間関係にあると考えました。
しかし、ここで一つの問題が出てきます。それは、キャリコンが考えた本当の問題(現場の人間関係)を相談者に納得してもらわなければならないということです。
話の流れを考えればお分かりかと思いますが、傾聴は単に問題の本質を掘り下げているだけで、その本質を理解しているのはこの時点ではキャリコンだけです。この状態は単にキャリコンが「これって現場の人間関係に問題があるよなぁ...」と思っているだけなのです。そして、この段階では相談者は転職したいと思っており、キャリコンは人間関係に問題があると思っていますので、相談者とキャリコンとの間に対立構造ができ上っているのです。
それでも、キャリコンの目的は相談者のキャリアづくりにある訳ですから、キャリコンは本当の問題を相談者に伝え、合意してもらわなければならないのです。そうしなければキャリコンを進めることができません。つまり、キャリコンは相談者との間にある対立構造に対して向かっていかなければならないのです。。。
■介入の必要性
この対立構造の解決を白柳さんはマネジメントの視点で語られています。一応私もPMPを持ってますので、それはそれでよく理解できます。ただ、キャリコンの立場からすればこの対立構造を解決するキャリコン技法もあります。それが介入という技法です。
介入については過去のコラムで書いていますが、介入はキャリコンをしていれば当たり前に出てくる話で、実は傾聴と同じくらい重要な技法です。キャリコンの指導をしているととてもよくみられるのですが、傾聴は上手なのですが介入を苦手としているキャリコンさんが本当に多いです。キャリコンでは最初に傾聴のトレーニングをしますが、傾聴のトレーニングばかりしすぎるあまり、介入に恐怖感を抱き、話を聴くことしかできない「いいなり型」と呼ばれるキャリコンになってしまっていることがあります。
ですので、キャリコンであってもなくても意見の対立が起こることは悪いことでも何でもなく、寧ろそういった対立構造ができたとしてもそれを解決することが求められます。
介入にはいくつかの方法がありますが、私がよく使う方法に論理療法(ABC理論ともいいます)があります。これは「認知の歪み」に着目する方法で、相手の考えに認知の歪み、いい方を変えるならば相手の思い込みに着目し、それを正しい考えに修正する技法です。
それ以外にも拙著「部下とチームが動き出す! 聴く技術」にも対立関係にある上司と部下が傾聴や介入によってどのように問題解決をしていくかをご紹介しています。良かったらご覧ください。
■まとめ
ここまでの私の考えをまとめます。
- 傾聴はあくまで技法であり、傾聴だけですべてが解決する訳ではない。傾聴によって何をなしたいのか?を考える必要がある
- 会話によっては傾聴の先に対立構造ができることもあり、対立構造を解決するための方法や技法も必要
そして、傾聴も介入もどちらもコミュニケーションの一つだと私は思います。そういった意味ではコミュニケーションも技法と捉えることができます。こういったコミュニケーションには本当にたくさんの技法があります。確か過去にコールド・リーディングの話を書かせてもらったかと思いますが、こういった技法は占い師やマジシャンの方が好んで使われます。
つまり、コミュニケーションもツールでしかなく、本来はコミュニケーションで何をしたいのか? を考えるべきではないかと思います。例えば、「相手に喜んでもらいたい」という目的でコミュニケーションというツールを使うのであれば、ちゃとらんさんがおっしゃるように「誠実さ」というマインドが必要になるのはとてもよくわかります。
こういった話は答えが一つではないので、どのスタンスに立つかによって答え方が変わってくると思うのです。ですので、私は白柳さんの意見、ちゃとらんさんの意見もなるほどなぁと思います。大切なことはこういったいろんな考え方の中から自分ならどのような立ち位置に立って行動していくことか?ではないかと思います。