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第90回 アドリブ力を考える

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 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。

 研修を行う場合、通常は事前にタイムスケジュールを立て、そのスケジュールに従って研修を進めます。しかし、研修はなまものですので、タイムスケジュールどおりに進まないことがよくあります。先日行った研修もタイムスケジュールどおりにできなかったのですが、このときはタイムスケジュールと大きく離れてしまいました。今回はそのときの話から、アドリブ力について思うことを書きます。

■予定どおりに進まない理由

 一般的に研修がタイムスケジュールどおりに進まなくなる理由は2つあります。1つめの理由はワークの実施で上がりすぎたり、質疑応答などで予定時間より多くなってしまうケース。特にワークで盛り上がりすぎたりすると、大きくタイムスケジュールを超過してしまいます。この場合、以降のコンテンツの内容を変えずに多少時間を圧縮させたり、休憩時間を少し短くすることで時間調整を行います。また、このようなことが起こることを想定し、あらかじめタイムスケジュールを作る段階である程度の予備時間を盛り込んでおくことでスケジュールのずれを防ぐようなことをします。

 もう1つの理由はワークの実施が思いのほか早く終わってしまい、時間をもて余してしまうケース。何かしらのゴールを設け、制限時間内にゴールまで行き着くことを目的としたワークだと、参加者の反応が良く、こちらが想定していた時間よりも早くワークが終了してしまうことがあります。ただ、このようなケースはまれで、また仮に起こったとしてもそれほど多くの時間が余るわけではないので、3~5分程度の小噺を1つか2つ挟むか、そのまま研修を進めながらして時間調整を行います。

 このように、予定していたタイムスケジュールからかけ離れてしまった場合、講師はそれぞれのケースに応じた方法でなるべく早くタイムスケジュールの流れに戻せるように時間を調整します。

■時間はせま~る、気はあせ~るぅぅ~♪

 先日行った研修では、主催者側の問題で開始時間が15分ほど早く始まりました。ただし、終了時間の変更はないため、単純に研修時間が15分増えたことになります。通常、この程度の時間の変更は研修を進めながら、それぞれのコンテンツで時間を調整させれば何とかなりますので、研修開始時にはそれほど問題視していませんでした。しかし、いざ研修が始まり、あらかじめ用意していた30分のワークを始めると状況が一変しました。なんと、そのワークが15分ほどで終わってしまったのです。つまり、そのワークが終了した時点で30分ほど予定より早く進んでしまったことになります。

 まさか30分早く研修を終わらせるわけにもいきませんし、以降のコンテンツで時間調整をしながら研修を進めたとしても、恐らく30分の余り時間をゼロにすることはできません。だからといって、講演のように30分喋り続けるのは今回の研修の趣旨とも合わなくなりますし、主催者側の思惑からも外れてしまいます。そんなことを思いながら研修を進めていたのですが、やがて、研修のプログラム上、これ以降内容の変更ができなくなるところまできてしまいました。

 プログラムを変更するにせよ、それを決めなければなりません。刻一刻と決断する時間は迫ってきますし、気は焦ります。頭の中はアスレチックゲームのCMの『時間はせま~る、気はあせ~るぅぅ~♪ 』のフレーズが駆け巡っています。

アスレチックゲームのCM:かなり古いCMですので、恐らくナイスミドルな人はご存知かもしれません。YouTubeにCMがアップされていましたので、気になる方はこちらをご参照ください。

 そして、思わず「少し時間が余ったので、これから新しいワークをやります! 」といってしまいました。。。

 結局、新しいワークはこのコラムでも以前に紹介した「後出しジャンケン」をカスタマイズした内容を即興でつくりました。このとき行ったワークは以下のようなモノです。

  1. 最初に、全員で後出しジャンケンを行う(10分)
  2. 次にチームごとでディスカッションしてもらい、必ず後出しジャンケンで負けることができる方法を考えてもらう。その後、各チームから代表者一人を選抜し、講師と後出しジャンケンを行う(15分)
  3. 最後に、どうすれば後出しジャンケンで勝つことができるかを全員で共有し合った後、解答例を伝える(5分)

 これは、「ジャンケンで勝つ」という習慣を超えることができるかを考えてもらうワークで、チームビルディング、合意形成、役割の明確化、水平思考、ゼロベース思考などの効果を狙いました。

 結果は大いに盛り上がり、無事余った時間をこのワークで補うことができました。ちなみに、このワークの解答例ですが、水平思考で考えると案外簡単に答えがみつかったりします。例えば、「ジャンケンをする際、他のチームが出す手だけを見て、その手と同じジャンケンを出すようにしてみる」のも1つの方法だと思います。

水平思考で考える:前提条件が「ジャンケンで負ける」とあるので、この前提条件を疑い「ジャンケンは負けることができない」と捉えます。そこから、この問題を「ジャンケンをしないで負けることができるか? 」と言い換えてみます。後はその方法を考えれば良いので、ここでは他のチームが出すジャンケンの手なら早いタイミングで真似をすることができるのではないと考え、上記の答えを導き出しています。水平思考については、『第37回 四方山話(19) 水平思考のススメ』もご参照ください。

■アドリブって大事!

 今回はたまたま運良く切り抜けることができましたが、人間は追い詰められるといろいろと発想が生まれてくるのかもしれません。ただ、その発想の源は自分の経験にもとづくものであるということ、それらを繋ぎ合わせて新しいモノをつくり出すことをアドリブっていうのかなぁと強く感じました。もし、そうだとすると、

  • 発想の源を得るため、普段からたくさんの経験を積むこと
  • 水平思考やゼロベース思考などで考える癖づけをすること

をやっておくと、ひょっとしたらアドリブ力が上がるのかもしれません。でも、その前に『こんなはずでは~、なかったにっ!とならないように事前の準備を怠らないことが大切ですね。

こんなはずでは~、なかったにっ! :先ほどのアスレチックゲームのCMの後半で出てくるキメ台詞(? )です!

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