第49回 四方山話(31) 論理思考のススメ8
こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。
これまで7回に渡り論理思考ネタを紹介してきました。今回は最終回として、これまでの内容をおさらいし、論理思考を実生活に役立てることについて考えてみたいと思います。
■これまでのおさらい
このコラムで紹介した論理思考は2つの要素から成り立っています。
《論理思考に必要な2つの要素》
- 論理的な考え方を身に付けること
- 問題解決のフローを身に付けること
「論理的な考え方を身に付けること」では、物事を論理的にとらえるために必要な3つの考え方と手法を紹介しました。
《論理的な考え方を身に付けるための3つの手法》
- 話の筋道が通っているか?
話の筋道や理屈が通っているかを考えることで、演繹法、帰納法の考え方を使う - 選択肢の漏れがないか?
判断の基準となる選択肢をすべて見付け出しておくことで、MECEの考え方を使う - 論点がズレていないか?
命題に対する対する原因と結果の結び付きを考えることで、因果関係の考え方を使う
↓
これらを統合する手法として、ロジックツリーの考え方を使う
《ロジックツリーの種類》
- So Whatツリー
下位の階層に対して、「その意味は? 」の視点から分解していくロジックツリー。事象における全体像やイシュー(課題)を明確にする効果がある - So Whyツリー
下位の階層に対して、「なぜ? 」の視点から分解していくロジックツリー。物事の原因を明確にする効果がある - So Howツリー
下位の階層に対して、「どのように? 」の視点から分解していくロジックツリー。物事の方法を明確にする効果がある
「問題解決フローを身に付けること」では、求める答えを論理的に導き出すための方法として「問題解決フローの4段階」を紹介しました。
《問題解決フローの4段階》
第1段階:課題(イシュー)の把握(何をするのか?)
第2段階:問題箇所の特定(どこが悪いのか?)
第3段階:原因の発見(どうして悪いのか?)
第4段階:解決策の検討(どうすればよいのか?)
このようにまとめてみると、「論理思考」という言葉1つを取ってみても、その範囲は多岐に渡ることが分かります。ただ、思考法はあくまで何かしらの問題を解決するためにあります。使いこなせてナンボの世界なのです。そのため、今回は問題解決フローの4段階を使い、実生活における問題を考えてみたいと思います。
■最後の問題ですっ!
それでは、論理思考ネタの最後になる問題を用意してみました。一緒に考えてみましょう。
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《問題》
なかなかお金が貯まらないのを何とかしたい!
(独自問題)
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見覚えのある問題だなぁと気づかれたアナタ! 鋭いっ! この問題は論理思考ネタの前に紹介した水平思考ネタの最後の問題です。論理思考と水平思考、まったくアプローチの違う2つの思考法を使って問題を解くとどのような違いが生まれてくるのか、その点にも気をつけて読み進めてください。
■第1段階:課題(イシュー)の把握(何をするのか?)
さて、第1段階から考えてみます。この段階では目の前の問題から課題(イシュー)を把握することでした。「お金が貯まらないのを何とかしたい! 」ということは、「お金を貯めて何かをしたい」ということです。しかし、現状はお金がないのでその「何か」を手に入れることが困っている状態です。そう考えると、この問題は「お金が貯まらないので困っている」といい換えることができそうです。
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問題(いい替え):お金が貯まらないので困っている
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それでは、お金が貯まらないことで何に困っているのか、So Whatツリーを使い考えてみましょう。
このツリーからはいろいろな理由を浮き上がってきましたが、ここでは不動産、特に家を買うということを一番の理由だと考えましょう。
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問題(いい換え):お金が貯まらないので困っている
↓
(お金が貯まらないことで…)
↓
課題(イシュー):家が買えなくて困っている
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■第2段階:問題箇所の特定(どこが悪いのか?)
この問題における課題(イシュー)が明確になったので、第2段階に進みましょう。ここでは、問題個所の特定を行いました。その方法は目標と現状を認識し、その差分を検討することで問題個所を明確にしました。この問題における目標は家を買うことですが、「家を買うためのお金」という視点でとらえてみると、目標と現状はこのようになりそうです。
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《家を買うためのお金の視点で目標と現状を捉えた例》
目標 … 家が買えるだけのお金(住宅ローンとして月々10万円×35年間)※を確保する
現状 … 現在は賃貸で家賃が5万円支払っている
※お金:ここでは例として、家を購入する金額を10万円/月×35年、賃貸家賃を5万円/月としています。
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それでは、目標と現状の差分はどうなるでしょうか。「家を買うためのお金」をもう少し詳しく考えてみると、「月々の支払金額」となります。この視点で差分と問題個所を特定してみます。
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《月々の支払金額の視点で目標と現状ととらえてみる※》
目標:毎月住宅ローンのお金(月10万円)を支払っている(→だから、家を買うことができる)
現状:毎月賃貸住宅の家賃(月5万円)を支払っている(→だから、家を買うことができない)
↓
問題個所:住宅ローンに充当するお金が不足しているため
※とらえてみる:ここでは継続して住宅ローンや賃貸家賃の支払いができる前提で話を進めています。
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■第3段階:原因の発見(どうして悪いのか?)
問題個所の特定ができれば、次の段階は問題個所から原因をみつけ出します。問題は「住宅ローンに充当するお金が不足している」ですが、なぜお金が不足しているのかをSo Whyツリーで考えてみます。
例によっていくつの原因がみつかりましたが、ここでは「会社収入(給与)以外の手段がない」ことを一番の理由にしてみます。実際に原因を考える場合は原因に対する順位づけを忘れないようにしてください※。
※忘れないようにしてください:詳しくは前回のコラム「第48回 四方山話(30) 論理思考のススメ7」をご参照ください。
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《問題個所から原因を考えてみた例》
問題個所:住宅ローンに充当するお金が不足していること
↓
原因:会社収入(給与)以外の手段がない
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■第4段階:解決策の検討(どうすればよいのか?)
原因が発見できたので、いよいよ最後の段階である解決策を検討します。「会社収入(給与)以外の手段がない」ことが原因であるならば、「会社収入(給与)以外の手段を考える」ことを検討すればよさそうです。これをSo Whyツリーで考えてみましょう。
こちらもいろいろな方法が出てきましたが、ここでは「個人事業(雇用関係がない仕事)」、つまりフリーランスの手段を選びました※。つまり、この問題に対する解決策は、「副業としてフリーランスとして働き、住宅ローンに充当させるお金の不足分を捻出する」となります。
※選びました:資料の都合上、ここに掲載しているSo Howツリーは3階層までの情報しか掘り下げていません。しかし、この段階だとまだ何の仕事をするかが分からないため、実際にはもう何段階か内容を掘り下げる必要があります。
これまでの流れをまとめてみると、このようになります。
――
問題:なかなかお金が貯まらないのを何とかしたい!
↓
問題(いい換え):お金が貯まらないので困っている
↓
(お金が貯まらないことで…)
↓
課題(イシュー):家が買えなくて困っている
↓
《月々の支払金額の視点で目標と現状ととらえてみる 》
目標:毎月住宅ローンのお金(月10万円)を支払っている(→だから、家を買うことができる)
現状:毎月賃貸住宅の家賃(月5万円)を支払っている(→だから、家を買うことができない)
↓
問題個所:住宅ローンに充当するお金が不足しているため
↓
原因:会社収入(給与)以外の手段がない
↓
解決策:副業としてフリーランスとして働き、住宅ローンに充当させるお金の不足分を捻出する
――
■論理思考で行こう!
いかがでしたか。この問題を水平思考で考えたときの答え※が、
《前提条件を疑うことで見えてきた答え》
- 家を買うことではなく、賃貸で代用できるかを検討する
- 相続や譲渡などでお金を貯めなくても家は手に入れられるかを検討する
- 家賃収入によって購入費用をねん出できるかを検討する
でしたので、まったく切り口の違う答えが出てきたことが分かります。水平思考は自由な発想で問題解決を行う手法であり、論理思考は1つの物事を論理的に突き詰めて問題解決する手法ですので、そもそものアプローチ手法が違います。そのため、このような違いが出てきます。これらはどちらが正解で、どちらが間違いということはありません。それぞれに長所や短所があるので、状況をに応じて上手に使い分けることが必要なのではないかと思います。
※答え:詳しくは「第41回 四方山話(23) 水平思考のススメ5」をご参照ください。
さて、これで思考法のネタはひとまず終了です。この思考法ネタは筆者が実際に研修で行っている内容から一部を抜粋して紹介しました。最後の方は少し駆け足気味になりましたが、思考法の雰囲気や楽しさなどを感じてもらえれば嬉しいです。
私たちの身の周りにはたくさんの問題が今も山積しています。今回紹介した思考法は、その目の前にある問題に対してどのように取り組んだらよいか、その道しるべにもなります。しかし、この思考法だけではあなたの問題は解決できないかもしれません。それでも思考法を使い続けてみてください。思考法を使い続けることによって、あなたの身の周りにある問題は、少しずつですが必ず減ってきます。そうして、あなた自身が身の周りにある問題が少なくなってきたなぁと感じることができたとき、あなたの思考法のスキルは相当高いレベルにまで引き上げられていることでしょう。
その場所に行き着くことができるよう、少しずつでも思考法を日々の生活に取り入てみてくさいね!
コメント
Jitta
> 不動産(家・土地、車など)
車は動産ですよ。
キャリア・コンサルタント 高橋
Jittaさま、
ご指摘ありがとうございます。
Jittaさまのおっしゃるとおり、本来車は動産にあたりますが、ここでは財産という観点から不動産扱いとさせてもらいました。
動産(Wikipedia)の「具体例等」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8B%95%E7%94%A3
ただ、分かりづらいので、以下のように訂正させていただきました。
(誤)不動産(家・土地、車など)
(正)不動産(家・土地など)、動産(車・船舶など)