第36回 四方山話(18) 学生のキャリア教育に思うこと
こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。
Webサイトのニュースを見ていたところ、学生のキャリア教育に関する記事が掲載されていました。そこで、今回は学生のキャリア教育に関して思うところを書きたいと思います。
■学生はどうやって就職先を決めている?
2011年春より、国の雇用施策の一環として大学でのキャリア教育が義務化されました。現場サイドでキャリア・コンサルタントとして働く人間として、当時、このことはいいニュースととらえたのを覚えています。というのも、入社後間もないITエンジニアへのキャリア・コンサルティングを行うと、ITエンジニアという職業になりたいという明確な目標を持っている人は本当に少なく、何社か受けてみて内定をもらったから入社してみたという人が圧倒的に多かったのです。
これは、昨今の就職活動がやりたいことで企業を選ぶことより、入れることで企業を選ぶ傾向が強いからだと思います。このことをひも解くと2つの要因が見え隠れします。1つは、いまだに就職難の時代が続き、企業が人を選ぶ買い手市場であるため、学生はなりふり構っていられず、まずは就職することを念頭において就職活動しているから。そして、もう1つは学生自体にやりたいことが見つけられず、そのときの知識、能力、スキルに応じた就職先を探そうとするからです。つまり、
今の時代はまだまだ仕事を選べるような状況ではないが、だからといって何が本当の自分の「やりたいこと」かが分からない。しかし、就職浪人だけはしたくないので、取りあえず、そのときの自分に「できること」で就職先を選んでしまおう
という考え方に行き着くのだろうと思います。さらに、この「できること」を掘り下げてみると、高校で理系と文系を決定するところに行き着きます。ご存じのとおり、就職に際しては理系と文系では就職する職種に大きな隔たりがありますが、そもそも理系か文系かを決定した理由を調べてみると、
「国語が苦手だから理系を選んだ」
「数学が嫌いなので文系を選んだ」
のように、単に科目の好き嫌いだけで選んでいることも多く見受けられます。つまり、
科目の好き嫌いで高校で理系か文系の専攻を決める
↓
専攻に合う大学の学部に入学する
↓
専攻している学部に紐づく企業に入社する
のような流れで就職を決めて(決まって)いるケースも決して少なくありません。これがすべてとはいいませんが、このような流れで就職される方は思いのほか多いのではないでしょうか。
■学生にキャリア教育が必要な理由
学生の時分からやりたいことを明確にして、そこに向かってまい進できる人は、現状はほんのひと握りの人しかいないでしょう。なぜ、多くの人はやりたいことを見つけられないのか? それは、
やりたいことを見つける方法を知らないから
です。
――やりたいことを見つける――それはすなわちキャリア教育です。筆者は、学生の時分にはもっともっと広く社会や経済の仕組み、法律などを学ぶべきだと思っていますが、キャリア教育もその一環です。学生の時分から仕事や働くことについて時間を割いて学び、自分自身の人生におけるキャリアを考え、「やりたいこと」を見つけられるような教育を受け続ける。それは、将来社会に出るときの選択肢を増やす結果になることでしょう。また、仕事に就いた後、それが自分の想い描くキャリアと違っていたとしても、それまで受けたキャリア教育を振り返り、新たに次のキャリアが考えられるようになっているかもしれません。
■そんなわけでニュースを見てみよう
そういえば、筆者が見たニュースの紹介を忘れていました……。こんなニュースでした。
この記事では、文部科学省※がキャリア教育によって進路への意識を高め、学習意欲を向上させようとしてしており、そのために週1時間程度の時間を充てるような検討を進めているようです。週1時間程度だったとしても、3年間で120時間以上のキャリア教育が行えますので、かなり大がかりなこともできそうです。
※キャリア教育:文部科学省ではキャリア教育に関する情報を開示しています。興味のある方はこちらもご覧ください。
このように、国がキャリア教育をもっともっと推進し、キャリアという考え方が広く認知され、誰もが当たり前のように自分自身のキャリアを考えられるような社会になればいいですね!
(追記)
このコラムを書いている最中、横山さんのコラム『Go, Go, Go, in Peace』に『「したいこと」より「できること」』が掲載されていました。題名からしてこのコラムと真逆のことをおっしゃっていたので、おことわりを入れさせてください。
実際のキャリア・コンサルティングにおいて、横山さんがおっしゃるように「できること」を継続させながら「やりたいこと」を見つける流れ※もあります。そのため、当コラムは横山さんの考えを否定するものではありません。
※「やりたいこと」を見つける流れ:このような考え方をキャリア・ドリフトといいます。キャリア・ドリフトについてはこちらもご覧ください。
筆者とはアプローチの仕方が違うだけで、恐らく同じことをいわんとされているのではないかな、と勝手に解釈しています(横山さん、違ってたらスミマセン)。