第35回 四方山話(17) やる気を考える
こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。
筆者は人材開発に関する研修の企画、実施も行っておりますが、その中で社員のやる気を引き出したいという要望をよくいただきます。そこで今回は、この「やる気」というものについて考えてみたいと思います。
■部下のやる気と上司の想い
ここに能力がほぼ同じの社員が2人いるとします。1人はやる気に満ちあふれており、もう1人はまったくやる気を感じさせません。さて、上司はどちらの社員に期待するでしょうか?
普通に考えればやる気のある社員でしょう。やる気のある社員は、自ら目的意識を持ち、与えられたミッションをクリアすることに注力しようとします。このような部下の姿を見た上司は、きっと部下の働きや今後に期待することでしょう。しかし、やる気のない部下を抱えてしまった上司は、部下の姿に不安や不満を覚え、ミッションをクリアできるかどうか気になって仕方がないことでしょう。そう考えると、上司は、部下のやる気を引き出したいという要望をもつのはごく自然なことなのだと思います。
■そもそも、やる気って?
それでは、そのやる気、どうやって引き出せばいいのでしょうか?
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そんなものが分かれば、誰も苦労しません!!!……などといってしまうと身もふたもないので、やる気についてもう少し深く掘り下げてみます。ここでは、やる気の元となる部分を「欲」と仮定します。そうすると、やる気というものは「欲を満たしたいという想い」になります。
仕事でやる気を見せている社員は、その仕事を達成することで何か得られるモノがあるのでしょう。そのモノを得たいという欲を満たすためにやる気という想いが身体の中からわき上がってきます。そして、これは何も仕事だけに留まりません。スポーツ、遊び、趣味など、すべてのやる気はこの形に当てはまります。だから、やる気のない社員は会社や仕事を通じて何かをしたいという欲をもっていないと考えられるのではないでしょうか。
しかし、このことを正しく理解していないと、やる気のない社員=無気力な社員と勘違いしてしまうことがあります。確かにそのような一面があるかもしれませんが、会社でやる気を見せていないからといって、その人が無気力かどうかは分かりません。ひょっとしたら、会社の外ではものすごくアクティブに活動しているかもしれませんし、その道で名の知れた活動をされているかもしれません。また、こういった活動をしていないとしても、やる気になれる活動がみつからないだけかもしれません。
その答えは実際に調べてみないと分かりませんが、もし筆者がやる気に関する研修を企画、実施するとすれば、やる気のない社員はやる気の元となる欲を会社や組織にもっていないだけで、会社や組織に対してその欲を持てれば、やる気を引き出せると考え、そこに解決策を見いだそうとするでしょう。
■やる気を引き出す研修の例
それでは、実際にどうやってやる気を引き出す――言い方を変えれば、やる気の元となる欲を見つけ出す――ことができるのか、筆者の例をご紹介します。これは筆者が行っている研修の作り方ですが、やる気を引き出す研修の場合、まず、参加者が何かしらの「興味」をもつような趣向を取り入れます。
《興味を持たせる趣向の例》
- 上司や部下、同僚という立場を変え、その立場を体験してみる
- 今まで経験したことのない仕事を体験してみる
- 過去に経験した成功体験や失敗体験と、仕事と結び付けてみる
- 楽しいと思える体験を通じて、仕事を考えてみる
これらは体験型の場合はワークショップで行うこともありますし、講演型の場合は話題の一つになります。こういったコンテンツを通じて参加者が興味をもつことを第一の目標とします。
そうやって「興味」をもったモノについて、それがやる気の元となる「欲」になるよう、今度は個別でキャリア・コンサルティングやコーチングなどを行い、少しずつやる気を醸成し、実際の仕事でやる気を発揮できるように継続したサポート※を行います。
※継続したサポート:キャリア・コンサルティングとコーチングではアプローチの仕方が異なります。キャリア・コンサルティングの場合、興味からキャリアにつながるようなコンサルティングを行いますが、コーチングの場合、興味から紐づくゴールを明確にし、自発的にゴールまでたどり着けるようなサポートを行います。
■部下のやる気を引き出してみよう!
こうやってみると、やる気を引き出すのって難しそう……と思われるかもしれません。しかし、実際にはこの行動を無意識のうちにされていることも多いのです。例えば……、
- 仕事帰りに飲みに誘い、部下の愚痴を聞いているうちに、部下から信頼されるようになった
- 仕事以外の付き合いとして、ジョギングを一緒にやるようになり、部下との距離が縮まった
- 休憩時間にモンハンを一緒にやるようになり、部下から話しかけられることが多くなった
これらはすべて上司が部下に何かしらの興味を持たせる行動をとっています。そうして部下が興味をもった後、部下との距離を近づけることに成功しています。ここまでできれば部下の人間性も理解できていることでしょうから、次は仕事を通じて部下に欲をもたせる※ことができるかもしれません。つまり、
《部下のやる気を引き出す流れ》
仕事でやる気を見せない部下がいる
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部下に興味を持たせる行動をとり、部下との距離を近づける
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部下の人間性を理解した上で、部下に仕事をする上での「欲」をもたせる
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部下が「欲」を実現したいという「想い」であるやる気を引き出す
このようなやる気を引き出す流れを意識せずに行っているのです。
※欲をもたせる:いろいろなモノが想定されます。例えば、職種(プロジェクト・マネージャやシステム・エンジニアなど)、職位(課長、係長など)、仕事内容(設計やプログラミングなど)、役割(飲み会やレクリエーションを主催する幹事など)があります。
ここで紹介したやる気の引き出し方はほんの一例であり、他にも効果的なやり方がたくさんあります。どの方法が正解で、どの方法が間違いというのはありません。ぜひ、あなたに合うやり方で部下のやる気を引き出してみてください。それがあなたのスキルの1つとなり、やがては新しいキャリアへとつながっていくかもしれません。
……と今回はここで終わりですが、このコラムを書いている最中に思ったことがありますので、最後に書きます。
このコラムでお話しした内容を勉強会のような場でご紹介するのも面白いかなと思いました。実現できるかどうかは分かりませんが、機会があれば、今後キャリアに関連する勉強会のようなモノを開催してみようかなと思います。
コメント
abekkan
やる気を出させるにはまずは相手を知ることが大事ってことですね。営業担当はまずは世間話から客と話をして仲良くなっていきますが、同じことが社内の相手に対しても必要なんだな、と思いました。
勉強会は面白そうですね(^^)/
abekkanさん、
いらっしゃいませ。
確かにそうですね。社内の人間であっても、「人」ですから、繋がりを作るためには相手と仲良くなるのが一番ですよね。
そう思うと、人づきあいが上手な人ってすごいなぁと思います。。。
勉強会ですが、今どんなモノをご提供できるかを整理しています。時期が来たらお知らせさせてもらいますね!