ミラクルプロジェクト episode2
前回、前々回とサービス工学の視点で見た奇跡プロジェクトの成功要因についてお話しさせていただきました。内容的にはヘビーで、書いている当人もしんどかったので、今回は軽めのエピソード集をお話ししようと思います。
■「オラクルって、ノーツだっけ?」
プロジェクト開始前、スクラッチ開発にするかERPパッケージを導入するかの検討の中で、オラクルとSAPの比較を行っていました。オラクルのデモを見せてもらっている際に、ユーザーのIT担当者が発した言葉。
■「GISとIT、何の関係があると?」
ユーザーとGISの話をしていた際の言葉。こちらはGIS(地理情報システム:Geographic Information System)のつもりで話をし、相手はGIS(ガス絶縁開閉装置:Gas Insulated Switch)のつもりで話をし。お互い、それぞれ相手のGISはつゆ知らず、しばらく会話がかみ合いませんでした。
■「データが腐るわけではない。業務がデータを腐らせるのだ」
今回のシステム開発は、「せっかく構築したデータベースが腐っている。どうしたらよいか?」というユーザー企業の部長さんの一言から始まりました。データベースが腐るとは、業務上データをシステムに登録しているが、登録されたデータが正確でない、不足している、入力しなければならないが出力されない、活用されない、という事を指します。その話を聞いたコンサルさんの一言。ここから開発プロジェクトが始まりました。
■「その絵は間違っている。社会インフラを守っているのは俺たちだ」
システムと業務の全体イメージを作成して、関係部署(設備、運用、特種装置)へレビューしてまわりました。その際に必ず言われたセリフ。システムと業務の全体イメージなので、何処かの部署を中心にすると、他の部署はどうしても端に行ってしまいます。そこが気に入らないらしく。本当にみなさん、使命感に燃えています。
■「本社の人間は、自分の能力を超えた課題に対しても意思決定をしなければならない。だから、『この事については、この人に聞けば大丈夫』、という人をたくさん作り、人と人との繋がりを大切にしている」
顧客IT担当リーダーに、プロジェクト完了後しばらくしてお会いした際におっしゃっていたセリフ。かなりワンマンで強引な所もあったお方ですが、「だから、本プロジェクトでも最初にいろいろな人の話を聞き、それで大丈夫だ、と言ってもらえたので、その言葉を拠り所にプロジェクトを推進できた」と続きます。
■「最盛期は1日100人近いSEと会わなければならなかった。だから最初の何 分かで内容を見極め、中身のないものについてはその場で帰れ、と追い出す必要があった」
プロジェクトの最盛期の凄まじさが偲ばれます。
■「あの桜は、実は○○さんが植えた桜なんだ」
同じくプロジェクト完了後、顧客IT担当リーダーに会った際の言葉。システムの運開式の時、プロジェクターで顧客、設計事務所、開発会社含めプロジェクトに関わった人たちの顔写真が当時はやっていたプロジェクトXのテーマ曲に載って流れました。その時の背景が満開の桜だったのですが、実はその桜の木はプロジェクトが始まるきっかけとなった「腐らないデータベース」のコンセプトを打ち立てた部長さんが植えた木だったのだそうです。その部長さんは運開時は異動されて顔写真のみだったのですが。誰も知らない、そのリーダーだけのオマージュだそうです。
■「お客さんとの打ち合わせがなければ、開発コストは半分ですみそうだな」
開発会社のSEが漏らした言葉。とにかく、調整と打ち合わせが大変だったようです。
システム開発は、人間模様ですね。今回はこれくらいにて。