第612回 WhyよりWhatを使う理由
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
ここ何回かプロマネネタが続いていたので、今回は少し趣向を変えてコーチングネタで行きます。コーチングではよく「Why」ではなく「What」使って質問をしましょうと言われます。これはWhyとWhatによる言葉の受け取り方の違いがあるようです。
そこで今回は、私が提唱する三層構造モデルからこのWhyとWhatの違いを考えてみたいと思います。
■コーチング的に見るWhyではなくWhatを使う理由
Whyという言葉は「何故」と訳されます。例えば、
「何故、このようなことをされたんですか?」
のように使うことが想定されますが、これが詰問に聴こえることがあるようです。詰問とは相手を責めながら、返事を迫って問い立てることですが、こうしたことが対話を重視するコーチング的にとってはマイナスに働く場合があるからです。そのため、コーチングではWhyではなく、
「何があったか訊かせてもらえませんか?」
のように、What、つまり「何」という言葉を使って相手に問いかけをするようにします。そうすることで、詰問調でなく相手に寄り添いながら相手の話を引き出すような対話になっていきます。
これが、コーチング的に見るWhyではなくWhatを使う理由です。
■三層構造モデル的に見たWhyではなくWhayを使う理由
それでは、次にこのWhyとWhatを三層構造モデルで見てみます。三層構造モデルは過去のコラムでもご紹介していますが、人間の構造を3つの層に分けて捉えることをで物事の本質を掴みやすくするモデルです。ここで一部再掲します。
例をあげて説明します。ここに転職をしたいと考えている相談者がいます。この相談者は単に転職したいと考えているのではなく、転職したいと思う何かがあったはずです。例えば、
- 上司が厳しく当たる
- 同僚は誰も助けてくれない
- 職場の雰囲気が悪い
こんなことがあったのでしょう。こうしたことが長く続いたことでこの人は転職をしたいと考えた訳です。
これを三層構造に当てはめてみます。三層構造とはこのような構造になっています。
1層(「事柄」の層)...何があったのか?(相談者の身に起こった出来事や事柄)
2層(「心」の層)...何を感じ、考えたのか?(相談者はどのように捉えたのか?)
3層(「行動」の層)...そして、どうしたのか?(相談者はどのような行動を取ったのか?)今回の話であればこうなりますね。
1層(事柄)...上司が厳しく当たる、同僚は誰も助けてくれない、職場の雰囲気が悪い
↓
2層(心)...辛い、苦しい、逃げ出したい
↓
3層(行動)...転職活動をするこのように私たちの身に起こる全ての行動は必ずこの3つの層に分けることができます。そして、この3つの層に分けることが物事の本質を見極める鍵となります。
少し引用が長くなってしまいましたが、先ほどのWhyとWhatをこの三層構造モデルに当てはめて考えてみます。
まずWhyからですが、これは理由を問う言葉ですよね。理由はその人の考えや想いから発せされますので、2層である心の層にアプローチしていることが分かります。
一方Whatですが、こちらは事柄を問う言葉です。事柄はその人に何があったのか、その時に起こった事実(ファクト)に対する内容なので、こちらは1層である事柄の層にアプローチしていることが分かります。
まとめるとこのようになります。
Why...2層(「心」の層)にアプローチする言葉
What...1層(「事柄」の層)にアプローチする言葉
つまり、三層構造モデル的に見ると1層(「事柄」の層)にアプローチしているか、2層(「心」の層)にアプローチしているかの違いになるのですが、三層構造モデルで考えた場合、話の流れは
1層(「事柄」の層)...何があったのか?(相談者の身に起こった出来事や事柄)
↓
2層(「心」の層)...何を感じ、考えたのか?(相談者はどのように捉えたのか?)
↓
3層(「行動」の層)...そして、どうしたのか?(相談者はどのような行動を取ったのか?)
のように進んでいきますので、いきなり2層である「心」の層を指すWhyを使ってしまうと、1層である事柄を飛ばしているので、何に対する思いや気持ち、考えを話しているのかが分かりづらくなります。また、いきなり2層にアプローチするのは唐突感を生んでしまい、これが詰問のような感じを生み出してしまうのではないかと思われます。
そのため、最初に1層である「事柄」の層を指すWhatを使い、次に2層を指すWhyを使う方が三層構造モデル的にも理にかなっており、物事の本質にアプローチしやすくなります。このようなことから、三層構造モデルで捉えてもWhyよりもWhatを使う方が好ましいのではないかと考えます。
■複数の視点を持とう
三層構造モデルは人間の行動から物事の本質を捉えやすくするためのモデルですが、その適用範囲は広く対話全般で使うことができます。
今回、コーチングにおけるWhyとWhatの違いをお話ししましたが、これを三層構造モデルに当てはめて考えてみることでこれまでとは違った視点が生まれてきたのではないかと思います。
このように、一つの考えたを他の考え方から照らしてみるといろんなことが見えてきます。コーチングに取り組まれている方は良かったら三層構造モデルを使ってアプローチをしてみてくださいね。