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第577回 手法について考える

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 こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。

 私は国家資格キャリアコンサルタントの更新講習を幾つか担当させてもらっていますが、その中に実技指導をさせてもらう場面があります。その際、いつもお伝えしていることがあります。それは、

なぜその手法を使うのか?

です。これは別にキャリコンだけでなく他のことにも当てはまる内容だと思うので、今回はこの手法に関する私の考えを書きます。

■なぜ傾聴をするのですか?

 国家資格キャリアコンサルタントを取得するための最も重要な技術、手法の一つに傾聴があります。恐らく、キャリコンを目指そうとされる方が最初に取り組む内容だと思います。そんな傾聴ですが、なぜ傾聴を行うのか? と訊いてみると、多くの方は相談者と信頼関係を得るためと答えます。

 この答自体は正しいのですが、では一歩踏み込んで、なぜ傾聴をすると信頼関係が築けるのか? と訊くと、途端に答えられる方がいなくなります。

 なぜこのようなことが起こるのでしょうか? それは傾聴の教え方に問題があるからだと私は考えます。

 傾聴は「傾聴技法」とも呼ばれるように技術的な側面が強い技法です。そのため、どうしても傾聴のやり方にフォーカスしてしまう傾向があります。

 こうしたことから、傾聴の目的を説明する所が軽んじられ、

「相談者と信頼関係を築くために傾聴が必要なのです」

のような杓子定規的な伝え方しかしない指導者から学んでしまうと、「傾聴とは相手との信頼関係を築くために行うものなんだ」という理解しか得られず、それ以上考えようとはしなくなってしまいます。。。

■傾聴がもたらす効果

 それでは、傾聴がもたらす効果とは何でしょうか? 私なりの解釈でご説明します。

 人が二人いるとそこに対話が起こります。この時、片方が傾聴によって相手の話をたくさん聴いている状態を作っているとしたら、もう片方はどのような状態になっているか分かりますか? そうです、たくさん話をしている状態になります。傾聴を一言で言うと、相手にたくさんの話をさせるという狙いがあります。それでは更に一歩踏み込んで、なぜ相手にたくさんの話をさせるのでしょうか?

 これは、たくさんの話をしてもらうことで、話すことに慣れてもらうことを狙うからです。

「この人になら話がしやすいなぁ」

「この人は良く話を聴いてくれるなぁ」

という安心、安全の状態をつくり出すためです。

 そうするとどうなるのか? 自ずとその人の心の内面が出てくるようになります。

「ここだけの話ですけど...」

「他の人には内緒にしてもらいたいんですが...」

のような言葉が出てきたとしたら、それはあなたにだけに話したい相手の内面や本音が出てきている瞬間です。

 これが「信頼」の原型です。つまり、傾聴における信頼関係というのは、「この人なら命張れます! 」のような信頼関係などではなく、

「この人なら話を聴いてもらえる」

「この人の話なら聴ける」

という信頼関係なのです。

 このように傾聴でなぜ信頼関係が得られるのか、傾聴における信頼関係とはどのような関係なのかを理解することができて、初めて傾聴という手法を使いこなす入口に立てるのではないかと、私は考えます。

■表面だけなく内面にも意識を向けよう

 冒頭にも書きましたが、これは何もキャリコンだけの話に留まりません。例えば、仕事を行う上での様々なルールなどにも当てはまります。仕様書やコーディングをする時の標準規約などもそうですが、こうしたルールや規約はただ守れば良いというモノではありません。そこには明確な意図があります。その意図を理解することで物事の表面ではなく内面を知ることができるようになります。

 この考え方は私が提唱する三層構造の話とも繋がりますが、物事の内面、言い方を変えると物事の本質を見極められるかでその人の行動は大きく変わってきます。表面だけしか見ていない人は場当たり的な行動に終始してしまうことがあります。しかし、内面を見ることを心がけている人は本質に近づこうとされます。

 物事にはすべて意図があります。この意図こそが物事の本質であり、それを理解することが抜本的な対応や行動に繋がります。

 「決まりだからやっている」から「この決まりには何か意図があるのだろうか? 」の意識で行動することによって世界は大きく変わってきます。

 ぜひ、表面だけでなく内面にも意識を向けることを心がけてみませんか!

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