第509回 わかってもらうことの難しさ
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
自分の考えを人にわかってもらうことって難しくないですか?
「私の考えはこうなんだけどなぁ、あなたにわかってもらえるかなぁ......」
こんなことってありませんか? キャリコンでは相談者にキャリコンの考えを共有する場面が出てきます。私はそこがキャリコンにおいて一番難しい場面だと思ってたりするのですが、だからこそ色んな方法を模索し実践しています。今回はこのような相手にわかってもらうことについて思うことを書きます。
■自分の考えを分かってもらうための方法
キャリアコンサルティングにおいて、キャリコンの考えを相談者と共有する場面というのは、相談者の抱える問題の本質を相談者に理解、納得してもらうシーンです。
例えば、相談者が転職したいと考えキャリコンに相談しに来たとします。話を聴いてみると、どうもこの相談者は上司との折り合いが悪く、そのことが原因で職場環境も良くないと感じていることがわかってきました。そういった状況に嫌気が差し、転職をした方が良いと考えているようなのです。そこで、もう少し深く話を聴いてみると、上司の考えが理解できていないことが問題の本質だとキャリコンサルタントは捉えたとします。
問題はここからです。「上司の考えが理解できていない」という問題の本質をどうやって相談者に分かってもらえばよいのかを考えなければならないのです。ここはとても頭を捻ります。
「お話を聴かせてもらっていて思うのですが、今回の問題の本質は〇〇さんが上司の考えを理解できていないことだと思うのですが、どう思われますか? 」
このように、真っ直ぐ尋ねるというやり方もあるでしょう。しかし、このやり方だと反発されたり拒絶されたりするケースが出てきます。そうした時に焦ってしまい、
「あっ、ちょっとわかりづらかったみたいですが、あのー、私が言いたかったのは......」
のような弁解に走ってしまう人がいます。こうなるとキャリアコンサルティングは破綻しています。それは弁解することで相談者との間の関係性が崩れてしまっているからです。ちなみに、この場合は、
「私の話が少し違うとお感じになられたみたいで申し訳ありませんでした。よかったら今お考えになっていることを教えていただけませんか? 」
のように傾聴に戻って再度話を聴き、相談者の考えや想いを共有した上で、再度話をするようなことをします。
で、話を戻して、直接的に伝えることが難しい場合、どうすれば相談者に分かってもらえるのでしょうか。
これは私の体感的な話になりますが「気づかせる」方法が有効です。それは、気づくという行為は本人はその内容に納得するからです。そのための方法は過去に対話技法(ダイアログ・メソッド)で「気づきへのアプローチ」として紹介させていただきましたので、ご興味のある方はご覧ください。
第499回 対話のススメ6 -「考え方」の技術(2)気づきへのアプローチ
■わかってもらうことの難しさ
私自身、自分の考えを人に伝えることはあまり上手ではないと思っています。だからこそどうすれば相手にわかってもらうのかをよく考えます。
色んな選択肢はありますが、相手にわかってもらうためには、その内容を相手に納得してもらうことが一番だと思います。そのためには相手との関係性、その時の状況、伝えたい内容の重さや重要度などを勘案した上で、適切な伝え方を用いることが肝要です。つまり、相手によって直接伝えた方がよいのか、それとも気づきを与える方法がよいのかを使い分けるということになるのではないでしょうか。
ただ、これができるのはその人にとって限られた場所だけのような気もします。私の場合はキャリコンやスーパービジョンの場ということです。それは、こちらが伝える内容を相手がちゃんと受け取って真剣に考えてもらえるような関係性を築けているからです。そう考えると普段の日常生活での環境では相手に気づきを与えようとするのはちょっと現実的ではないような気もします。
それはつまり、気づきを使ってわかってもらうためには、環境も大切ということなのかもしれません。相手にわかってもらうためにその伝え方ばかりに目を向けてしまいがちになりますが、本当は相手と自分との環境を整えておくことが何より大切のような気がします。それがちゃんとできていれば、実は相手にわかってもらうことはそれほどハードルは高くないことなのかもしれませんね。