第432回 思考をトレースする
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
私はキャリアコンサルタントなので、キャリコンをやらせていただいています。キャリコンは相手のキャリアづくりを支援することが目的ですが、そもそもなぜキャリコンをするとキャリアづくりができるのでしょうか? 改めて考えてみると、コレって結構大事なことだと思うのですが、こういったことはあまり語られることはありません。そこで、今回はなぜキャリコンが機能するのかについて、私なりの考えをお話ししたいと思います。
■キャリコンが機能するのはなぜか?
キャリコンといえば傾聴をイメージされる方は多くおられるのではないでしょうか。実際、キャリコンをする上で傾聴は絶対に必要でなくてはならない技術です。そのため、キャリコンを学ぶ場合は最初に傾聴の技術を身に着けられる方も多いと思います。しかし、傾聴を身に着ければキャリコンができるかというと、その考え方には無理があると思います。なぜならば、傾聴はあくまで人の話を聴くための技術であり、キャリアづくりをするためには、別の技術が必要だからです。それは、キャリアをつくるための戦略です。
キャリアづくりで良く使われる戦略にシステマティックアプローチモデルがあります。これはキャリコンの進め方を段階的に表しており、
「関係構築」→「問題把握」→「目標決定」→「方策実行」
という流れを踏むことで、相談者のキャリアづくりができるようになっています。キャリコンにはこういった戦略がいくつもあり、キャリアコンサルタントは自分(もしくは相談者)に合う戦略を使いながら相談者のキャリアづくりを支援します。
こうった戦略を使った例は他にもあります。有名な例としてコーチングがありますね。私は4Sコーチングという独自のコーチング手法を使いますが、そこでは「問題解決フローの4段階」という戦略をもとにコーチングを行います。これは、
「課題(イシュー)の把握」→「問題個所の特定」→「原因の発見」→「解決策の検討」
といった流れでコーチングを進めていくことで、コーチは相談者自らが目標にたどり着くように支援していきます。
つまり、キャリコンにせよコーチングにせよそれらが機能するのは、キャリコンにはキャリコンの、コーチングにはコーチングの戦略があるからだと、私は考えています。
■人の思考をトレースする
そもそも、この戦略とは一体何なのでしょうか? 私は人の考え方や思考のことだと思っています。人が問題を解決したり、目標を達成したりするためにどのように考えを巡らせ、行動をすれば目的地に辿り着けるのかを明確にしたモノが戦略だと思っています。だから、キャリコンにせよコーチングにせよ自分一人でその戦略の通りに考え、実践できる人は他の人に頼らずともキャリア形成ができたり、自分が掲げる目標を達成することができるのだと思います。
しかし、自分でキャリアづくりをしたり、自分で掲げた目標に到達することができない人もいます。そういう方にはキャリアコンサルタントがキャリコンの戦略、言い方を変えるとキャリア形成をする際の思考の流れを相談者にトレースし、相談者がその思考を辿れるように思考の流れを導くことでで、あたかも相談者が自立/自律的にキャリア形成を支援しているのです。これはコーチングでも同様です。
世の中にある思考法の類はすべて人の思考の流れです。それを自分にトレースすることで、その思考の流れを自分自身が体現できるようになり、思考法の目的である目標達成や悩みの解決を実現化させるのです。
思考法をトレースすると書くと難しく感じるかもしれませんが、実際は人の考えを真似るということです。仕事が早い人の行動を真似る、仕様書の書き方を真似る、このようにして自分の技術やスキルを身に着けてきた方もおられるのではないでしょうか。そう考えると、思考をトレースするというのは何も特別なことではなく、誰もが普通にやっていることのような気がします。
自分が良いなぁ、身に着けてみたいなぁと思える思考をトレースしてみる。たったそれだけでも、あなたのパフォーマンスは飛躍的に向上するかもしれません。もし、あなたの周りに身に着けてみたいと思う思考があったら、ぜひ思考のトレースにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。