第431回 高校生のキャリアを考える
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
私は昔(数十年以上前ですが)塾の講師をしていました。当時は主に小学生から中学生までの数学と理科を担当していたのですが、当時の私は塾の講師は天職だと思っており、熱心に子供たちに対して日々の勉強や受験対策などをしていました。今はキャリコンをしていますので子どもたちに勉強を教えることは少なくなりましたが、それでもたまに受験対策の勉強を教えることがあります。
先日もある子に対して高校受験対策の勉強を教えていたのですが、その時、高校受験や高校生活に対してキャリアのような話をさせてもらいました。そこで、今回はその時に話した高校生のキャリアについて書きます。
■良くある高校の選び方
恐らく、多くの子どもたちにとって高校受験は人生で最初の大きな岐路になるのではないでしょうか。それは、自分が初めて自分の進路を決めて、これから先の未来を選択するからです。そのため、多くの子どもたちが自分の希望する高校への合格を目指し、受験勉強に没頭します。
受験生を持つ親の立場からすると、高校はこれからの人生を形づくる上でとても重要な位置づけをしていると考えている方が多いのではないでしょうか。今の世の中は多種多様な生き方ができますから、それに応じた専門性を学べる学校も数多くあります。そういった学校に進むことはその子の可能性を引き出すことに繋がると信じ、親はたくさんの学校を調べては子どもに提示します。
一方、子どもは学校で先生から受験の話をされ、同級生同士で話し合いながら自分の進路を考えるようになります。ただ、強烈に自分の進路をイメージできていない子は偏差値偏重型になり、より偏差値の高い学校に進学することを良しとします。こういった考えを持つ親と子が会話をすると、結局の所、折衷案、妥協案という形である程度色んな取り組みをしている自分の偏差値で通える高校を志望校として選ぶようになります。
■高校生とキャリア
キャリア論の専門的な話は度外視して、一体どのような考え方で高校を選ぶのがその子にとって最適な選択なのでしょうか? 勿論、すべての子どもを十把一絡げに扱うことはできませんが、多くの人はその後の人生に繋がる良い経験をすることが一番大切なことだと思うのではないでしょうか。だからこそ、偏差値云々は関係なく、その子の特性を考えた上で専門性のある学校への進学や、専門性のある大学への進学が有利になるような学校を選択するような気がします。
私も昔はこの考え方をとても重要視していました。ですので、受験生の勉強を見る場合、キャリコンをして立場でその子の想いや特性を形づくった上で、可能性を引き出せるような学校を提示するようにしていました。この考え方が間違っているとは思っていませんが、最近はほとんどやらなくなりました。
というのも、ぶっちゃけて考えてみると、私たちの人生の中で高校3年間の生活はどれだけの比重と占めていたでしょうか? その3年間がとても重要で人生を形づくられた人はたくさんおられるでしょう。しかし、一方で高校以降、大学や社会人などそのような生き方の中で自分の生き方を見つけてきた方も同じくらい、いや、それ以上に多くおられるのではないでしょうか。また、将来の不確実性を考えると、そこまで神経質に専門性や将来性のある学校を選ばなくても良いような気もします。
だとすれば、何を大事にすべきか?
私は、高校を卒業した時に「行って良かった」と思える高校を選ぶことだと思います。私たちの人生を振り返ると、小学校の時が一番楽しかったとか、中学校の時が一番楽しかった、のように強く印象に残る時期があるのではないでしょうか。ちなみに、私は小学校の時が一番楽しく、この時の想いが今の自分を作っているといっても過言ではないと思っているのですが、そういう経験ができる学校を選ぶことが大切だと思うのです。
でも、そんな学校どうやって選べば? と思いますよね。そうなんです、卒業した時に「行って良かった」と思える高校を選ぶということは、卒業してからでないと分からないので、実際のところは誰にもわかりません。しかし、その雰囲気のようなモノは感じ取れるような気がするのです。
例えば、オープンキャンパスなどで学校見学をしてみて、在校生が楽しそうにしているか? 自分がその学校で充実したキャンパスライフを過ごしているイメージができるか? ということを感じ取ってもらうようにしています。更に言えば、オープンキャンパスだけではなく朝の通学路を通っている学生の姿、帰りに寄り道して遊んでいたりする学生の姿にも注目してもらいます。そうすることで、学校内だけではなく学校外の在校生の姿を分かるので、自分が来年から通うかもしれない学校の姿を感じ取ってもらうのです。
■一番大事にしたいこと
そして、何より大事なことは、自分の天気を持つことです。
自分の天気とは、過去のコラムで何度も出てきていますが、7つの習慣の中にある言葉で以下のようなことを言います。
「私たちが感じる喜怒哀楽の感情は、私たちに起きた出来事に対して、私たち自身がそのように感じたいから感じている」
学生生活で起きる様々な出来事はそれ自体に色は着いていません。そこに私たちが着けたい色に染めているのです。大変なことがあれば「辛かった」という色に染めるでしょうし、大きなイベントが終われば「達成感」という色に染めます。それは私たちがそうしたいと思っているからなのです。
だからこそ、学生生活を楽しみたい、充実させたいというのは、学生生活を子どもたちがどう捉えるか、子どもたちの考え一つにかかってきます。日々の授業、放課後の部活、下校時の寄り道、定期試験の勉強、学校のイベント...、それらにはあくまでそこにある事象にしか過ぎません。それを楽しめるかどうかはその子次第なのです。だからこそ、自分の天気を持つということを強く意識し、自分の学生生活を楽しめるようにする努力が必要だと考えています。
ですので、その高校を卒業した時に「行って良かった」と思える学校を選ぶこと、そして、その学校に入って楽しめるように努力をすること、この2つをできる子こそが真の意味で高校選びに成功するのではないかと、私は思っています。