第430回 ジョブ・クラフティングを考える
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
最近、ジョブクラについていろいろと取り組んでいます。ジョブクラとは正しくは「ジョブ・クラフティング」と言い、仕事の在り方を見つめ直すことで仕事にやりがいを持ってもらうような支援のことを言います。私個人はキャリコンと近い所にある考え方のように思っていますが、ジョブクラについて取り組ませていただいていることで私なりに感じるモノがありました。そこで、今回はジョブクラについて思うことを書きます。
■ジョブ・クラフティングとは
例によってWikipediaでジョブクラを調べてみると、このように書かれていました。
ジョブ・クラフティング(英語:job crafting)とは、Wrzesniewski&Duttonが主要な理論的提唱者の、労働者が主体的に自らの仕事を再定義し、創意工夫をする概念である。
そもそも、会社や組織というのはある決められたルールやタスクに従って働いています。ジョブクラではこの考え方に異を唱える所から始まり、社員の主体性によって仕事をやりがいのあるモノに変えていきます。このことを説明させていただく上で、よく使われる寓話がありますのでご紹介します。
「3人の石工の話」
工事現場に石工が作業をしていました。その様を見た人が最初の石工にこう問いかけました。
「あなたは何をしているのですか? 」
すると、一人目の石工はため息をつきながらこう答えました。「金を稼ぐためさ」
次に、二人目の石工に同じことを尋ねてみました。
すると、二人目の石工はこちらを見ようともせずこう答えました。「俺は石工の技術を磨いて、この国一番の職人になるんだよ」
最後に、三人目の石工に同じことを尋ねてみました。
すると、三人目の石工は目を輝かせてこのように答えました。「私は人々が集う教会を作っているのですよ! 」
この話はピーター・ドラッガーの『マネジメント』という本に書かれているとても有名なお話です。ここで注目したいのは、三人の石工はみな同じ仕事をしているという点です。にもかかわらず、三人とも仕事に対する捉え方が違っているのです。この考え方は7つの習慣におけるパラダイム(=モノの見方、価値観)と同じで、「石を切る」という作業自体にモノの善悪は存在していません。その作業に対し、どう捉えるが人によって違うのです。石切りという仕事も捉え方によってはつまらない仕事と感じる人もいるでしょうし、人生をかけるに値する仕事と感じる人もいるでしょう。
このように、ジョブクラとは仕事の在り方を見つめ直すことで、あたかも一人目の石工が二人目、三人目の石工のように変わっていく事を目指しています。
■ジョブクラとキャリコンの違い
このように書くと、キャリコンと何が違うの? と思われるかもしれません。実際、キャリコンとジョブクラは似通っている点がたくさんあります。しかし、私が感じる最も違う点は対象とする範囲です。キャリコンはその人の人生そのものをキャリアとして描きますので、目指すべきキャリアの枠は基本的に限定されていません。そのため、キャリコンでは仕事を変える(=転職)するということがは出てくることがあります。
一方、ジョブクラの場合は枠組みは今の仕事の中に限定されています。仕事のやり方を見直すことで今の仕事をやりがいのある仕事に昇華させていきますので、あくまで仕事の範疇が大きく変わることはありません。
例えば、ある人が「仕事はルーチンワークばかりで毎日毎日同じ作業の繰り返しで、モチベーションが下がってきてしまう」と考えていたとしましょう。その人にジョブクラを行うと、その人がこの仕事に就いたきっかけが自分の力を試したかったことが分かりました。そこで、今のルーチンワークでどうしたらその人の想いである「自分の力を試す」ことができるのかをそこをじっくり考えました。その結果、その人はルーチンワークの生産性をどれだけ向上させられるかを日々創意工夫するようになりました。その結果、当初よりも1.5倍の生産性を実現することができるようになりました。
こういったことはあくまで一つの例ですが、このように仕事の在り方、捉え方を見直すことで仕事のパフォーマンスを上げることがジョブクラの目的です。
■ジョブクラから始めよう!
ジョブクラの良さというのは、組織に受け入れられやすく、導入しやすい点だと思っています。組織にキャリコンを導入しようとすると、社員を転職させようとしているのか? と思われる方もおられますが、ジョブクラならそういったことはほとんど起こりません。そのため、キャリコン導入の第一歩としてジョブクラを導入し、ジョブクラの考え方が慣れてきたら本格的にキャリコンを導入するという考え方もあるように思います。
もし、組織を活性化したい、部下のパフォーマンスを上げてみたいという方がおられましたら、ぜひジョブクラの導入を検討されてみてはいかがでしょうか。