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第385回 ただ聴くことの難しさ

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 こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。

 久しぶりの7つの習慣ネタです。つい先日、7つの習慣のワークセッションを担当させていただきました。既にライセンスをいただいて久しいので、何度も登壇させていただいているコンテンツなのですが、毎回登壇の度に新たな発見があります。7つの習慣にも傾聴にあたる部分があるのですが、今回、この傾聴について私自身にも大きな気づきがありました。ですので、今回は傾聴について思うことを書きます。

■第5の習慣「まず理解に徹し、そして理解される」

 7つの習慣そのものについては過去のコラムをご覧いただくとして、この中でも今回私の中で最も響いたのが、第5の習慣「まず理解に徹し、そして理解される」でした。

 この習慣は人格が自立している人同士が互いに影響を及ぼし合い、より高い効果性を生み出す状態である「公的成功」の2番目の習慣にあたります。この第5の習慣は「共感によるコミュニケーションの習慣」とも呼ばれているように、全体的にコミュニケーションに関する内容になっています。

 ここでは、相手とより効果性を高めた関わりをするためには、自分のことを相手に知ってもらうという考え方(パラダイム)ではなく、まず最初に相手のことを知ろうという考え方になることが説かれています。

 ここで使われるスキルが共感による傾聴です。この傾聴では主に事柄と気持ちを拾って共感するのですが、この時、邪魔になるが「自叙伝的な反応」と呼ばれています。自叙伝的な反応とは、自分の立ち位置で相手に何かを伝えようとする話し方で、「助言する」「探る」「解釈する」「評価する」という4つの反応のことを言います。

 この自叙伝的な反応は私たちが普段の日常生活でやっていることであり、何ら問題がある行為ではありません。しかしながら、相手のことを理解しようとする前提に立った場合、この自叙伝的な反応は邪魔になります。本当に相手のことを理解しようとするのならば、相手の話だけに集中し、そこから離れないように会話を続ける必要があります。

 こういったことを7つの習慣では伝えているのですが、ここの伝え方が非常に難しいのです。そもそも、相手の話だけを理解する状況を明確にイメージしてもらうことが難しく、

「相手が間違ったことをしているなら、それは相手に伝えてあげるべきだ」
「良いことは良いと言ってあげた方が相手のモチベーションが上がるはずだ」

などのような考え方を良しとしている方は、なかなかこの第5の習慣を理解してもらえません。

 実は7つの習慣のワークセッションにはたくさんのビデオ(動画)が用意されています。この第5の習慣にもいくつかのビデオがあるのですが、この中にオプションと呼ばれるワークセッションで使うかどうかが自由になっている動画があります。今回私が注目したオプション動画はある種のジョークでコミカルな内容なのですが、これまではワークセッションにそぐわないと思い使いませんでした。しかし、ワークセッションの準備段階で改めてこの動画を再度視聴した際、かなり有効な動画なのではないかと思い、今回は使ってみることにしました。
その結果、共感による傾聴で自叙伝的な反応を抑える意味を理解してもらうことができました。

 ビデオはこんな内容です。

ある男女のカップルがいます。
女性はいつも正体不明の頭痛に悩まされています。そのことを男性に訴えています。その話を聴く男性は、話をする女性の額になぜか大きな釘が刺さっており、それをずっと見ています。
当然、男性は頭痛の原因が額に刺さっている釘だと考え、そのことを女性に伝えようとします。
しかし、女性は男性のそのような態度を非難します。「あなたはいつもそう。私は、ただ私の話を聴いて欲しいだけなのに」と。

その言葉に男性は女性の頭痛を共感による傾聴で受け止めます。
それを聴いた女性は喜び、男性にキスをしようとします。
...しかし、釘が男性の額に当たり、二人ともうずくまってしまいます。

そうして、男性が「だから...」と言った途端、女性が一言「止めてっ!」

 この話はアメリカのあることわざに準えたジョークなのだそうですが、この話はとてもよく自叙伝的な反応を表しています。明らかに目の前にいる人が額に釘なんか刺してた日にゃ、指摘しない方がおかしいです。それでも共感による傾聴をするならば、自叙伝的な反応を抑えなければなりません。このビデオの男性の立場に立ってみると分かりますが、相当難しいことであることがわかります。このビデオを見ていただくことで参加者に自叙伝的反応が共感による傾聴を妨げていることを理解してもらうことができました。

■ただ聴くことの難しさ

 この話は傾聴の本質を表していると思っています。傾聴はただ相手に寄り添い、相手の気持ちや想いに共感する聴き方です。そこにあるのは「自分」ではなく「相手」です。だとするならば、例え相手の額に釘が刺されていようが自叙伝的な反応をせず、相手の話だけに集中し、そこから離れないように会話を続けていくことが求められるのだと思います。

 7つの習慣は今から30年以上も前に発刊されていますが、それが今の時代にも有効に働くというのはとても興味深いです。これまで、第5の習慣における共感による傾聴とキャリコンにおける傾聴の整合性が自分の中で取れていなかったのですが、今回の件でうまく繋がりそうです。ぜひ、今後の傾聴トレーニングにおいても活用していきたいと思います。

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