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第173回 キャリア・コンサルタントの国家資格化について(続報)

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 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。

 以前、キャリア・コンサルタントが国家資格化されることについてコラムを書きました。有難いことにこのコラムはたくさんの方にご覧いただき、Googleの検索ワードに「キャリア・コンサルタント 国家資格」と入れると、このコラムが一番上位に表示されるようになりました。これはキャリア・コンサルタントの国家資格化に多くの人が注目されている表れではないかと考えています。

 そんな中、去る9/11衆議院本会議にて「勤労青少年福祉法等の一部を改正する法律案」が可決されました。これにより、平成28年4月1日よりキャリア・コンサルタントが国家資格化される見通しになりました。そこで今回は、キャリア・コンサルタントの国家資格化について前回のコラムから新たに思うことが出てきましたので、これを書きたいと思います。

一番上位:Googleの検索ワードで一番に表示されていないとのご指摘をいただきました(9/15 21:00現在で3位でした)。こちらは執筆時点での順位を表示したつもりでしたが紛らわしい表現でした。お詫びして訂正いたします。失礼いたしました。

■なぜ、キャリア・コンサルタントが国家資格化されるのか?

 平成27年9月現在、キャリア・コンサルタントという職種は厚生労働省が規定した明確なレベルがあります。

  1. 登録キャリア・コンサルタント
  2. 標準レベルキャリア・コンサルタント
  3. 熟練レベルキャリア・コンサルタント
  4. 指導レベルキャリア・コンサルタント

 登録キャリア・コンサルタントとは、ジョブ・カードを活用したキャリア・コンサルティングを効果的に行うための講習を受講することで認定されるキャリア・コンサルタントで、講習は厚生労働省より委託を受けた団体等が実施しています。

 標準レベルキャリア・コンサルタントとは、厚生労働省が規定したキャリア・コンサルタント養成講座(140時間)を受講した後、キャリア・コンサルタント能力評価試験に合格することで認定されるキャリア・コンサルタントで、最も取得人数の多いレベルです。平成27年9月現在、認定団体はこちらにある10団体となっています。そして、今回の国家資格化はこの標準レベルといわれています

 熟練レベルキャリア・コンサルタントとは、標準レベルキャリア・コンサルタントの上位に位置づけられ、技能士試験である2級キャリア・コンサルティング技能士に合格することで認定されるキャリア・コンサルタントです。この試験は技能士試験の中でも難関部類で学科試験が約50%、実技試験が約20%の合格率のため、学科+実技試験のトータルで考えると約10%の合格率となります。

 指導レベルキャリア・コンサルタントとは、熟練レベルキャリア・コンサルタントの上位に位置づけられ、技能士試験である1級キャリア・コンサルティング技能士に合格することで認定されるキャリア・コンサルタントです。この試験は2級キャリア・コンサルティング技能士よりさらに難関で、学科試験が約30%、実技試験が約10%の合格率のため、学科+実技試験のトータルで考えると約3%の合格率という非常に狭き門となります。

 このようなキャリア・コンサルタントですが、なぜ国家資格化の動きがあるのか? その答えとして、6/11に政府が発表した『「日本再興戦略」改訂2015』という国家戦略の中に「セルフ・キャリアドック(仮称)の導入推進」というキーワードが参考になります。

 これによると、セルフ・キャリアドックとはこのように定義されています。

定期的に自身の職務能力を見直し、今後、どのようなキャリアを歩むべきかを確認した上で、身に付けるべき知識・能力・スキルを確認する機会(「日本再興戦略」改訂2015(平成27年6月30日閣議決定)(抄)① P.1中段)

 また、

働き手個人が「セルフ・キャリアドック(仮称)」を受けた際の経費の一部について、一般教育訓練給付の対象にすること等個人への支援策について検討をし、本年度中に結論を得る。(「日本再興戦略」改訂2015(平成27年6月30日閣議決定)(抄)① P.1下段)

とあるように、セルフ・キャリアドックを後押しする制度の検討も進められているようです。つまり、国は労働者一人ひとりが自分自身のキャリアを考え、より良いキャリアづくりができるように自らを振り返る機会をつくることを推し進めていくと取れます。それは、仕事の内容(職種)や働き方が多様化される中で労働者一人ひとりのキャリアづくりを行うことが、社会全体の雇用の促進につながるを考えているからではないでしょうか。

 そのためには、キャリアづくりを専門で行うキャリア・コンサルタントの存在が必須です。しかし、現在のキャリア・コンサルタントは上述のように明確なレベル分けはなされているものの、キャリア・コンサルティングを行うことに免許などが必要ないため、キャリア・コンサルティングの質が担保しづらいという問題点があるのだと思います。そのため、今回あえて標準レベルに免許制のキャリア・コンサルタント国家資格を新設する方法を取ったのではないかと推測しています。

■キャリア・コンサルタント国家資格を取得するには

 キャリア・コンサルタント国家資格の取得方法は現時点では明示されていません。しかし、標準レベルキャリア・コンサルタント資格を提供している団体の情報をみると、ある程度の枠組みがみえてきます。

なお、法案が成立した場合、2016年3月末までに標準レベルキャリア・コンサルタントの試験に合格をされている方は、改正法の施行後のキャリアコンサルタント国家試験の合格者として取り扱われる予定です。(JDCA(日本キャリア開発協会)「標準レベルキャリア・コンサルタント資格について(続報)」より抜粋)

法案成立により平成28年度3月までに、資格取得済 及び 認定試験合格をされた場合は 国家資格への移行措置がとられる予定になっております。(CCA(キャリアカウンセリング協会)「標準レベルキャリアコンサルタント資格の法制化について」より抜粋)

 これらのことから、標準レベル以上の資格を有している場合は、国家資格への移行措置が取られることはほぼ間違いないと思われます。そのため、既に標準レベル以上の資格を取得されている方は、キャリア・コンサルタント国家資格が施行される平成28年4月1日以降に、所定の手続きを踏めば晴れて国家資格を取得することができると思われます。

標準レベル以上:現段階で熟練レベル、指導レベルに移行措置が取られることは明言されていませんが、熟練レベル、指導レベルが標準レベルの上位に位置づけられることから、標準レベルと同様の措置が取られると推測しています。

 それでは、これからキャリア・コンサルタント国家資格を取得しようと考えている方はどうすればよいか? これも上述の標準レベルキャリア・コンサルタント資格を提供している団体の情報をみると分かりますが、国家資格が施行される平成28年4月1日まで(つまり、平成28年3月31日まで)に標準レベルの資格を取得すればよいことになります。しかし、ここで一つ問題になるのが平成28年3月31日という日付です。

 標準レベルを提供している民間団体の中には平成28年4月1日の国家資格施行後に、試験の提供を廃止する団体もあります。

キャリアコンサルタントの国家資格化が予定どおり 2016 年 4 月 1 日に施行される場合、現 在当協会が実施しているキャリア・コンサルタント試験は同年 3月末をもって廃止となります。 (日本産業カウンセラー協会「キャリアコンサルタントの国家資格化の動きに伴うお知らせ」より抜粋)

 そのため、標準レベルの資格を取得によって国家資格を取得しようとする場合は、その団体が平成28年4月1日以降も資格の提供を継続するかを確認された方が良いと思います。更にいうと、資格自体は平成28年4月1日以降も継続される場合であっても、国家資格への移行措置の期限が決められる可能性もあり、期限が切れた以降は直接国家資格を狙わなければならなくなりますので、十分注意が必要になります。

 また、独学でキャリア・コンサルタント国家資格を取得しようと考えている方は、現時点では2級キャリア・コンサルティング技能士を狙うしか方法がありません。ちなみに、私は独学で2級キャリア・コンサルティング技能士を取得しましたが、非常に時間がかかりました。そのため、2級キャリア・コンサルティング技能士を狙うより、直接キャリア・コンサルタント国家資格試験に焦点を合わせて学習された方が効率が良いのではないかと思います。ですので、国家資格を受験される場合は、今後厚生労働省が発表するキャリア・コンサルタント国家資格の情報に注視しておく必要があろうかと思います。

■キャリアづくりをすることが当たり前の世の中に

 9/11、改正勤労青少年福祉法が成立しましたが、この日、改正労働者派遣法も成立しました。改正労働者派遣法の話は過去のコラムに書かせてもらいましたが、この中には派遣労働者のキャリア推進について謳われています。

 このように世の中の流れは少しずつですが変わって来ているように感じます。これから先、働く人が自らのキャリアを考え、行動することが当たり前の世の中になるよう、私は私にできることをこれからもやっていこうと思います。

 そして、当コラムではこれからもキャリア・コンサルタント国家資格について情報をお伝えできればと思っています。

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