ITエンジニアへの5分間キャリア・コンサルティングやってます!

第167回 傾聴について考える

»

 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。

 先日、ある研修にサポート役として参加させてもらいました。その研修は対話に関する研修で、傾聴を使ったロールプレイも行われました。そのとき、傾聴について思うことがあったので、今回は傾聴について思うことを書きたいと思います。

■傾聴とは

 「傾聴」をgoogleで検索してみると、このように表示されます。

No16701

 確かに、傾聴は「傾けて聴く」と書くように、相手の話を熱心に耳を傾けて聴くイメージがあります。傾聴はコーチングやカウンセラー、キャリアコンサルティングなどで使われる相手の話を聞くための技法ですが、傾聴を行うとどのような効果があるのか? 一般的にはこのようにいわれています。

第1段階:ラポールの構築
第2段階:カタルシス効果
第1段階:自己理解
第3段階:行動変容

 第1段階のラポールの構築は相手との「信頼関係の構築」ともいわれますが、相手の話を熱心に聞き入ることで相手は自分の話しを聞いてくれているという感覚になり、次第に相手に対する信頼関係が築かれていくという考え方です。

 第2段階のカタルシス効果とは「心の浄化作用」とも呼ばれますが、ラポールが構築された相手は、自分の心の中にある不安、葛藤などの想い、感情を言葉に表現するようになります。そうすることで相手の心の中にある苦悩が軽減され、次第に安堵感や安定感を得ることができるようになってきます。

 このカタルシス効果によって自分自身の想いや感情を知ることができるようになります。そこには、自分自身にも気づかなかった想いや感情が隠されていることがあり、それが自分自身を知る第3段階の自己理解へと繋がります。

 こうして、自分のことが理解できるようになることで、自分の行動を改善しようとする意識が芽生え始めてきます。これが4番目の行動変容となり具体的に行動に表れてきます。

■傾聴が難しい訳

 このような傾聴ですが、全く経験したことがない人が行うと、一様に難しいといわれます。冒頭お話しした研修での傾聴のロープレでは部下の相談に乗る上司という設定で上司役を演じてもらいました。

 このロープレでは上司は傾聴をもって部下と接し、部下役の人には上司が自分の話しを聞いてくれていると感じた場合に裏設定(その人の感情や想いなど)を伝え、悩みの解決を図っていくようなストーリーになっていました。ロープレを実際にやってみると、上司に話を聞いてもらえたと感じた部下役の人は半数以下でした。半数以上の部下役の人は話を聞いてもらったというより、ただ解決方法を教えてもらっただけといわれました。そして、ロープレ後の意見交換では、「この設定だと、どうしても上司が部下に答えを指し示すよね」のような答え方をされる方が多くおられました。

 この感想を聞き、傾聴の経験のない人にとって傾聴という行為は難しいものだと改めて感じました。それは、「相談を受けると、人は答えを出してあげるべきだという先入観(固定概念)がある」と感じたからです。

■傾聴が必要な訳

 しかし、この考え方には一つ問題があります。それは、上司は自分の答えを部下に強要する可能性があることです。一般的に考えれば、上司に相談し、上司から答えをもらったのであれば、部下その答えに従うのかもしれません。しかし、本当にその答えで部下が納得ができているのか、上司の答えに対する部下の腹落ち感があるかどうかは分かりません。

 同じ答えを指し示すにしても、上司が提示した答えを100%我が事として受け取ってもらい、自発的な行動を促してもらった方が良いはずです。そのためには傾聴が必要になってきます。先ほど、ロープレで「この設定だと、どうしても上司が部下に答えを指し示すよね」と答えられていたグループにキャリアコンサルタントの立場から以下のようなフィードバックのコメントをさせてもらいました。

  • 相手の話を聞いた際、もう少し細部まで話を聞くように努める
  • 相手の話に対して、もっと感情を表してみる
  • これらを十分行った上で、まずは相手に答えがあるかどうかを聞いてみる

→答えがあれば、その答えに抜けや漏れがないかを一緒に考えてみる

→答えがなければ、トレーナーの考えであることを説明した上で解決方法を提示し、相手の考え方を確認する

 このようなフィードバックに皆さん深く頷かれました。そうして、再度傾聴のトレーニングをした際、改めて傾聴の効果や必要性を実感されていました。

■普段の生活で傾聴を取り入れてみる

 実際に傾聴を使いこなすためには訓練が必要です。しかし、それらは普段の生活で行うことができます。傾聴のテクニックはいろいろとありますが、まずはそういったことを深く考えずに相手の話を真摯に熱心に聞くことを心がけてみてください。それができてくれば、自ずと傾聴は身についてきます。

 傾聴にはたくさんのメリットがあります。もし、気になった方はぜひ挑戦してみてくださいね。

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する