ITエンジニアへの5分間キャリア・コンサルティングやってます!

第106回 商業出版のススメ1 企画出版の流れを知る

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 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。

 これまで何度かこのコラムでも紹介させていただきましたが、5/30に技術評論社さんから「ITエンジニアのキャリアデザイン術~望みをかなえる「壁」の越え方」が電子書籍として発売されました。そこで、久しぶりの「○○のススメ」シリーズとして、どうやって商業出版を実現したのか、その経緯をお話ししたいと思います。これから商業出版にチャレンジしようとお考えになっている方の参考になれば幸いです。

■出版をしようと持った動機

 私が本を出版したいと思ったのは、ある一つの想いからでした。それは、このコラムのテーマでもありますが、

ITエンジニアは自ら望むキャリアをつくることができる

これを多くの人に知ってもらいたいと思ったからです。今回出版した本にも書きましたが、ITエンジニアが置かれている現状は決して楽観できるものではありません。そのため、望まずしてITエンジニアを廃業される方は数多くおられます。また、ITエンジニアとして仕事を続けている人の中にも将来の不安や不満を抱きながら日々の仕事をされている方も数多くおられます。

 私は、ITエンジニアのキャリアづくりを行う場合、専門のキャリア・コンサルタントによるキャリコンを受けていただくことが有効な手段だと思っています。しかし、世の中にはキャリコンを受けることができないITエンジニアが数多くおられます。そういったITエンジニアのために何かできないか? と考えていました。そうして辿り着いた答えが出版でした。

 私がこれまで行ってきたキャリコンの技術やスキルを、ひとりでもキャリアづくりができるような方法にして本の形で提供することができれば、ひとりでも多くのITエンジニアがその人が望むキャリアに少しでも近づくことができるのではないか、そのお手伝いができるのではないかと考えました。これが、私が出版をしたいと思った動機です。

■出版にも色々あることを知る

 そもそも、本を出版するというのは出版社を通じて自分の書いた本を書店で販売してもらうことです。もう少し詳しくいうならば、出版する本に対してISBNコード(国際標準図書番号)を取得し、国立国会図書館に納本する義務を負う出版のことをいいます。

書店:書店といえば昔は実際の本屋さんしかなかったですが、最近ではAmazonのようなネットの本屋さんもあり、これらを通じて本を販売するルートもあります。

納本する義務:国立国会図書館法という法律があり、国内で発行されたすべての出版物は国立国会図書館に納入することが義務づけられています。

 一般的に本を出版する場合、出版社を通じて本を出版することになりますが、出版には大きく分けて「商業出版」「自費出版」という2つの出版方法があります。

 商業出版とは、出版にかかる一切の費用を出版社が負担し、出版社から本を出版する方法で、著者は出版に際して一切費用を負担することはありません。自費出版は出版にかかる費用を著者が全額、もしくは著者と出版社が折半する形で負担し合い、出版社もしくは著者自らが出版する方法です。このときの費用は本の冊数にもよりますが、おおよそ数十万~数百万円程度かかるそうです。そのため、少し前までは自費出版といえば高額のためあまりなじみのない出版方法でしたが、電子書籍の普及に伴い、最近では比較的簡単かつ安価に本を出版ができるようになり、自費出版で出版される方も多くなってきました。

 商業出版と自費出版はそれぞれにメリットとデメリットがあり、どちらが優れているということはありません。しかし、私は本を出版する目的を考えたときに自費出版よりも商業出版の方が適していると思い、商業出版する道を選びました。

■企画出版の細く長い道のり

 商業出版で自分の書いた本を出版する場合、2通りの方法があります。

  1. 出版社が特定の著者に対して原稿の作成を依頼する方法
  2. 著者が出版社に企画を売り込み、その企画を出版社が採用することで出版する方法

 一般的な商業出版のスタイルは1.だそうです。この場合、あらかじめ出版社が本のテーマを決めており、そのテーマに基づいて編集者が適切な著者を選び、原稿の作成を依頼します。そうして、著者が原稿を作成し出版に至るケースです。2.は著者自らが本のテーマを作成し、それを出版企画書や原稿の形で出版社に売り込み、出版社がその企画を採用することで出版に至るケースで、こちらは企画出版ともいわれています。

 1.の場合、著者は依頼される側なのでいつ出版社から依頼が来るかは分かりませんが、依頼が来た場合、商業出版できる確度は比較的高くなります。ただ、必ずしも出版できるわけではなく、出版社との話し合いなどで企画が流れてしまうこともあります。実は、私も過去に大手出版社から声をかけていただいたことがありました。そのときは、出版社の企画に対して著者を探していたところ、編集者の方が私のコラムをみてくださり、直接連絡をいただきました。その後、出版に向けての打合せを行い、いろいろ検討を重ねていたのですが、結局その企画自体が流れてしまい、出版には至りませんでした。

 また、1.で出版する場合、著者は出版するテーマを選ぶことができません。今回、私は出版したいテーマがあらかじめ決まっていたので、必然的に2.の企画出版で出版するしかありませんでした。しかし、企画出版で出版するのは非常に難しく、実現する可能性は0.1%以下なのだそうです。これは、ある出版社の方から教えていただいたのですが、企画出版が実現するまでに編集社内で何度も審査されるため、かなりの確率でふるいから落とされてしまうのだそうです。ちなみに、私の場合はこのような流れで出版されました。

【企画出版までの流れ】

  1. 著者が出版企画書を作成し、出版社に送付する
  2. 出版社の編集者が出版企画書を検討し、出版の可能性を審査する(1つめの審査
  3. 出版社の営業部署が出版企画書を検討し、売れる本になるかどうかを審査する(2つめの審査
  4. 著者の筆力を測るため、第1章の原稿を提出し、出版に耐えうる文章が書けるかどうかを審査する(3つめの審査)←ここをクリアすれば出版が決定!
  5. 著者が原稿を作成する(原稿の作成が遅過ぎたりすると、出版が流れる可能性もあるそうです)
  6. 原稿完了後、編集者、著者共に校正作業を行う
  7. 編集者が出版の準備をする
  8. 出版!

 こうやってみてみると、企画出版というのは多くのハードルがあることが分かります。まず最初に編集者の方に自分の企画を認めてもらう必要がありますし、編集者に認めてもらったとしても、次の営業部署が「売れる」と判断できなければ出版には至りません。私の場合、多くの出版社に企画書を送ったのですが、その中でも良い返事をいただいた出版社が数社ありました。しかしながら、ほとんどの出版社がその次の営業部署の審査で落ちてしまい、その出版社からは出版に至りませんでした。また、営業部署の審査が通ったとしても、原稿のレベルが低ければ、その時点で出版自体取り消されてしまうこともあるそうです。私はコラムを毎週書いていたので、ひょっとしたらある程度の筆力が身についていたのかもしれません。

 先ほど、企画出版が実現する可能性が0.1%以下と書きましたが、これだけの段階を経ることを考えるとこの数字には納得させられてしまいます。ちなみに、このことについてある出版社の方に話を聞いたのですが、出版社の側からすれば、素性も分からない人に出版のために何百万円も投資しなければならないため、企画出版というのは出版社にとってもかなりリスクのあることなのだそうです。だから、出版社は実績のある著者を選び出版に対するリスクを下げる傾向があるのだそうです。ただ、企画出版は次の著者を発掘、育てる意味合いもあるそうなので、出版社としてはやっていかなければならないことなのだそうです。

■宣伝ですっ!

 少し話が長くなってしまったので、今回はここまでとさせていただき、次回からは企画出版までの流れを1つずつ振り返ってみようと思います。

 さて、そんな企画出版で生まれた私の本ですが、現在、以下のサイトで絶賛発売中ですっ!

Amazon Kindleストア

楽天Kobo

技術評論社サイト(Gihyo Digital Publishing)

 もし、気になる方はぜひお立ち寄りください!

 それと、コラムニストのabekkanさんも6月に「忙しいSEも『育児ナシ』を卒業! 」を電子書籍で出版されることになったそうです! ぜひぜひ、チェックしてみてくださいね!

Comment(6)

コメント

中津山 恒

出版、おめでとうございます!
先ほどKindle版を購入させていただきました。

拙著は自力で出版したので原稿チェックに気を遣いましたが、一部の図が表示されないという、特大のバグがありました。
原因はプレビューアと端末/アプリの差でしたが、読者の皆様にご迷惑をおかけして、非常に心苦しい思いをしました。
出版をお任せできる場合は、そういう凡ミスはなくなるのでしょうけど...

中津山さん、

いらっしゃいませ!コメントありがとうございます。

私の場合、結局4回著者校正を行うことになりました。
また、著者校正終了後も編集部内で校正は続いていたそうで、
中津山さんの仰るような動作検証も編集部内でされていたと聞いています。

やっぱり本を出すって大変なことですよね(汗

大変遅くなりましたが、オルタナティブ・ブログで書評を書かせていただきました。
http://blogs.itmedia.co.jp/t0tsukawa/2014/07/it-4840.html

若いITエンジニアにぜひお勧めしたい一冊です。

ちょうど私自身のキャリアチェンジを決めた後で出版されたこともあり、退職まで書評は延期していたのですが、それにしても遅くなってしまいました。
また、自分のことが多くなって、あまり書評らしくなくて恐縮です。

PS. 購入時より450円安くなっていて、驚きました!

中津山さん、

コメントありがとうございます。

また、書評もありがとうございます。早速拝読させていただきました。
細かく読んでくださったことが分かる書評で、また改善へのコメントもシッカリ読ませていただきました。
職業の部分は仰るとおり、職種の説明が多すぎて通読には向いていない感があるように思います。この辺は辞書がわりに使ってもらうなど、使い方の説明を入れた方が良かったかもしれません。。。次回への改善として取り組ませていただきます!

それにしても、Amazonの価格についてよく分からないです(汗
本の価格については著者には連絡が入ってこないので、ひょっとしたら出版社が販促としてやってもらっているのかもしれませんね。

勝手なことを申し上げて恐縮です。
参考になりましたら幸いです。

価格ですが、出版社ではなくAmazonが販促のために値下げしていると思います。
他社でも販売している場合はロイヤリティは35%で、かなり値下げ余地がありますので。
拙著もAmazonが10%値下げしていて、他社と差別化を図っているようです。

中津山さん、

コメントありがとうございます。
非常に参考になりました!

価格の件ですが、そんな仕組みになってたんですね、知らなかったです(汗
今回の出版で価格に関してはノータッチなのですが、価格が安くなることでたくさんの人に読んでもらえるようになると思いますので、ありがたいことではありますね。

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