第40回 四方山話(22) 水平思考のススメ4
こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。
水平思考ネタも4回目になりました。今回は水平思考の4手法の最後である「アイデアを組み合わせてみる」手法をご紹介したいと思います。今回の手法はその名のとおり、アイデア勝負になっています。そのため、いかにしてアイデアをひねり出すか? といった点も併せてご紹介したいと思います。
■アイデア創出法-SCAMPER法
今回ご紹介する「アイデアを組み合わせてみる」手法では、問題を解くために必要なアイデアを生み出し、それらを組み合わせることで解答を見つけ出します。そのため、この手法ではアイデアをいかにたくさん創出するかが一番のポイントになってきます。アイデアを生み出す方法は巷にたくさんありますが、今回はアイデア創出方法の一つであるSCAMPER(スキャンパー)法と呼ばれるものを一部カスタマイズした手法でアイデアを創出してみます。
SCAMPER法※とは、アレックス・F・オズボーンが提唱した「オズボーンのチェックリスト」をボブ・エバールが使いやすいように発展、改良させた発想法です。アイデアを創出する上で有効な方向性を7つに分け、それぞれの内容を掘り下げることで、簡単にアイデアを創出させることができるような仕組みになっています。
《SCAMPER法の7つの方向性》
- Substitute(変える、代用する)
- Combine(組み合わせる)
- Adapt(適応させる)
- Modify(修正する)
- Put to other uses(他の使い道)
- Eliminate(省略する、除去する)
- Rearrange/Reverse(並べ替える/逆にする)
※SCAMPER法:SCAMPER法についてはこちらの記事もご参照ください。
この7つの方向性を内容を掘り下げるためには専用の質問リストを使います。一般的なSCAMPER法では48の質問リストを使いますが、今回は筆者の方で簡便化させた質問リストを使うことにしましょう。
このSCAMPER法を使った水平思考の「アイデアを出してみる」手法はこのようになります。
《SCAMPER質問リストを使った「アイデアを出してみる」手法》
- SCAMPER質問リストからアイデアを出すために、使えそうな質問に「OK」、使えなさそうな質問に「NG」にチェックをつけてみる※
- 「OK」にチェックした質問に、問題や前提条件から浮かび上がるキーワードを当てはめ、いくつかのアイデアを創出してみる
- いくつかのアイデアを組み合わせ、問題に対する答えを導き出してみる
※チェックをつけてみる:使えそうな質問を選ぶ基準は直感でも大丈夫です。質問リストをサッと見渡し、直感で使えそうな質問を選んでみてください。
■今回の問題は難問です!
それでは、今回も水平思考の問題をお出しします。今回は難問です!
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《ウミガメのスープの話》
男がレストランに入り、メニューから「ウミガメのスープ」を注文しました。
それを一口食べた彼はレストランを飛び出し、持っていた拳銃で自殺してしまいました。
何故でしょうか?(ヒント)
Q:頼んだものには毒が入っていましたか? あるいは、何か男を不愉快にさせるものだったのでしょうか?
A:いいえ。Q:料理を口にしたことが、男の自殺の直接的な原因だったのですか?
A:はい。Q:男はその料理の味に覚えがありましたか?
A:いいえ。しかし、そのことこそが自殺の理由でした。Q:料理に入っていたのはウミガメの肉ではなく、人の肉、ペットの肉、あるいは絶滅に瀕した生物の肉だったのでしょうか?
A:いいえ。レストランで出されたスープに入っていたのは、確かにウミガメの肉でした。Q:男が料理の味に覚えがあったかどうかは、彼の過去に起きた何らかのできごとと関係がありますか?
A:はい。(ポール・スローンのウミガメのスープ ポール・スローン/デス・マクヘール(著)より一部抜粋)
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この問題は水平思考では非常に有名な『ウミガメのスープの話』と呼ばれる問題です。かなりの難問ですが「アイデアを組み合わせてみる」の練習にはピッタリです。今回は筆者が問題を解く過程を書いていますので、あなたも考えたつもりになって読んでくださいね。
まず最初にSCAMPER質問リストからアイデアを生み出す上で使えそうな質問をいくつか選んでみましょう。コラムの文章量の都合もありますので、今回は質問を3つに限定します。サッと質問リストを見渡してみると、以下の質問が使えそうです。
質問1.○○の意味を変えることができるか?(Modify)
質問2.○○は他にどのような何か(モノ・コト・ルール)にいい換えられるか?(Rearrange/Reverse)
質問3.○○から何か(モノ・コト・ルール)を取り除いた時、何が犠牲になるか?(Eliminate)
それでは、これらの質問から一つひとつアイデアを創出してみましょう。
質問1.○○の意味を変えることができるか?
まずはこの質問から考えてみます。あなたならこの○○を何に見立てますか? ……筆者は直感的に「料理」というキーワードが思い浮かびました。そうすると、
「料理の意味を変えることができるか? 」
「料理の意味」って何だろう? 料理は食べ物ですが、食べ物ではない別の意味って何があるでしょうか。
料理 -> 食べるもの
↓
(意味を変える)
↓
料理 -> ???
広い意味で考えれば色々出そうですが、確かこの問題では食べることによって何かに気付いたようですので、
料理 -> 気付き
と考えてみましょうか。そうすると、
料理 -> 食べるもの
↓
(意味を変える)
↓
料理 -> 気付くもの
となりますね。
質問2.○○は他にどのような何か(モノ・コト・ルール)にいい換えられるか?
次はこの質問です。さて、○○を何に見立てましょうか? ……筆者は「自殺」というキーワードが思い浮かびました。そうすると、
「自殺は他にどのような何か(モノ・コト・ルール)にいい換えられるか?」
となります。ここでは、自殺を他の言葉でいい換えてみるということでしょうか。自殺というのは「自らを殺す」と書きますので、「自らが殺される状況」といい換えることができそうです。つまり、
自殺をする
↓
(いい換える)
↓
自らが殺される状況
となりそうですね。
質問3.○○から何か(モノ・コト・ルール)を取り除いた時、何が犠牲になるか?
最後の質問です。この○○は何に見立てましょうか? ……そうですねぇ、ここでは「男」というキーワードにしてみましょうか。そして、「何か(モノ・コト・ルール)」を質問2.で出た「自らが殺される状況」と見立ててみましょう。そうすると、
「男から自らが殺される状況を取り除いた時、何が犠牲になるか?」
ナンダコリャ感が満載ですが、それでもじっくり考えてみます。自らが殺される状況を取り除かれるというのは、端的に考えれば「自殺をしなかった」といえるでしょう。つまり、自殺をしなかったことで何が犠牲になったか? ……そりゃあ、自殺したいという想いが犠牲になったのでしょう。自殺したいという想い、それは何かしらの自責の念ではないでしょうか。このように考えると、
男が自殺をしなかった
↓
(犠牲になるもの)
↓
自責の念
となりますね。
さて、これまでで3つの情報(アイデア)が揃いました。次は、これらを組み合わせて考えてみましょう。
《ここまでに出てきたアイデアのまとめ》
- 料理によって何かに気がついた
- 自殺は自責の念といい換えられる
- 男には自責の念があった
これらを組み合わせてみると、どのようなストーリーが作られるでしょうか。筆者はこのように考えてみました。
「男はウミガメのスープを食べることで何かに気がついた。その気付きのために男は自責の念にかられ、自殺をしてしまった」
まぁ、無難なストーリーですね。一応、問題との矛盾もなさそうです。それでは、この話のバックボーン(背景)を考えてみましょう。これはストーリーに肉付けするだけですので、さほど難しくはないでしょう。
《『ウミガメのスープの話』のバックボーン》
- 男はウミガメのスープを飲みたくてレストランに来た
- レストランで注文したウミガメのスープは、男が知っていたウミガメのスープの味とは違うことに気がついた
- その気付きは男に自責の念を与えたため、男は自殺をした
ここまで内容が固まってくると、いよいよこの問題の核心がみえてきそうです。筆者はこの問題の核心を以下のように見立てました。
《『ウミガメのスープの話』の核心》
「男が自殺をしなければならなかった気付きとは何か?」
さぁ、あと一歩の所まで来ました。これが分かればこの問題は解けたも同然です! この問題に隠されている真実は何でしょうか? これが最後です。目一杯イメージを膨らませて考えてみましょう。
・・・・・・(小一時間ほど)・・・・・・
閃きました! こんな話はどうでしょう?
《『ウミガメのスープの話』の答え》
男は繁盛している料理店を経営している腕の立つコックだった。ある日、同じ町で別の店を経営しているコックから勝負を挑まれた。
どちらの店が美味しい「ウミガメのスープ」を作れるかを競いあう。買った店は負けた店を自分のモノにできることとする。審査は公平を期すため、町の人を対象にし、両方の店のウミガメのスープを食べた後、美味しかった店に投票してもらうこととする。
男は自分の料理の腕に絶対的な自信を持っていたので、この勝負を受けることにした。しかし、この勝負で男は圧倒的な差で相手の店に負けてしまった。
後日、男は負けた相手の店のウミガメのスープがどんな味か知りたくなり注文してみた。すると、その味は料理とはいえないほど、まずいスープだった。
これに気づいた男は、この勝負がインチキだったことを悟り、自分の腕を過信して勝負を挑んだことに自責の念を追ってしまった。そのことが原因で、男は失意のうちに自殺してしまった。
多少、こじつけ感はありますが、話の整合は通ってそうですね。ちなみに、模範回答はこんな感じです。
《『ウミガメのスープの話』の答え(模範解答)》
男は何年か前に、家族や数人の仲間たちとともに海で遭難し、餓死寸前になるまで漂流したことがあった。
彼がレストランでウミガメのスープを頼んだのは、漂流中に食べたウミガメのスープの味を忘れられなかったからだった。
しかし、男はスープを口にした瞬間、自分が今、初めてウミガメのスープを食べていることを知った。
かつて口にしたウミガメのスープとは、味が全く違っていたのだ。
そして、彼は気づいてしまった。
漂流中に「ウミガメのスープ」だと言われて食べた肉が、実は漂流中に衰弱死した自分の息子のものだったことに。(ポール・スローンのウミガメのスープ ポール・スローン/デス・マクヘール(著)より一部抜粋)
何だか、模範解答、怖いです(汗)
こちらの内容も多少無理があるような気もしますが、話の整合自体はちゃんと取れていることが分かります。このように、水平思考で問題を解くといくつもの解答が出てきます。しかし、筆者の答えも模範解答もどちらも話の整合は取れているので、正解といえるのではないでしょうか。
■水平思考で大事なこと
これまで、水平思考を使った問題の解き方をご紹介して来ましたが、水平思考は答えもさることながら、答えを導き出すまでの過程が重要になってきます。考え方の過程をしっかり身につけていれば、どのような問題に出会ったとしても、水平思考的な考え方で解法を導き出すことができるようになります。
これこそが、水平思考のだいご味ではないかと筆者は思います。
■ところで…
以前、勉強会のことを書かせてもらいましたが、今回2つのワークショップを企画してみました! もし、良かったら覗いてみてください!
ITエンジニアのための「セルフキャリアプランニング」ワークショップ(終了しました!)
ITエンジニアのための「現場で使えるコーチング」ワークショップ(終了しました!)