追いかけるものと幻滅期
新しい技術やサービスを利用しようとしたとき、Web に展開されている多くの記事にまず目を通すことが多いと思います。業務で利用するときなど多いのは、サービス立ち上げ時で記事にもなっていないものを利用することはあまり行われず、ある程度名前が流行り出し、SNS や各種記事で取り扱われるようになってから初めて採用するかどうかを検討するのではないでしょうか。リスク回避として仕方のない面はありますが、安定を重視する日本企業の動きが遅いと思われる原因の一つでもあります。
ハイブ・サイクルと呼ばれる図を見たことがある人は多いと思います。黎明期・流行期・幻滅期・回復期・安定期と段階づけられた図は、新技術やサービスがどういった状況にあるかという目安を考えさせてくれるものです。正しく状況を表すものではないと個人的には考えており、あくまでも一つの目安として捉えています。例えば広範囲でのクラウド技術のように安定期に分類されるもの、NoCode や LowCode のように幻滅期にあると思われるものと言えばイメージしやすいでしょうか。自分が気になっている技術やサービスが、今どの段階にあるかと考えてみることで接し方も変わってきます。
登場したての技術やサービスに目を付けた場合、黎明期から流行期を感じ取ることができます。最初は自分や少数の人くらいしか話題にすることのなかったものが、徐々に多くの人の話題として成長していくのを見ていると、別に自分が作成した技術やサービスではないのですが非常に感慨深くなります。この時期はプラスの面にばかり目が行きやすくもなり、自社でも採用しようと動く人も多くなります。
ところがここで多くの人が触れていくことになり、成功だけではなく失敗した情報も増えてきます。これが幻滅期の始まりで各メディアや SNS でも技術やサービスの悪い面が目立つようになります。実際にはそれと同じくらい、もしくはそれ以上に成功しているケースも多いのですが、失敗したケースはとにかく目につきやすくイメージにも残りやすいので、この技術やサービスは思っていたものと違う、といった間違った印象を覚えやすくなってしまいます。
正しく利用する、適性に合った使い方をしていればこれまで通りよい結果となるのですが、そうではない使い方をしたために失敗してしまうことが増えるのもこの時期の特徴です。ですが利用している側で、間違った使い方をしたために失敗した、と考えられる人は極少数でしかありません。ほとんどの場合では、思ったほどには使えなかった、と感じてしまうのです。
そのようなケースが積み重なり SNS では悪いイメージが先行します。そしてそれに乗っかるようにメディア上でも同じようにネガティブ寄りの記事が増えてきます。この流れはわかっていてもどうすることもできません。
ここで改めて考えてもらいたいのはもともとの技術やサービスは、適した形で使うことではじめて良い成果を上げられるものだということです。適さない形で失敗したとして、それを重要視する必要はありません。もし自分たちが利用したいと考えていたケースで失敗談が見つかった場合は、利用方法が間違っていたと考えるのが適しています。これは自分たちに合わせて技術やサービスが存在するのではなく、サービスや技術に自分たちが合わせる必要がある昨今の流れと合わせて考えてみるのが重要です。
幻滅期にある以上、どうしても明るい話題よりも暗い話題の方が目立ちます。ですがそれに惑わされずに向き合い、自分が解決したいことや成し遂げたいことと技術やサービスの使い方を改めて見つめなおすことで、後に続く回復期や安定期に突入しゆっくりと成長を続けていくことになるのだと考えます。本当にたいしたものでなければ、そもそも流行ることもないのです。流行したものが少しネガティブに取り扱われた程度で、サービスや技術の採用を取りやめるのではなく、再度利用方法が適しているかどうかをチェックしなおすのがよいのではないでしょうか。
周囲の声がどうであれ、よいと思ったものを利用することは重要なことです。それはちゃんと考えたうえで利用していることであり、流行りものだから利用して失敗する、そういった確実に失敗する流れにのらないためにも、冷静に周囲を見つめる必要があるのではないでしょうか。