地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

必要が不要に変わる

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 最近の Web 記事で、ファイルやフォルダを知らない若者が増えている、という内容のものがありました。常日頃 PC を利用する IT 業界に身を置く人間としてはなかなかに衝撃的な話題と感じたものですが、よくよく考えてみると今日に至るまで似たようなことを繰り返していました。

 例えばフォルダという呼び方も、一部界隈にとってはディレクトリと呼んでいたものが統一されたようなものですし、モデムを通した通信方法などはもはや利用しているところも少ないので知らない人の方が多くても不思議ではありません。フロッピーディスクは姿を消し、保存を表すアイコンの意味を知らない人も多くなりました。このような出来事は年を取っている側からすると、これまで常識であったものが若い世代に対して通じなくなったことの一つと言えます。そう考えるとこれまでにも、自分が知らないだけで非常に多くの物事が通じなくなっていたのではないでしょうか。

 物事が通じなくなることは、極端な言い方をすると、知っておくほど必要がなくなったから、とも言い換えることができます。世の中の移り変わりや技術の進歩、一概にはこれと言い切れないほど多くの物事があったうえで、過去を不要にすることができるようになります。今時点であれば、知っておく必要が高い知識でも、将来においてはそうとは限りません。先ほどのモデム通信の例などはまさにそれで、当時は知っていて当然の知識であっても現在ではほとんど活用する場面もなく、知らないでいてもあまり大きな問題にはなりません。もちろん、歴史として知っていることで活用できる面もありますが、多くのユーザーにとってはそこまで必要性は高くありません。

 これら過去の事例を踏まえると、何かを知らない若者が増えてきた、という話を目にする機会が増えてきたということは、その知識を用いないでも十分に対処が行えるよう発展し始めている、と考えることができます。知識として知っていなくても、目的が達成できるよう高度に隠蔽されてきたケースもあります。その場合でも、ある程度までなレベルで利用するだけであれば、これまでより必要とされる知識が少なくてすむことになります。例えばクラウドにおけるハードウェアな部分は、このような事例に近いように感じます。

 IT 業界に身を置き作る側にいるのであれば、なかなか納得しがたいものでもあるでしょう。ですが、作る側ではなく使う側から見た場合、同じことがより楽に実現できるのであれば、楽な方法を採るものです。そしてそれが徐々に広がり、一般化したタイミングでこれまで必要であったものが、なくても困らないものに変化するのです。ここまでくると、作り手側でも一部の人を除き利用しなくても困らない土壌ができあがったことになります。ある意味で淘汰されたとも言えるこの状況までくると、新しいものによってこれまでのものが隠蔽、または上書きされたとも言えるでしょう。

 年長者側としては、自分たちには当然のことを知らない人間に出会った場合、今どきの若いもんはこんなこともしらんのか、ある種決まり文句のような台詞を言いたくなることもあるかと思います。ですが、その台詞を言いたくなったということは、世の中が変わってきていることの表れでもあります。変に固執せずに、時代が変わってきたと考えることで新しい物事を感じ取ることができるようになるのかもしれません。本当に知らなくてはいけないことを知らない相手である場合もあるでしょうが、そこは深く考えずに注意していくことは、年々重要になっていくのではないでしょうか。考え方は柔軟であることを維持できるよう、常に気を付けていきたいものです。それこそファイルやフォルダというものも、数年したら利用しなくなっているのが当然なんてことも、十分にありえることなのですから。

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