第633回 自分なりの考えを持つことの大切さ
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
私はPMI認定のインストラクターをやらせてもらっています。この資格を持っているとPMI公認のPMP試験対策講座を担当させていただくことができ、かれこれ1年半以上ずっとほぼ毎月講座を担当させてもらっています。
流石にこれだけの期間やらせてもらっているとPMBOKへの理解も進んできます。そして、PMBOKの内容を理解すればすると理解に苦しむ個所が増えてきたりします。そんなときにはPMI本部に問い合わせをするようにしているのですが、全ての回答をもらえている訳でもありません。
回答がもらえないと正直講座での説明に影響するので何とかして欲しいと思うのですが、何ともならないので自分なりの解釈で話をするようにしています。今回はPMBOKをネタに自分なりの考えを持つことについて書きたいと思います。
■PMBOKにおけるプロジェクト予算の考え方
少し細かい話になってしまうのですが、PMBOKではプロジェクトの予算をこのように定義しています。
こちらはPMBOK第6版から引用した図です。簡単に説明すると、
- 作業(アクティビティ)のコストを見積もり、それにリスクを想定した予備コスト(アクティビティのコンティンジェンシー予備)を加えたものをワーク・パッケージ※のコストとして見積る
- ワーク・パッケージのコストにプロジェクト全体の予備コスト(コンティンジェンシー予備)を加えたものをコスト・ベースラインとして見積もる
- コスト・ベースラインに想定外のイレギュラー時に使う予備コスト(マネジメント予備)を加えたものをプロジェクト予算とする
※ワーク・パッケージ:はWBSの最下層の項目のこと
※コスト・ベースライン:プロジェクトにおけるコストの利用を時間の経過とともに表現したラインで、一般的にS字カーブのような形になる
となります。これが、一般的に広く知られているプロジェクト予算の考え方だと思います。
では、次。今度はPMBOK第7版から引用した図を見てください。
さっきのPMBOK第6版の図と違っている所がありませんか?
作業コスト見積りというのは、第6版におけるアクティビティ・コスト見積りと同じ意味です。それがコスト・ベースラインを指しており、そこにコンティンジェンシー予備が乗っかっているのがプロジェクト予算になってますよね。更に言うと、プロジェクト予算の上にマネジメント予備が乗っかっているような形になっています。
これって、明らかにPMBOK第6版と違いますよね。。。
■PMBOKの版数の違いによるプロジェクト予算に対するる高橋の見解
この件は本当に意味が解らず、PMIに問い合わせをしているのですが、現時点で明確な回答が得られていません。ただ一つ言えることはPMBOK第6版も第7版も世界中に広まっているものですし、PMI認定のインストラクターである以上、これが正しいものとして捉えなければならないと思っています。
だとしても、これってどう解釈すればいいと思います? これ、実は相当悩みました。で、私の出した見解は以下の通りです。
- 【解釈の拡張】第7版の作業コスト見積りにはアクティビティ(作業)のコンティンジェンシー予備が含まれている状態である
→(高橋の見解)第6版の考え方を踏襲 - 【変更点1】コスト・ベースラインの考え方の変更
第6版...ワーク・パッケージにプロジェクト全体のコンティンジェンシー予備を加えた予算
第7版...ワーク・パッケージそのものの予算
→(高橋の見解)そもそもコスト・ベースラインはWBSの最下層であるワーク・パッケージを積み上げたものとして定義されているので、第7版でシンプルな表現に変更したのではないか? - 【変更点2】プロジェクト予算の考え方の変更
第6版...コスト・ベースライン+プロジェクト全体のコンティンジェンシー予備にマネジメント予備を加えた予算
第7版...コスト・ベースライン+プロジェクト全体のコンティンジェンシー予備の予算
→(高橋の見解)マネジメント予備はプロジェクトマネージャの裁量で扱うことができない特殊な予算なので、第7版ではあえてマネジメント予備をプロジェクト予算から外したのではないか?
第6版、第7版のどちらも正であるとするならば、このように解釈するしか方法がないので、現状、私は講座でこのように説明をさせてもらいっています。。。
■自分の考えを持つことの大切さ
今回はPMBOKに定義されているプロジェクト予算について、PMBOKの版数の違いによる差異を私なりの解釈で説明させてもらいました。一応このコラムを書くにあたって一通りネットの情報は調べたのですが、プロジェクト予算についての説明がなされているサイトは数多く見つけることはできたものの、第6版と第7版の差異について言及されているサイトを見つけることができませんでした。
この件については今後PMBOK第8版が出たときに何かしらの進展が見られるかもしれません。しかし、今、PMPを取得しようと学ばれている方に対しては解決しておきたい問題でもあると思っています。そのため、私はこうしたこともちゃんと説明するべきではないかと思っています。
このようなことは世の中にはたくさん溢れています。今回のコラムを書いていて思うのですが、何かの違和感を感じたときはそれをほったらかしにしないで自分なりに調べ、考え、結論づけること。こうしたことを習慣にしておくと、情報の波に飲まれず、自分なりの考えを持って情報を向き合うことができるのではないかなと思っています。
ひょっとしたら、プロジェクト予算について学ばれている方がおられるかもしれません。このコラムがそうした方への一助になれたら嬉しいです。