第559回 信頼口座を高めるためには
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
コミュニケーションにおいて相手との信頼関係はとても重要です。それは、信頼関係がない中でのコミュニケーションはまともに機能しないからです。それでは、どうやって相手と信頼関係を高めていくかを考えた時、結局それは相手とのコミュニケーションによって積み上げていくしかありません。つまり、コミュニケーションを円滑に進めるために必要な信頼関係をコミュニケーションによって築いていくという「鶏が先か、卵が先か」状態になってしまいます。。。
7つの習慣ではこの信頼関係を信頼口座という言葉で表現しています。今回はこの信頼口座について書きます。
■信頼口座とは
信頼口座とは過去のコラムでもご紹介していますが、こうしたモノです。その時のコラムの内容を一部抜粋します。
人との関わりの能力を高めていくためには、当然のことながら関わりを持つ相手との信頼関係が重要になります。そこで、7つの習慣には「信頼口座」という考え方があります。信頼口座とは相手との信頼をお金のように見立て、銀行の預金口座のように例えた表現です。例えば、相手に信頼を増やす行為をした場合、相手の信頼口座の残高は増えていきます。しかし、相手の信頼を損なう行為をした場合、相手の信頼口座の残高は減っていきます。そのため、信頼口座は一人一人の相手に対して設定されています。Aさんの信頼口座の信頼残高は高い、Bさんは低いといった感じですね。
ここから分かるように、相手との信頼関係を高めていくためには、相手に設定されている信頼口座の残高を高めていく必要があります。つまり、相手に対して信頼の預け入れをしなければなりません。
先ほどのコラムの続きです。
ですので、私たちは関わりを持つ相手への信頼口座の残高を高めていかなければなりません。いい方を変えるならば、相手に「信頼」を預け入れるように振る舞う必要があります。しかし、この預け入れには注意が必要です。例えば、相手の成長を考え、あるアドバイスをしたとしましょう。アドバイスをした側は相手のためを思ってアドバイスをしたのだから良いことをしてあげたと思い、相手の信頼口座の信頼残高は増えたと考えています。しかし、アドバイスを受けた側は指摘されたことが納得いきません。余計なことをいわれたと感じ、内心腹を立てていたとします。だとすると、アドバイスをした側への信頼口座の信頼残高は減っています。このように信頼は自分と相手とでは捉え方が違う場合があります。
最近思うのですが、相手への信頼残高を損なう行為というのは無意識でやってしまっていることの方が多いような気がします。そして、その信頼を損ねるという行為は相手の表面上には現れず、相手の内面に少しずつ蓄積されていきます。それは外見からは分からないので、自分の行為が相手の信頼残高を増やしているのか減らしているのかが分かりません。寧ろ、自分なりに信頼残高を高めようとしてやっていたことが、結果的に相手を傷つけることになり、どんどん信頼残高を減らしている状況になっていたってことだってあり得る訳です。
■信頼残高を減らしてしまったある経験
私の経験ですが、私は「~していることはある」という表現を使っていることが多いみたいです。これはある方からフィードバックした時に教えてもらったことなのですが、これが相手の信頼残高を下げてしまっていたことがありました。
それは、ある相手と約束していたことがあり、それが遂行できていなかったことがありました。その理由はいくつかあるのですが、いずれにせよ、結果を見ればそれは完了していませんでした。ただ、私の中では時間を割いて取り組んでいたことでもありました。だから、相手とその話になった時、つい「このことについて、自分なりにやっていることはあった。ただ、それでも完遂できていなかったことは申し訳ない」という表現をしてしまいました。
しかし、それは相手からすると自己弁明に聴こえたそうです。自分の非を認めようとせず、自分の主張で相手を納得させようとしているように聞こえると言われてしまいました。私自身、そんな意図はなく、単に自分の非を詫びたつもりだったのですが、それなら「自分なりにやっていることもある」ということを相手に伝えたのはなぜか? そういう言葉を聞かされたら、相手は我慢や妥協を強いられてしまう。そういう言葉を話すことによって自分の非を軽くしようとしているように見えると言われてしまいました。
正直、ショックでした。それは、私はただ相手に謝ろうと思って使った言葉が相手をそこまで傷つけているとは思いもよらなかったからです。それと同時に、言葉を使うことの重みというのもちゃんと理解できていなかったような気もしたからです。
私は誠実に謝ろうとしました。それは相手の信頼残高を高める方法でもあります。しかし、結果的に相手の信頼残高は減ってしまいました。
今回は相手からこのような話をしてもらえたことで初めて理解できましたが、振り返ってみるとこのような振る舞いをしていたことはたくさんあったような気がします。そう思うと、私は知らず知らずのうちに相手の信頼残高を減らすようなことをしていたのかもしれません。
■信頼口座を高めるには
杓子定規的に言えば、信頼残高を高めるためには相手の通貨を知ることが必要です。つまり、相手の何が信頼を高める行為で、何が信頼を損なう行為かを知っておくことです。そして、それは一般的には誰しもがある程度は意識し実践されているとと思います。しかし、今回の私のように自分の普段の癖や振る舞いが知らず知らずの内に相手の信頼残高を減らすことをしてしまっている場合もあり得ます。
だからこそ、自分の普段の癖や振る舞いを客観的に見直すことはとても大切なことです。それによって自分の癖や振る舞いに気づけるかどうかはケースバイケースだと思いますが、何より「自分の癖や振る舞いが相手の信頼口座を減らしているかもしれない」という意識を常に持って、考え、行動することが相手の信頼口座を高めるために必要なことなのだと感じました。