第281回 7つの習慣のススメ6 -私的成功から公的成功へ
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
「7つの習慣のススメ」シリーズも6回目になりました。ここまで「私的成功」を得るために第1の習慣から第3の習慣のお話をしてきました。ここからは「公的成功」を得るための習慣のお話になりますが、今回は具体的な習慣のお話しをする前に、公的成功の重要なポイントである「信頼」ついて掘り下げてみたいと思います。
■私的成功から公的成功へ
これまでのおさらいになりますが、7つの習慣において人は3つの成長の段階があるとお話ししました。それは「依存」「自立」「相互依存」でしたね。「依存」とは誰かに頼った生き方、「自立」とは自ら主体性を持ち目的を明確にし、その目的を実現させることができる生き方、「相互依存」とは自立した人同士が相互に協力し合い、より成果の高い人間関係や対人関係を築いていく生き方でした。そして、「依存」から「自立」に至るプロセスを「私的成功」、「自立」から「相互依存」に至るプロセスを「公的成功」と呼びました。
そもそもなぜ「公的成功」が必要なのでしょうか? 「私的成功」だけでも十分ではないでしょうか? 確かに私的成功でも個人で生きていく上では十分な効果性を発揮することができます。しかし、私たちは人との関わりの中で生きています。自立している人同士が互いに協力することで、その能力は2倍にも3倍にも10倍にも100倍にも膨れ上がります。それは決して一人では成し得ないことなのです。つまり、人間の効果性を発揮するためには、自分の能力を上げるだけでなく、人との関わりに関する能力も上げることも求められるのです。だからこそ、7つの習慣では私的成功の上に公的成功が位置づけられています。
■信頼口座
人との関わりの能力を高めていくためには、当然のことながら関わりを持つ相手との信頼関係が重要になります。そこで、7つの習慣には「信頼口座」という考え方があります。信頼口座とは相手との信頼をお金のように見立て、銀行の預金口座のように例えた表現です。例えば、相手に信頼を増やす行為をした場合、相手の信頼口座の残高は増えていきます。しかし、相手の信頼を損なう行為をした場合、相手の信頼口座の残高は減っていきます。そのため、信頼口座は一人一人の相手に対して設定されています。Aさんの信頼口座の信頼残高は高い、Bさんは低いといった感じですね。
ですので、私たちは関わりを持つ相手への信頼口座の残高を高めていかなければなりません。いい方を変えるならば、相手に「信頼」を預け入れるように振る舞う必要があります。しかし、この預け入れには注意が必要です。例えば、相手の成長を考え、あるアドバイスをしたとしましょう。アドバイスをした側は相手のためを思ってアドバイスをしたのだから良いことをしてあげたと思い、相手の信頼口座の信頼残高は増えたと考えています。しかし、アドバイスを受けた側は指摘されたことが納得いきません。余計なことをいわれたと感じ、内心腹を立てていたとします。だとすると、アドバイスをした側への信頼口座の信頼残高は減っています。このように信頼は自分と相手とでは捉え方が違う場合があります。
その違いが起こる理由は、ひとえに自分と相手とのパラダイムが違うからです。例えば、ある二人に「お金」にまつわるキーワードを3つあげてもらったとします。3つとも同じキーワードになるケースはほぼゼロではないでしょうか。それは「お金」に対するパラダイムが人によって違うからです。このように物事の捉え方は人によって違います。信頼も同様で、真に相手に対して信頼の預け入れをするのであれば、自分の思う預け入れをすることではなく、相手が本当に望むことを行う必要があります。
そして、相手が本当に望むことが何かを知るために、第4の習慣「Win-Winを考える」があるのです。
ちなみに、信頼口座への預け入れはコツコツ行い、引き出す時は大きく引き出すことが効果的です。例えば、普段から相手への信頼をコツコツ積み重ねておき、いざというときに大きなお願い事をするのです。こうすると、普段なら聞き入れてもらえないような内容であったとしても、「この人の頼みなら仕方がないか」のように相手が動いてくることがあります。これは相手との信頼関係が築かれているからこそ成し得ることですよね。
今回は公的成功のベースとなる「信頼」についてのお話をさせてもらいました。次回は公的成功1つめのステップである4の習慣「Win-Winを考える」をご紹介します。