第549回 Zoom研修を考える・その6
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
約1カ月ぶりのZoom研修ネタです。今回はブレイクアウトルームから研修への没入感を考えてみたいと思います。
■ブレイクアウトルームとは
Zoomを使われたことのある方ならおおよそご存じだと思いますが、Zoomにはブレイクアウトルームという小部屋を作ることができます。この小部屋は基本的にメインルームと遮断されています。そのため、少人数でのディスカッションやワークを行う場合、ブレイクアウトルームを作りそこで作業をしてもらうと効果的に進めることができます。
このブレイクアウトルームは様々な動きをさせることができるのですが、移動に関しては自動、手動、どちらでも対応しており、以下のような動きをすることができます。
- 自動でブレイクアウトルームに移動し、決められた時間になったら自動でメインルームに戻る
- ブレイクアウトルーム間、もしくはメインルームからブレイクアウトルームの移動を参加者自身が行う
研修やミーティングなどでブレイクアウトルームを使う場合、よく使われるのは自動で移動する方法なのではないでしょうか。その理由は参加者に負担をかけないことがあげられます。自動でブレイクアウトルームに移動し、時間が来たら自動でメインルームに戻るようにしておけば、参加者は何もせずとも勝手に移動します。もし、参加者の中にZoomの利用経験がない方がいる場合、参加者を不安にさせないという点で、この方法は良く使われるのではないかと思います。
■オンライン研修における没入感
ただ、一方でブレイクアウトルームへの移動を自動化してしまうと、参加者側にこのような思考を生み出します。
「移動は勝手に行われるから待ってよう」
一見すると当たり前の考えなのですが、この「待ってよう」という考えが研修全体を受け身に捉えさせてしまうことに繋がってしまうのです。ただでさえオンライン研修はPCを前にしてモニターをずっとにらめっこしながら受ける受け身のような研修なのに、そこに来てブレイクアウトルームへの移動すら自動にしてしまうと、更に参加者の意識を受け身にさせてしまいます。
オンライン研修で参加者が自主的に活動してもらうためには、その仕掛けが必要です。実はその1つがブレイクアウトルームだと私は思っています。
敢えてブレイクアウトルームへの移動を自動ではなく手動で行うことで、参加者自らがブレイクアウトルームに移動したり、そこからメインルームに戻ったりする動きをしなければなりません。この作業は手間ではあるのですが、一方でこれから始まるワークやディスカッションに対し、能動的に参加させる意味合いを持たせることができるのです。
没入感の点で更に言うと、オンライン研修の場合、ブレイクアウトルーム毎にディスカッションやワークをした内容は、発表ではなく回覧の方が向いています。
「発表」というのはブレイクアウトルームで作業を行った内容をメインルームに戻って1ルームずつ発表する方法ですが、この方法だと発表者以外は全員聞き役に回ります。ここで受け身的な動きが発生するのです。しかもこれは体感的な話ですが、発表の内容を事細かに聴いている人は少数のように感じます。そのため、私自身は発表という手法はオンライン研修においてはそれほど適さないと考えています。
一方、「回覧」というのはブレイクアウトルーム内のディスカッションやワークの内容をホワイトボードや注釈ツールで作成し、それを回覧形式で見て回る方法です。この時、移動はルーム毎に行い、ルーム1→ルーム2、ルーム2→ルーム3のように1つ先のルームに自分たちで移動してもらうようにします。
そうして移動したブレイクアウトルームの内容をチーム全員が見て、そこで感想や意見をシェアし合うのです。こうすることで参加者全員が何かしらの意見を言い合える場を作ることができます。この動きを見ていると、どのルームも闊達な意見を交わしていることが多いので、先ほどの発表形式より参加者の能動的な動きを高めることができると考えています。
尚、この方法を実現させるためには、あらかじめ各ブレイクアウトルームに1台PCを置いておく必要があります。このPCで画面共有を行い、参加者が注釈ツールなどを使って書き込みをしてもらいます。そして、参加者がブレイクアウトルームを離れても書き込みをした内容は消えずに保存されるため、参加者が自由に他ルームの回覧ができるようになります。更に言うと、このPCを通じ各ブレイクアウトルームの会話や進行具合などを把握することができるので、講師側としても進行状況を確認できるというメリットもあります。
そして、この動きを強めるためには、最初にブレイクアウトルームに入ったメンバーは固定しておくことが有効です。研修によってはブレイクアウトルームに入るメンバーを毎回シャッフルする方法もありますが、これだと参加者の関係性が毎回リセットされてしまうため、会話を生み出しにくくなります。そのため、最初に入ったブレイクアウトルームのメンバーはその日1日固定にしておき、ワークや回覧でも同じメンバーで会話をしてもらうようにすると、参加者同士も次第に慣れてきて、やがて研修に対する没入感が上がってくるようになります。
■オンライン研修の効果性を考える
このコラムでも何度かお伝えしていますが、私はオンライン研修であっても集合形式の研修と同等以上の効果性を発揮させることを目標に、色んな取り組みを行っています。今回ご紹介した方法はかなり強力だと思っており、この方法に行き着いてからは研修の温度感が一気に変わりました。個人的にはある程度完成の域まで来ているように感じていますが、それでもまだまだやりたいことがたくさんあります。
Zoomは日々進化し、できること、やれることが増えてきています。そうしたテクノロジーの部分もうまく使いながら、これからもオンライン研修の効果性を高めていきたいと思っています。