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第449回 第8の習慣-効果性の先にあるモノ

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 こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。

 私は日々7つの習慣を実践しており、その内容は時々コラムにアップさせていただいております。この7つの習慣には続きがあります。それが『第8の習慣』なのですが、こちらも7つの習慣以上に奥が深い内容になっています。今回はそんな第8の習慣について簡単にご紹介させていただきます。

■7つの習慣のおさらい

 7つの習慣のメインテーマは『効果性』です。効果性とは「今ある結果を未来においても持続して発揮し続けること」と考えればわかりやすいでしょうか。例えば、頭痛になった時のことを考えます。一般的には頭痛薬を飲んだり、体を休めたりすることで頭痛を治そうとします。しかし、これはその場限りの対処法かもしれず、また頭痛が再発してしまうかもしれません。そのため、7つの習慣では、今起こっている頭痛を治すこと(=今ある結果)だけではなく、その頭痛が今後も起こらないようにすること(=未来においても持続して発揮し続けること)であることを考えます。この考え方が効果性であり、それを実現するために7つの習慣を実践します。

 それでは、なぜ7つの習慣を実践すると効果性が高まるのか? それは、7つの習慣が「原則」に基づいているからです。「原則」というのは例えば万有引力のように意識せずともそこに働き続けるモノと言いますが、例えば、「健康」という原則を考えてみます。健康であるためには、適度な食事、適度な運動、適度な睡眠、こういったことから実現されますよね。これは、江戸時代であっても現代であっても同じように働きますし、アメリカだろうだ日本だろうがどこでも働きます。こういった普遍性のあるモノを原則と呼びます。

 原則には良い原則、悪い原則などたくさんの原則がありますが、その中でも効果性の高い原則というモノがあり、7つの習慣ではそれらを使って構成されています。そのため、、効果性を高める方法(プラクティス)も一過性のモノではなく、いつでもどこでも等しく同じように効果性を高めることができるようになっています。これが、7つの習慣の原理だと私は思っています。

■第8の習慣「自分のボイス(内面の声)を発見し、それぞれ自分のボイスを発見できるよう人を奮起させる」

 それでは、本日の本題でもある第8の習慣です。良く勘違いされるのですが、7つの習慣には第1の習慣から第7の習慣まで7種類の習慣が示されていますが、第8の習慣はこれの続きではなく、7つの習慣とは一線を画す習慣です。第8の習慣は7つの習慣の概念を継承しつつも別の考え方だと捉えた方が良いかもしれません。(ただし、実践に際しては7つの習慣がベースにあるので、上位概念と捉えた方が分かりやすいかもしれません)

 第8の習慣は「自分のボイス(内面の声)を発見し、それぞれ自分のボイスを発見できるよう人を奮起させる習慣」です。

 7つの習慣は『効果性』がメインテーマでしたが、第8の習慣は『偉大さ』がメインテーマです。この偉大さというのがとても分かりづらいのですが、私は「その人にしか成し得られない意義のある貢献を行うこと」と捉えています。イメージとしては、リーダーが組織を改革しようとメンバー一人一人を育てていく中で、メンバー自身が自分の特性に気づき、周囲に貢献していくことで組織が発展していく感じでしょうか。そういったことを成し得る人を「偉大さ」という言葉で表現しており、第8の習慣はこの偉大さをどうやって実現させていくかという内容になっています。

 そして、偉大さを得るためには『内なる声(ボイス)』を得ることが必要です。これも先ほどの偉大さに輪をかけて分かりづらい概念なのですが、第8の習慣においてこのボイスは最も重要な概念で、コヴィー博士はボイスのことを「個としてのかけがえのない意義の現れ」と表現されています。

 この辺の考え方は少し概念的になってしまいますが、私はボイスを「使命感」に近いモノとして捉えています。そして、その使命感には「貢献」という要素が含まれています。自分が周囲に対して何かしらの貢献をすること、それによって自分が何かを成し得るのと同じように、周囲もその人自身のボイスに気づき成長していくこと、そういった使命感のことをボイスだと考えています。

 このボイスを理解する上で良く引用される例に、経済学者のムハマド・ユヌスさんの話があります。

 ユヌスさんは2006年にノーベル平和賞を受賞されている方なのでご存じの方もいらっしゃると思いますが、この方はバングラディッシュで貧しい方々に向けて無担保の少額融資(マイクロクレジット)を行い、その方の自立を支援する銀行を創設されています。当時、バングラディッシュでは貧困層の女性は竹製品を作って生計を立てていたそうですが、材料の仕入れのためのお金の工面がつけられないため、金貸しの言いなりになりやすい価格で竹製品を卸さざるを得ない状況にありました。

 そこで、ユヌスさんは無担保で融資をすることで貧困層の方々が竹製品で利益を得られやすいような支援を行いました。その結果、バングラディッシュでは多くの貧困層の方々が自立を実現させることができたのだそうです。この時のユヌスさんのボイスは「貧しい人々の声に耳を傾け、その人にできることを実行する」だったそうです。

■ボイスを得るための3つの天賦(てんぶ)

 このボイスを得るためには3つの天賦に気づくことが必要です。天賦とは誰にでも与えられている3つの才能で、これらを自覚、発揮していくことで自分の可能性を解き放つことができるようになるそうです。ここでは3つの天賦の才を簡単にご紹介します。

第一の天賦の才-選択する自由
人は自らの行動を選択することによって、主体的な生き方をすることができる

第二の天賦の才-原則(自然の法則)
人は応急処置的なその場しのぎの風潮に流されることなく、原則、つまり自然の法則に従って生きることができる

第三の天賦の才-四つのインテリジェンス
人間の本質は四つの側面(肉体、知性、情緒、精神)から成り立っており、この四つの側面それぞれにインテリジェンス(潜在能力)が備わっている

  • 知的インテリジェンス(IQ)
    知力だけではなく、物事を分析し、論理的あるいは抽象的に考え、言語を使い、想像力を働かせ、理解する能力
  • 肉体的インテリジェンス(PQ)
    肉体が持つ能力。医学的なメカニズム(傷を修復する能力など)も含まれる
  • 情緒的インテリジェンス(EQ)
    自己認識、自覚、社会性、共感、コミュニケーション能力のこと。時と場所をわきまえて行動する能力であり、自分の欠点を認め、自分の個性を表現し、他者のと違いを尊重する勇気を持つこと
  • 精神的インテリジェンス(SQ)
    他の3つのインテリジェンスを導く源であり、4つのインテリジェンスの要となる。存在意義や無限(普遍)なるものに対する人間の希求を表している

 言葉自体が難解ですが、咀嚼すると、私たちには生まれながらにして天賦があり、そこに気づき、それらを意図して使っていくことで、やがてボイスを得ることができるそうです。そして、そのボイスは自分の可能性を解き放つことに繋がっていきます。

■自分のボイスを発見し、他の人も自分のボイスが発見できるようになる

 天賦の才に気づくことができたらいよいよ自分のボイスを発見していきます。そのためには先の4つのインテリジェンスを大きく伸ばしていく必要があります。それは「ビジョン」「自制」「情熱」「良心」によって体現されます。

ビジョン(IQ)
知的インテリジェンスに紐づいており、人やプロジェクトの可能性、あるいは社会的正義や起業などでできることを知性の目で見ること

自制(PQ)
肉体的インテリジェンスに紐づいており、ビジョン実現するために犠牲を払うこと

情熱(EQ)
情緒的インテリジェンスに紐づいており、自己の内面で赤々と燃える炎であり、革新に基づく欲求や力のこと

良心(SQ)
精神的インテリジェンスに紐づいており、善悪を判断する道徳観、自分の存在意義、貢献へと後押しする力のこと。良心に従って生きることでビジョン、自制、情熱が生まれてくる

 これらを実践する中で自分自身の内なる声であるボイスを発見することができるようになりますが、第8の習慣は自分だけではなく周りの人にもボイスを発見できるように奮起していくことが求められます。それは「模範になる」「方向性を示す」「組織を整える」「エンパワーメントを進める」によって体現されます。

模範になる(精神)
リーダーシップの役割や精神であり、中核をなすもの。模範になるためには自分のボイスを発見しなければならない

方向性を示す(知性)
共通のビジョン、価値観、戦略を確立すること

組織を整える(肉体)
結果を出すために目標とシステムの整合性を取る

エンパワーメントを進める(情緒)
情熱や才能を解き放つ

 個人や周囲(組織)に対してボイスを発見するためのポイントを簡単にご紹介しましたが、これらは7つの習慣を土台として構成されていますので、7つの習慣を実践していることが前提条件となるように思います。

■第8の習慣の実践に際して

 私は7つの習慣と併行して第8の習慣も実践しており、その効果はとても強力だと感じる一方、正直な所、万人に勧められるモノではないという認識を持っています。それは「偉大さ」「ボイス」といった概念そのものが難しく、一見すると信仰の領域に見えてしまうからです。書籍を見ても第8の習慣だけでも7つの習慣以上のボリュームになっており、一読では理解できない部分がたくさんあります。私自身何度も読み返していますが、それでも正しい解釈をしているかと言われると疑問が残るところもあります。そのため、誤解を招いてしまい可能性もあるため、あまり文章として表現してきませんでした。

 しかし、私自身ボイスを持っているつもりで、そのボイスを発揮していくためには第8の習慣を私なりの言葉でお伝えしていくことが必要なのではないかと、最近になって思うようになってきました。

 そのため、今後は機会があれば第8の習慣にも触れて、私の言葉でご紹介いきたいと思っています。

Comment(2)

コメント

ちゃとらん

いつも楽しく拝読させていただいています。


『第8の習慣』難しいですね。おっしゃる通り宗教的というか、解釈次第で色々な見方が出来そうです。翻訳者の単語の選択でも読み手の印象が変わってきそうです。


で、折角の良いお話の腰を折るようで申し訳ないのですが、

> 第三の天賦の才-四つのインテリジェンス

> 人間の本質は四つの側面(肉体、知性、精神、情緒、精神)から成り立っており、

え、5つあるやん! って、ギャグかと思ってしまいました。

キャリアコンサルタント高橋

ちゃとらんさん、


こんにちはー。
いつもコメントありがとうございます。


第8の習慣は実践してみると宗教的なモノではないことは分かるのですが、それを言葉で伝えるのは難しいですね。。。
ただ、昨今ではマインドフルネスの瞑想(メディテーション)のように宗教観に近い技法や考え方が多くの企業や人々に受け入れられているように、自分に役立つことやためになることは何でも受け入れられるような世の中になってきているような気もします。
そのためには、まずは実践してみて自分なりに感じ取ることが7つの習慣でも第8の習慣でも必要なのではないかと思っています。


> で、折角の良いお話の腰を折るようで申し訳ないのですが、
> > 第三の天賦の才-四つのインテリジェンス
> > 人間の本質は四つの側面(肉体、知性、精神、情緒、精神)から成り立っており、
> え、5つあるやん! って、ギャグかと思ってしまいました。


ご指摘ありがとうございます(汗
早速修正させていただきました。。。

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