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第410回 Web研修の可能性を考える

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 こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。

 私は研修やセミナーなどの講師、トレーナーの仕事をしていますが、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響でこれらの仕事は減ってきています。ただ、だからといって暇になっているかと言えばむしろ逆で、お陰様で忙しくさせてもらっています。

 というのも、元々こういった研修やセミナーは必要だから行われている訳で、それが新型コロナウイルスの影響でできなくなったからとは言え、やらなくても良いという話ではないからです。延期という形で対応できるならばまだしも、どうしてもそのタイミングやらなければならないこともあります。そうした場合、集合研修以外の方法で実現させなければなりません。現状、考え得る有効な手段としてインターネットを使ったWeb研修が考えられています。今回はこのWeb研修について思うことを書きます。

■どのような研修をWeb化するのか?

 実はインターネットを使ったWeb研修の研究は今から半年以上も前から進めていました。元々のきっかけは東京オリンピックでした。執筆時点では東京オリンピックが予定通り開催されることになっていますが、東京オリンピックが開催されると、東京近郊に人が集中し、交通規制が敷かれ、宿泊施設などが取得しづらい状況になることが想定されました。そうなると東京近郊での集合研修の実施が困難になると想定していました。

 そうした場合、代替手段として東京以外の場所で行うことも考えられましたが、時期的に海外から来られる方がたくさんおられる中で、東京だけが研修困難な状況になるかどうかは不透明な状況だと考えました。こういったことから、2020年7月にWeb研修のニーズが高まってくるだろうと考え、昨年の7月頃からWeb研修の研究をスタートしていました。

 Web研修を研究する上で、方向性を2軸から考えました。

 1つめの軸はどのような研修を提供するのか? 一般的に研修の形態は、教室での授業のように一人の講師が多数の参加者に対して同じ情報を同じタイミングで提供するような単方向コミュニケーションによる研修、もう1つは参加者同士が互いにディカッションやワークなどを行い、お互いに学びを深めていくような双方向コミュニケーションによる研修、この2つに分けられます。前者の研修を講演、パネルディスカッション、ティーチングなどと呼び、後者の研修をワークショップ、ワークセッションなどと呼びます。

 今回私が検証したいのは参加者同士の双方向コミュニケーションによる研修、つまりワークショップ、ワークセッションをWebで実現することなので、こちらをベースに検討を進めていきました。ちなみに、単方向コミュニケーションによるWeb研修はYouTubeやスタディサプリ(https://studysapuri.jp/)などの授業動画を配信する形で実現されているのではないかと思います。

■ZoomによるWeb研修

 次の2つめの軸はどのインフラを使うか? ワークショップ、ワークセッションを実現させる上でどのようなインフラを使うのが良いのか、色々なシステム、アプリ、ツールなどを試してみました。

 その中で、個人的にUMU(https://umujapan.co.jp/)はかなり好感触でした。凡そ、ワークショップ、ワークセッションをWebで行うのであればかなり精度が高い研修を提供できる印象を持ちました。ただ、唯一ネックとなったのがコストでした。ちょっと私が考えているコストと釣り合わなかったため、今回は見送らせていただきました。

 で、結局何を選んだのか? ですが、Zoomhttps://zoom.us/)を選びました。Zoom自体はキャリコンでも良く使っていますし、利用されている方も多いと思います。こういった点もプラスに働き、上手く使えばZoomを使ってワークショップ、ワークセッション形式の研修ができるのではないかと考えていました。ワークショップ、ワークセッション形式の研修で必要な動きは、

  • スライドの表示
  • 少人数でのディスカッション
  • 特定の人の発表

 こういったことがあげられるのですが、これらをZoomで実現できればZoomを使った研修が実現できると考え、これらの検証を進めていきました。

 結果的にこれらの動きはすべてZoomで実現することができました。また、Zoomを使った研修にかかるコストは研修を実施する側(ホスト)がProアカウント(月額2,000円)だけあれば良く、それ以外のコストが一切かからない点も好印象でした。

■Web研修の難しさ

 ただ、Web研修には集合研修にはない難しさがあることも分かってきました。幾つかご紹介します。

講師、トレーナーの必要人数

 集合研修は講師やトレーナーは一人で対応できましたが、Web研修の場合、最低二人は必要という結論になりました。Web研修の場合、Zoom全体の制御を行うコントローラー(管理者)とスライドなどを使って研修を進行させるスピーカー(発表者)が必要になります。この二人が連携を取りながら研修を進めていく必要がある事が分かってきました。

コミュニケーションの取り方

 また、コミュニケーションの取り方にも工夫が必要であることも分かりました。Web研修の場合、個人の情報はカメラで表示された画像情報しかないので、トレーナー側からすると反応が捉えづらいのです。そのため、大きめのオーバーリアクションすることを最初のルールとして決めておいたり、Zoomの機能として提供されている反応(アイコンのようなモノ)で表現するなどの方法を使わなければなりません。更に言えば、少人数でのワークやミーティングを行う場合でも、いつミーティングを開始したらよいのか? 誰から話を始めたらよいのか? といったことを決めておかないと、中々会話がスタートしないといったことも分かりました。

 その逆に、参加者同士のチャットなどを許可してしまうと、研修の裏側でずっとチャットをしていたりするなどの行動を取られてしまう可能性があり、研修に集中しなくなる可能性があるので、参加者同士のチャットを禁止するなどの対応が必要になることも分かりました。

個人情報に対する配慮

 他には、Zoomはカメラ機能を使って特定の人物を自分の画面に表示し続けるといったことができるので、あらかじめこういったことを制御し、特定の人だけを表示させることができないようにしておくなどの配慮が必要になることも分かってきました。

 まだまだ配慮しなければならない点はあるのですが、こういったことは集合研修にはなかった配慮で、Web研修だからこその内容だと思っています。

■Web研修の可能性を考える

 これまでZoomによるWeb研修の研究、検証を続けてきましたが、ほぼ実現できることが分かりました。また、Zoom研修をある程度体系化させることができたと考えています。後はコンテンツを作り込み、実際に提供していくことだと思っています。

 ZoomによるWeb研修というのはとても大きな可能性を秘めていると考えています。集合研修というのは直接対面で研修を受けられるというメリットがありましたが、ロケーション(場所)が限定されるというデメリットを持っていました。それは遠方であるが故に研修に参加したい方が参加できていなかったという機会損失を生んでいたと考えることができます。しかし、このZoomによるWeb研修を実現させることで、その機会損失をなくすことができ、今までよりも大きな市場で勝負をすることができるというメリットを生むことができるのではないかと考えています。

 また、現在の情勢を考えると、Web研修のニーズは確実に高まっていくと考えています。そうした時にWeb研修の知見を持ち、そのコンテンツを有し、実績を重ねていくことは、この時代を生き抜くイニシアチブになるのではないかと考えています。

 今のようなたくさんの制約を受ける時期をネガティブに捉えられる方もおられます。しかし、モノの見方一つで私たちのできる事、やれる事は幾らでも出てきます。そして、そのできる事、やれる事は今のこの時期だからこそ価値があるのだと考えています。

 私はこのタイミングをチャンス捉えています。そういったモノの見方もキャリアづくりには有効なのではないかと考えています。

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