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第409回 実演することの大切さ

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 こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。

 国家資格キャリアコンサルタントの面接試験対策をさせていただくことが結構あるのですが、その時、私は必ず実演をします。これが結構好評だったりするのですが、その理由を聞いてなるほどなぁと思っています。そこで、今回は実演することの必要性について、私なりの考えを書いてみました。

■理論家と実践家

 最近は国家資格キャリアコンサルタントを受ける方が増えてきているせいか、いろんな方のトレーニングをさせていただく機会が増えてきました。私が行うのは主に面接試験対策ですが、このトレーニングに参加されるのは、ほぼ100%どこかの団体でトレーニングを積まれた方が来られます。恐らく、ご自身がこれまで学ばれてきた内容とは違う視点で面接のトレーニングをしたいということなのだと思いますが、私のトレーニングを受けるにあたって、一番驚かれることは、私が実演することなのだそうです。

 私からすれば至極当たり前のことで、面接試験のレクチャーを口で話すだけでは分かりづらいと思い、その場で実際の面接試験をぶっつけ本番でやるようにしています。そこで、私が説明した面接対策の内容を実演することで理解を深めてもらい、その後のトレーニングで実践してもらうようにしています。こういったやり方がとても新鮮なのだそうです。

 というのも、キャリコン団体で行う面接のトレーニングでは指導者が実演されないことは結構あるのだそうです。参加者が見本を見せて欲しいと言っても、見本は見せるモノではないという解釈の元でトレーニングをされているそうです。そのため、トレーニング後のフィードバックについても具体的に良くわからなかったり、今イチしっくりこなかったりすることがあるのだそうです。

 よくよく考えてみれば当たり前のことで、試験対策という名の下にトレーニングを行うのですから、トレーニングの目的は試験に合格するための技量を身に着けることです。そのためには具体的にどのように対応すればよいかを理解、習得しなければならないと思うのですが、それを言葉だけで説明して後は自分で体得しろ、では、参加者も困惑してしまうように思うのです。

 恐らく、そういった指導をされる方というのは理論家なのではないかと思います。理論家が悪い訳でも何でもないですが、面接対策をするのであれば、理論や方法論だけを言葉で説明されてもわからない場合があります。そこに対して、理論武装して実演しないことの正当性を訴えてばかりいると参加者はいつまで経っても迷いが取れないままでスキルが身に着かず、結局何のためにトレーニングをしているのか分からなくなります。

 私は理論家ではなく実践家だと思っているので、どんな場合であっても必ず実演します。それが成功しようと失敗しようと関係なく行います。そうしなければ、私の伝えたいことは伝わらないし、私の持っている技術やスキルを理解して貰うことができないと思うからです。

 実際、カウンセリング系の大家と呼ばれる方の多くは実践家です。誰でも知っているような理論を打ち立てられている方はほぼ間違いなく実践家です。だからこそ、私も実践家の道を進んでいきたいと思っています。

■実践しないのはなぜか?

 それでは、なぜ実践しないのでしょうか? 実は、過去にある理論家の方とこのことで話をしたことがあり、とても興味深いことを教えてくださいました。

 その方が言うには、実践することは答えを教えることになるが、トレーニングにおいて必要なことは答えを教えることではなく、考えることがキャリコンにおいて必要なのだと。だから、指導者は答えを教えるのではなく、自らの気づきを深めていくことが大切なのだそうです。

 確かに言わんとすることは分かるのですが、そもそも論としてその方は実演することができるのか? もし、実演できるのであればその考えは理解できます。その点を真っすぐぶつけ、一度、実演して見せて欲しいとお願いしました。そうした所、実演を拒否されてしまいました。理由は実演する必要性を感じないからだそうです。

 そこで、今度は私から実演させてほしいとお願いしました。それには乗ってくれましたので、私が普段からやっている面接のロールプレイを実演をさせていただきました。

 面接のロールプレイが終わった後、感想を伺ってみたところ、実演することの必要性は感じたとおっしゃっていただけました。そこで、再度実演できるのかどうかを伺ってみました。そうした所、人に見せるだけの技量はないかもしれないとおっしゃられました。もし、うまく行かなかったら自分の伝えようとすることが嘘になってしまうかもしれない、そういったリスクを冒すことができないとおっしゃられました。

■実演することの大切さ

 その言葉はとても勇気のいる言葉だと感じました。ご自身の内面を吐露していただいた瞬間でもありました。

 そこで、私からトレーニングの提案をさせてもらいました。マンツーマンでトレーニングさせていただき、人前で実演できるレベルまで技量を高めてみてはどうかと。そうすれば、今後はご自身が実践する側に回ることができ、何より参加者のためになる質の高いトレーニングを提供することができるのではないかと。私からの提案に、その方は快く受けていただきました。そこから約4カ月間、定期的にトレーニングをさせてもらうことで、その方は人前で実演できるレベルまでになられました。元々理論や考え方は確立されておられましたので、習得が早かったように思います。

 その後、その方はトレーニングで実演されるようになったそうです。最初はうまく行かなかったこともあったそうですが、それを含めて自分をさらけ出すことで成功しても失敗しても気づきに繋げられるとおっしゃられていました。

 何事においてもそうですが、できるできないの視点で見ると、うまく行かないことがあります。しかし、それをやるやらないの視点に変えてみることで、新しい世界が見えてくるように思います。だから、私はどんな時でも、やるやらないの視点に立ち、実現する側に回りたいと思っています。

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