第388回 行動の三段階
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
研修やセミナーは、良くその効果性が論じられます。これについてはいろいろな考え方がありますが、私は研修やセミナーだけですべてを完結させることはできないと考えています。それならば、研修やセミナーの果たす役割とは何か? そこから先はどのように考えていけばよいのか? 今回は私なりの考えをご紹介したいと思います。
■学びの範囲
研修やセミナーで受講者に働きかけられる範囲はどの程度あるのでしょうか? こちらは諸説ありますが、概ね全体の10%程度なのだそうです。その上にあるのがOJTなどによる上司の関わりで、これによって全体の30%程度まで働きかけることができるのだそうです。それでは、残りの70%は何か? 実はこれが良くわからないのだそうです。こういったことを暗黙知というのだそうですが、ここでは様々な体験や経験、気づきなどによって残りの70%を補っていくのだそうです。
だとすれば、研修やセミナー以外の上司への関わりや暗黙知といったことに対して、講師やトレーナーが関われることが何かを考えることも重要になってきます。例えば、研修やセミナーの後に受講者の上司の方に対して研修やセミナー後の振る舞いについて依頼することで上司の関わりを促すことも考えられますし、講師やトレーナーの経験や体験を受講者に伝えることで、受講者の暗黙知に対してアプローチをしてみることも有効かもしれません。
このように、講師やトレーナーは参加者の学びを深めるためには、先週やセミナーによって得られる働きかけが10%程度あることを理解し、残りの90%をどのようにして補うかを考える必要があるのではないかと思います。
■行動の三段階
その上で有効な考え方となるのが行動の三段階です。行動の三段階とは、人が何かしらの行動を起こす上で必要になる要素を表しています。
行動の第一段階(知識):知っている状態
行動の第二段階(スキル):できる状態
行動の第三段階(意識):行っている状態
行動の第一段階は知識を習得する段階です。何かの行動を行うに際には、まずその行動に関する知識的な部分を習得しておかなければなりません。そのため、行動を起こす上でまずは「知っている状態」を作り上げることが必要になります。
行動の第二段階はスキルを習得する段階です。例えば、担当する仕事について行動の第一段階で知識を習得することができました。しかし、まったく経験がなかったので、何度も練習をしスキルを習得しました。そうすることで、その行動を行うことができるようになります。これが行動を起こす第二段階である「できる状態」です。一般的に研修やセミナーで講師やトレーナーが参加者に対してアプローチできるのはこの範囲までになります。
行動の第三段階は意識をもって行動する段階です。第二段階まででその行動を習得することはできました。しかし、実際にそれを仕事やプライベートで生かしていくかどうかは本人次第です。そのためには本人が意識してその行動を起こさなければなりません。これは研修やセミナーである程度強烈な印象付けによって意識を植え付けることができるかもしれませんが、実際には普段の生活の中でアプローチをしていくことになります。そのため、この行動の第三段階は先の学びの範囲で言えば上司への関わりや暗黙知の範疇になってきます。
講師やトレーナーはこういったことを理解し、いかにして受講者に行動の第三段階まで導けるかが一つの大きなポイントになります。
■普段の生活の中でも行動の三段階を
今回ご紹介した学びの範囲や行動の三段階は私たちの普段の生活の中にも生きています。例えば、部下に対して何かしらの育成をする場合もそうですが、自分自身で何かを成し遂げたいと考えた時もそうです。こういった時に学びの範囲や行動の三段階を知っておくことで、目的に到達できる可能性を引き上げることができるようになります。
特に行動の第三段階の「行っている状態」を作り上げることは、キャリコンやコーチングにおいても多く使われています。あなたの部下に行動を起こさせる場合は勿論、あなた自身が行動を起こす場合にも行動の三段階を意識することはとても有効です。良かったら使ってみてくださいね。