第371回 問題の裏側にあるモノ
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
国家資格キャリアコンサルタントの試験が近づいています。そのため、最近は面接試験のロールプレイを指導をさせていただくことが増えてきました。
国家資格キャリアコンサルタントの面接ロールプレイでは相手(クライエント)との間で関係性を築き、問題を把握、共有し、目標を決め、方策を考える所までを15分で行います。実際にはこれらを15分で終わらせるのは少し難しいので、途中で終わってしまうことが多いのですが、それは、面接ロールプレイ後に試験官からの質問(口頭試問)に答えることでロールプレイでやってきたこと、やろうとしたことなどを伝えることで補います。
この面接ロールプレイを指導させてもらっている中で感じていることですが、この面接ロールプレイは普段の私たちの会話にも繋がることがあると感じました。そこで今回は面接ロールプレイで感じたことを書こうと思います。
■面接ロールプレイで求められること
国家資格キャリアコンサルタントの面接試験は以下のような内容が問われます。
「キャリアコンサルタントとして相談者を尊重する態度や姿勢(身だしなみを含む)で、相談者との関係を築き、問題を捉え、面談を通じて相談者が自分に気づき、成長するような応答、プロセスを心がけてください」
この内容を踏まえ、15分間の面接ロールプレイを行い、その後、試験官による口頭試問を受けます。
国家資格キャリアコンサルタントの場合、この中での「相談者を尊重する態度や姿勢」「相談者との関係性を築き」といった所に重点が置かれます。これはキャリコンとしての基本的な態度や姿勢を踏まえた上で、傾聴技法を使って相談者との間に信頼関係を築いていくことを表しています。多くの受検者さんはこの点についてはかなり練習されており、比較的高いレベルに到達されている方も大勢おられます。
しかし、そこから先の「問題を捉え...」といった所になると、途端に何をしたらよいか分からないという方が増えてきます。そのため、私は極力実際の面接ロールプレイの例をデモンストレーションするようにしています。この面接ロールプレイでは相談者と関係性を築き、問題を把握、共有し、目標を決め、方策を考える所までを15分で行っています。
これを始めてご覧になられた方の多くは、初めて面接ロールプレイで求められていることの意味を理解されるのですが、同時にその難しさも感じるみたいです。その難しさの一つに「キャリコンの流れをつくる」ことがあるようです。これは傾聴によって相談者と関係性を築いた後、どうやってキャリコンを進めたら良いのかが難しく感じるのだそうです。
例えば、よくあるキャリコンの失敗例をご紹介します。
相談者は転職をしたいと考えており、キャリコンに相談に来た設定で面接ロールプレイがスタートしたとします。キャリコンは傾聴を通じ、相談者との間に信頼関係を築きながら問題を掘り下げていきます。そうして、相談者から話を聴いていく中で、相談者が抱える本当の問題が職場での人間関係にあったと気づきました。そして、それを相談者と共有することができました。ここからは目標を決める段階に入っています。そこで、キャリコンは問題が解決することが目標だとを考え「職場の人間関係を解決する」と捉えたとします。
一見すると、このキャリコンはうまく行っているように見えるのですが、実はこれは失敗の例だと私は考えています。
■問題の裏側にあるモノ
では、どこに問題があったか? それは問題の裏側、つまり問題が解決した姿を目標と定めた所にあります。よくやりがちなことですが、問題の裏側は目標ではありません。問題の裏側は方策です。具体的にはこの話は以下のような構造になっています。
問題:職場の人間関係に問題がある
↓
目標:今の職場で仕事をし続ける
↓
方策:職場の人間関係を改善する(問題の裏側)
問題の裏側というのは、問題が解決した姿を実現させるための方法のことです。先ほどの例でいえば、職場の人間関係に問題があるならば、それが解決した姿は職場で仕事をし続けるということになります。それこそが本来の目標です。
この話の構造は何もキャリコンに限った話ではありません。私たちが普段から良くやってしまいがちになることですが、問題を発見したら直ぐその問題の裏側を目標にしてしまいがちになります。しかし、それは頭の中で暗黙的に目標が定めてしまっている状態です。その暗黙的な目標を言葉で明確に表さないと、正しく問題解決が進まないことがあります。こういった会話の構造を理解しておくことはキャリコンに限らず、ITエンジニアにもよく当てはまることだではないかと思います。
■4冊目の本が発売されました!
さて、私の4冊目の本「部下とチームが動き出す!聴く技術」が発売されました! 既に本屋さんには並んでいるみたいで、ふらっと立ち寄った本屋さんには面揃えで陳列していただいておりました。大変感謝しております!
今回、お話した会話の構造などもたっぷり書かせていただいており、会話を技術と捉え、様々な事例をご紹介しています。もし、会話力を上げてみたいと思われる方は是非ご一読ください!