第359回 好子消失の弱化
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
研修やセミナーなどは一般的に対面で行いますが、その時間、その場所にいなければならないという問題があるため、参加者に限りがあります。しかし、eラーニングのような形態はこれらを解決しています。ただ、eラーニングは基本的に「視聴する」という一方通行の学びであるため、効果が限定的であるといわれていました。
しかし、昨今はeラーニングの研究も進み、様々な形のeラーニングが生まれています。こういった時代の流れは私たちのような研修やセミナーをする側の人間にとっても重要なことだと思っており、今後は積極的にeラーニングを活用していく時代が来ると考えています。
そのため、最近はeラーニングの勉強をしています。学んでみるとeラーニングの世界はとても奥が深いことがわかります。中には普段の研修やセミナーに取り入れてみたい内容までありました。そんな中、「好子消失の弱化」という言葉を学んだのですがとても考えさせられました。そこで今回は「好子消失の弱化」について思うことを書きます。
■好子消失の弱化
「好子消失の弱化」は「こうししょうしつのじゃっか」と読み、行動分析学からみた人間の行動法則の一つなのだそうです。
簡単にいえば、人は自分の好む結果が失われる行動を体験すると、次からはその行動を起こそうする気持ちが弱くなるというモノだそうです。言葉にすると少しわかりづらいのですが、例を見れば簡単です。例えば、
お昼を食べようと同僚を誘ったら断られた
↓
そういったことが何度か続いたので、同僚を誘うことを止めた
取引先の人の携帯電話に連絡したが、電話に出なかった
↓
そういったことが何度か続いたので、携帯電話に電話することを止めて会社に電話するようになった
のような感じでしょうか。行動を起こそうとするとき、私たちはその結果を想定しています。先の例でいえば「同僚と食事に行く」「取引先の人が携帯電話に出てくれる」といったことでこれを「好子」と呼びます。それが結果としてそれが実現できないことが続く(=好子が消失する)と、その行動を起こそうとする気持ちが弱くなる(弱化)ということです。こういったことは私たちの普段の生活でもよくあることですね。
■好子出現の強化
その逆を「好子出現の強化」といいます。こちらは人は自分の好む結果が得られた行動が体験できると、次からもその行動を起こそうする気持ちが強くなるということです。
お昼を食べようと同僚を誘ったら快く来てくれた
↓
そういったことが何度か続いたので、いつも同僚と食事を取るようになった
取引先の人の携帯電話に連絡したところ、電話に出てくれた
↓
そういったことが何度か続いたので、取引先の人に連絡する場合、常に携帯電話に連絡するようになった
「好子消失の弱化」と「好子出現の強化」はどちらも私たちの行動を決定づける要素になってきます。人間は望む結果が得られなければ次からはその行動を取ろうとは思わなくなりますし、逆に望む結果が得られれば次もその行動を取ろうとします。ある種当たり前の事ですが、「好子消失の弱化」と「好子出現の強化」は人間の行動は環境に基づくというとても重要な事実を表しているように感じます。
■私たちの行動の行動を決めるのは誰か?
ただ、すべての行動が「好子消失の弱化」と「好子出現の強化」といえるかといえば、そうでないこともあるような気がします。例えば、私は1級キャリアコンサルティング技能士の試験にチャレンジしていますが、落ちても落ちてもずっと受検し続けています(汗) これは「好子消失」といえますが、「弱化」ではないと思います。
これってどういうことなのか、私なりに考えたのですが、「好子消失」「好子出現」の捉え方の違いのように思います。「同僚にお昼を誘ったら断れる」「取引先の人に電話をしても出ない」「試験に落ちる」というのはあくまで事象でしかありません。その事象を私たちがどうとらえるかで「好子消失」にも「好子出現」にもなるような気がするのです。私は試験に落ちることで残念に思う気持ちはありますが、それ以上にもっと勉強したいと思う気持ちが出てきます。それって「好子消失」ではないのでしょうね。
私たちの生活において、一般的には「好子消失の弱化」と「好子出現の強化」が働ていると思います。それは環境が私たちの行動を決定づけているといえるのではないでしょうか。
しかし、その一方で「好子消失」「好子出現」を私たちがどう捉えるかによって、私たちは行動を変えることができると思います。これは私たちの意思が私たちの行動を決定づけているともいえます。
つまり、今の私たちの姿は環境によってつくり上げられた結果なのかもしれません。しかし、私たち自身が想いをもつことで私たちはいつでも行動を変えることができる、そんな風に思いました。
ですので、これからも想いをもって行動をしていこうと思います。