第356回 理解と納得
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
人と会話をする場合、自分の考えだけを相手に伝えようとしたり、相手の相談に対して真っ先に問題解決に走ろうとすることがあります。その一方で、傾聴のように問題解決には走らず、相手の言葉に共感し、相手にたくさんの言葉を引き出すような会話もあります。これらはコミュニケーションの違いですが、そこには理解と納得という言葉が隠れているように感じています。そこで今回は理解と納得という視点からコミュニケーションについて考えてみます。
■「伝える」と「傾聴」
通常の会話で私たちが誰かと話をしようとするとき、必ずやっていることがあります。それは、自分のいいたいことを相手に「伝える」ことです。ビジネスでよくいわれるホウレンソウ(報告、連絡、相談)などはその典型的な例ですね。また、ビジネス会話において使われるPERP法やホールパート法なども相手に理解しやすく伝えるための手法だったりします。
このように、相手に自分の考えを正しく「伝える」ことは、ビジネスだけではなく普段の日常生活においても重要なスキルであることは間違いありません。
しかし、その一方で「傾聴」を使った会話もあります。傾聴についてはこのコラムでも再々出てきていますので詳しい説明は割愛させてもらいますが、簡単にいえば、傾聴は相手の話をじっくりと聴くための技法でありスキルです。
昨今、傾聴はいろんなところで聞かれるようになりました。ビジネスにおいて傾聴はリーダーや管理職における必須スキルとまでいわれるようになりましたし、子どもとの会話で傾聴を使う親御さんも増えてきているそうです。
なぜ、「伝える」ことではなく「傾聴」ことが重要視されるのでしょうか?
■理解することと納得すること
それは、人が真にパフォーマンスを発揮するためには納得することが必要だからではないでしょうか。
「伝える」とは自分の考えを相手に理解してもらうことですが、傾聴は相手に共感し相手の話をたくさん引き出すことで相手に納得してもらうことです。
この「理解してもらう」と「納得してもらう」は意味が違います。理解は相手の伝えた内容を頭で把握することであり、納得は相手の伝えた内容を心の底から合意することです。
つまり、内容を頭で理解するためだけなら「伝える」ことだけを特化すれば事足ります。しかし、相手に行動を促すためには、心の底から納得してもらう「傾聴」が必要なのだと思います。この結果の違いがビジネスで求められている点なのではないかと思います。
■傾聴の難しさ
しかし、この傾聴はやってみるとかなり難しく感じます。私はこれまで多くの方の傾聴をトレーニングさせていただきましたが、その経験から傾聴を難しく感じる理由が分かってきました。
そもそも私たちは普段から自分の伝えたい内容を相手に伝えるような話し方をしています。また、相手から相談を受ければその問題を解決しようと考えます。こういった話し方は別段意識せずとも行っています。それは、このような話し方が私たちの潜在的な部分に刷り込まれているからではないかと思います。
それに反して、傾聴は自分の話を伝えるのではなく、相手の話を深掘りし、そこに共感し、相手にたくさんの言葉を引き出させるような会話をします。また、傾聴を行っている間は、基本的に問題解決には走りません。問題解決に意識を向けるのではなく、問題の根っことなる部分をひたすら掘り下げます。
傾聴を習得するためには、自分のことを伝える、問題解決に走る、という思考から、相手に共感し、相手の話を深掘りし、相手にたくさんの言葉を引き出すような思考に変える必要があります。しかし、私たちは普段こんな話し方をしないので、いざ意識してやってみるとなかなかできないのです。これが傾聴を難しくしている原因だと思うようになりました。また、これは話し上手な人ほどその傾向があるように思います。
それでも、この話し方を繰り返し行っていると、自然と意識せずともできるようになってきます。それが普段の生活の中まで浸透することができれば、相手に理解させるだけのコミュニケーションから相手が心から納得できるコミュニケーションに変わっていきます。そして、それはあなたのコミュニケーション力を大きく向上させるきっかけになるのではないかと思います。
コメント
通りすがりの人
なんにでも使えるテクニックではないでしょうし、
うまく使い分けるっていうのが大事なんですかね。
私なら傾聴される側になったら、いいから結論言ってよってなりそうです。
結局リーダーの言うとおりになるのだから、納得よりも目的や背景をしっかりと
説明してほしい、とか。
時代なのかな~。