第292回 即断即決する力
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
仕事でもプライベートでもそうですが、私は比較的即断即決するタイプです。このように書くと思慮が足りないとか思われてしまうかもしれません。実際、即断即決した後に「あぁ、逆にすればよかったかな...? 」と思うことがない訳ではありませんが、即断即決したことを後悔することはほとんどないと思います。また、私の周りだけかもしれませんが、即断即決すると喜ばれることが多いような気がします(特に経営層の方に対してはその傾向が強いような気がします)。そこで、今回は即断即決するために必要なことを私なりの視点で書きたいと思います。
■「あの仕事...やる? 」
例えば、上司でも取引先の方からでも良いのですが、あなたに対して「あの仕事、やってみる? 」と聞かれたらどうされますか? その判断を私の一存で決めることができる場合、私は一瞬(数秒)ほど考えて「やります! 」とか「やめときます! 」とかをその場で答えます。その答えを持ち帰って熟慮し、後から答えるといったことはやったことがないと思います。これはITエンジニアの時分からそうでした。
私はシステム開発をやりたくてITエンジニアになりましたが、最初はシステム開発ができませんでした。しかし、年数が経ちシステム開発ができるチャンスが巡ってきたとき、即断即決でその仕事をやることを決めました。また、上流工程の仕事ができるチャンスがあったときもそうです。プロマネの仕事ができるチャンスがあったときも同様です。今では普通にお仕事をさせてもらっている書籍の執筆活動のときも即断即決しました。
■即断即決のメリット、デメリット
実際、私は即断即決をすることで新しい仕事にチャレンジする機会が増えました。これは即断即決のメリットといえるのではないでしょうか。しかし、その反面、未経験の仕事を完遂させなければならないというリスクも背負うことになりました。これは即断即決のデメリットといえるかもしれません。即断即決を避ける人は仕事ができるできないを熟慮される方なので、仕事が完遂できないというリスクは避けられるのかもしれません。それはビジネスにおいては何ら間違っていない、まっとうな判断だと思います。しかし、その判断によって新しい仕事に挑戦するチャンスを減らしている可能性もあると思います。
ただ、これはどちらが正解というのはないと思います。リスクを背負ってでも新しいことにチャレンジしたいと考える人は即断即決をするでしょうし、リスクを背負いたくない人は即断即決を避け、熟慮することを選ぶでしょう。
■即断即決するには?
それでは、私がどうやって即断即決をしているか? 私は2つのことを意識しています。
1つめは自分なりの価値基準をもつことです。私は物事を決めるとき、自分の価値基準に照らし合わせて仕事を選ぶようにしています。私の場合、その価値基準は「ミッション・ステートメント」にあたります。ミッション・ステートメントは過去のコラムでも書かせていただきましたが、7つの習慣の第2の習慣で出てくる自分の価値基準のことです。そのときのコラムを引用します。
この私たちの目指したい姿、なりたい自分、到達したい場所といった「終わり」のことを7つの習慣ではミッション・ステートメントと呼んでいます。ミッション・ステートメントは、その人のやりたいことを表したモノではなく、どのような人でありたいのかを表したモノです。第1の習慣で人間には「自覚」「想像」「良心」「意志」という4つの能力があるというお話をしました。それら4つの能力を使い、どのように私たち自身が生きていきたいのか、私たち自身の拠り所となる考え方、方向性、ビジョンこそがミッション・ステートメントです。このミッション・ステートメントがあることで、私たちは選択に迷うことがあったとき、ミッション・ステートメントによってその選択を選ぶことができるようになります。それは、ミッション・ステートメントが私たちの終わりを思い描いた姿であるからで、ミッション・ステートメントに従うことは、私たちの目指したい姿、なりたい自分、到達したい場所に近づくことができるからです。
このようにミッション・ステートメントは自分がどのような人でありたいかを表したモノですので、それに沿って仕事を選べば、私らしい仕事の選び方ができると考えているからです。
ただ、誰しもがミッション・ステートメントに沿って物事の価値基準を決めればよいのか? といわれると、そうではないと思います。価値基準は人それぞれ違います。私はたまたま7つの習慣のミッション・ステートメントを自分の価値基準にしていますが、自分なりの価値基準があればそれを使っても何ら問題はありません。大切なことは、自分の価値基準に従って物事を判断することだと考えます。
そして2つめは即断即決をルール化することです。先ほどの価値基準はもっていても、使おうと思わなければ何の役にも立ちません。つまり「自分は価値基準を元に物事を判断するんだ」というルールを自分の中で明確にする必要があります。これをしないと、都合の良いときだけ自分の価値基準を使って考えてしまうので、都合が悪くなると即断即決ができなくなります。そうならないように、私の場合は「物事をミッション・ステートメントに照らし合わせて判断する」というルールをもつようにしており、判断に迷うことがあれば、これに従って行動しています。そうすることで、即断即決をしても、それは自分の生き方だと考えることができるようになったので、後悔することはなくなったように感じています。
■選択の時代を生きる術
即断即決は万人に進められる方法ではないかもしれません。特に極力リスクを背負いたくないと考えられる方には向いていないと思います。何度も繰り返しますが、その判断は何ら間違っていません。しかし、私は即断即決はその人の大きな武器になると思っています。それは、私自身が自分の経験の中で感じたことです。私は、即断即決する力はこの選択の時代を生きる一つの術になるのではないかと考えています。