第290回 自分のまとめをつくる
こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。
キャリコンでは自分のことを深く知る「自己理解」という段階があります。自己理解には診断テストのようなモノを使って自分のことを知る場合もありますし、自分のことを内省し自分を掘り下げることもあります。今回は自己理解の中でも有効な「自分のまとめ」についてご紹介します。
■ITエンジニアの技術やスキル、どうやって表現しますか?
キャリコン如何に問わず、ITエンジニアは自分の技術、スキル、知識を把握しておく必要があります。それは、これから就く案件に対し、自分の技術、スキル、知識で対応ができるのかどうかといったことを判断しなければならないからです。ちなみに、この「判断」はできるできないを判断することであり、案件に就ける就けないを判断することではありません。技術力やスキルが足りなくても、あらかじめその情報が明確であれば現場のサポートを受けたり、助走期間を設けることで対応できる例はいくらでもあります。しかし、自分の技術やスキルを正しく判断できていないとトラブルを引き起こすことにもなりかねません。ですので、キャリコンにおいても、客観的にみた自分の技術やスキルを把握しておくことをお勧めてしています。
しかし、それをどうやって表現するか? これは結構な難題です(汗)
よくいわれるITSSやiコンピテンシーディクショナリといった指標を使うのも一つの方法だと思います。ただ、例えば「私はITSSのレベル4です! 」といわれても、それをどうやって証明するか? といった問題が出てきます。これはITSSやiコンピテンシーディクショナリーが自己申告による情報が元になっているからです。そのため、その根拠として資格やGAITといった診断ツールを使うケースもあります。
確かに資格の取得や診断ツールはある一定水準の技術、スキル、知識を把握するには適している面は持ち合わせていると思います。しかしながら、資格を持っていても現場で役に立たないケースは数多くあるのでは誰しもが理解していることではないでしょうか。
とはいえ、それに代わる抜本的な解決策がある訳ではないので、自己申告や資格などによってITエンジニアの技術やスキルを表現しているのが現状なのではないでしょうか。
■技術やスキルの有無を知らなければいけないのは誰?
そのため、ITエンジニアがつくったスキルシートや職務経歴書が正しいかどうかを現場の担当者は正しく把握しなければなりません。もしITエンジニアが「JavaでWebの開発を3年やってました。ある程度の開発ならできると思います」のような言葉を伝えたらどうでしょうか。これだと単にJavaの経験年数を伝えただけなので、その人がJavaで何ができるか分かりません。このような場合はその案件で何を身につけ、何をつくってきたのかといったことを追加でヒヤリングすることで、足りない情報を補いその人の技術力を測ろうとします。
そのように考えると、ITエンジニアは自分の技術、スキル、知識を相手に正しく伝えられることが求められます。だとすれば、自分の技術、スキル、知識の有無を知っておかなければならないのは他ならない自分です。自分自身がどれだけの技術、スキル、知識を有しているかが分かっていないと他の人に話すことなど到底できません。
それには、技術、スキル、知識の棚卸しが必要になります。
■自分のまとめをつくる
どのようにして棚卸しをすればよいか? 一般的には職歴ごとに対応した業務や知識、スキルなどを書き出し、そこで成功や失敗を含めた経験を書き留めておく。そこに自分の感想のようなモノが付け加えられていると尚良いかもしれません。実際、キャリコンでも自己理解の段階でこのような棚卸しは良く行います。
この棚卸しですが、更に効果的に行う方法があります。それは「自分のまとめ」をつくってもらうことです。自分のまとめとは、ある技術、スキル、知識などについて自分でその内容をまとめたモノです。今までの経験を総動員した自分だけのマニュアルといっても良いかもしれません。
この「自分のまとめ」をつくろうとすると、その人の技術、スキル、知識を体系的、網羅的に把握しようとします。その結果、知っている部分と知らない(=曖昧な)部分が浮き彫りになっていきます。最初は情報が少ないかもしれません。しかし、一度つくってしまえば、後は案件が終わるごとにメンテナンスをすれば常に最新の情報にアップデートされます。また、気になったときにもメンテナンスをすることで、どんどん自分のまとめの質は上がっていきます。
■自分のまとめをキャリアにいかそう!
自分のまとめは、自分で振り返るために使える資料にもなりますし、他の人に自分の技術、スキル、知識を知ってもらうための資料にもなります。また、他の人に教えるためのマニュアルにもなるなど、いろんな使い道があります。しかも、自分のまとめをつくる過程で文書化するため、表現力といったコミュニケーションスキルも磨くこともできます。
私は転職活動などでこのような自分のまとめを持っていくことをお勧めてしていますが、概ねどの企業さんでも好意的に受け取ってもらえているようです。それは、自発的にまとめをつくるということの行動力を評価されることもあるようですが、曖昧になりがちな技術、スキル、知識を自分なりのやり方で見える化する工夫をしている点での評価もあるようです。
ちなみに、私も自分のまとめをいくつかも持っています。私はキャリコン関係、コーチング関係、思考法関係のまとめをもっていますが、最近それらにプラスしてトレーナー(講師)関係のまとめをつくっています。トレーナー(講師)の仕事を始めて10年以上になりますが、その中で得た技術、スキル、知識を棚卸したいと思い、つい最近からこの作業を始めました。実際にやってみると本当にいろんな気づきがあり、自分の強みや弱みがハッキリしてきたような感じがしています。また、私のこれからの指針にもなると思っています。
「自分のまとめ」、結構オススメですので、ご興味のある方はぜひやってみてくださいね!