第158回 小噺のつくり方
こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。
過去のコラムでも書いていますが、私はそれほどしゃべり上手なタイプではありません。しかし職業柄、話すことが生業としていますので喋りが立つと思わることが多くあります。以前もある人からどうすればコミュニケーションが上手になるかを聞かれたことがありました。このとき、いつものように「仕事柄、話すことが…」と答えたのですが、この回答では納得されず、何度も食い下がられました。仕方がないので、私の話していることを実際に体験してもらうことにしたのですが、今回はこのことについて書いてみたいと思います。
■どうすれば、しゃべりが上手になるんですか?
その人は私が主催した研修に参加された方でした。普段からしゃべりが得意ではなく、頭の中で思いついたことをドンドン話してしまうので、話に関係のないことや考え方が飛躍してしまうことがあるらしく、本人としても何とかしたいと思っていたのだそうです。その人は、私の話し方を見て、私のようなしゃべり方になりたいと思われたそうです。
大変ありがたい話ですが、元々研修というのは事前に話す内容もある程度決めていますし、何度も練習をした上で行っています。ぶっつけ本番でやってる訳ではなく、予め準備をした上で話をしていることをお伝えしたのですが、どうにも納得してもらえません。それは、私が研修の合間にした小噺が事前に用意したようなモノではないと思われたからだそうです。その小噺も予め用意してある内の一つなんですよ、とお伝えしたのですが、それでも納得してもらえませんでした。
そこで、「それじゃ一つ小噺をやってみませんか? 」とその人に提案してみました。
■小噺のつくり方
私が小噺をつくる場合、2つのポイントがあります。
- 一つの小噺は5分以内にすること
- 事実(フリ)+伝えたいこと(オチ)で構成すること
小噺は長くなると聞き手の頭の中に入ってこなくなるので、最長でも5分以内で収まるようにしています。その内訳は、まず最初に自分が体験したことや人から聞いた事実を伝えます。これが小噺のフリになります。その上で、その事実から自分が何を相手に伝えたいのかを考えます。この伝えたいことが小噺のオチになります。ちなみに、事実(フリ)を2~3分、伝えたいこと(オチ)を1~2分程度にまとめると全体のバランスが良くなります。
これをその人に伝え、一緒にその人の小噺を考えてみることにしました。最初はなかなか自分が体験したことが出てこなかったのですが、話を掘り下げてみると趣味のことや仕事のことなどいろいろなことが出てきました。その中で私が面白そうだなと思ったネタを2分程度の話に仕上げました。
そこから、このネタから伝えたい内容を考えました。そのときのネタは登山だったのですが、要約すると、苦労して頂上まで登った後、山頂にバスが乗り入れていたので、帰りはそのバスで帰ってしまったという話でした。ここから何を伝えたいかを考えてもらうと、こんな話が出てきました。
- 人間は追いつめられると、楽な方法を取ってしまうものだなぁ
- 昔は登山でバスに乗るなんて考えられないことだったので、歳をとるにつれ、物事を柔軟に考えられるようになってきたんだろうなぁ
これをオチの話になるように考えてもらいました。そうして、先ほど考えてもらったフリとなる事実を、オチとなる伝えたいことを繋げて一つの小噺にしてもらい、それを何度か練習してもらいました。その後、小噺を聞かせてもらうのですが、このときビデオ撮影させてもらい、本人と一緒に後から確認してみることにしました。
■話すことが得意でなくても、話し上手にみえる
恐らく、自分が小噺を話している姿を見たのは初めてだったのでしょう。最初はかなり照れくさそうにされていましたが、その内、自分の話している姿を食い入るように見ていました。そうして、小噺がすべて終わった後、その人はこういわれました。
「私ってこんなに話せるんですね(笑)」
そのとき、その人に話すことが得意になったかと聞いたのですが、得意にはなっていないと答えられました。それが最初に伝えた「仕事柄…」というくだりの話であることを伝えた所、やっと私のいわんとすることを理解してもらえました。そうして、その人はこのようにいわれました。
「話すことが上手になるというこは、話すことが得意になると思い込んでいましたが、実際はそうじゃないんですね。コミュニケーションがスキルであるということも、今体験させてもらったことで良く分かりました。
話すことが得意にならなくてもしゃべり上手に見せることができるのは、少しホッとした感じがします。こんなしゃべりが苦手な私にもできるモノなんですね。これからも小噺を増やしてみたいと思います」
話すことが苦手でも、上手に話せるようになります。そのためにも、あなただけの小噺をつくり、それを人前で話せるようになるまで練りこんでみてください。それが人前で話せるようになったとき、あなたの周りにいる人は、きっとあなたのことを話し上手といわれるのではないかと思います。
コメント
abekkan
漫談の師匠の仕事もやっていたのですね。オチの付け方を教えていただきたいです(笑)!
いやいや。オチが受けなかった時の切り抜け方こそ興味ある。
…かれこれ20年くらい前、とある製品発表会場で
RISCプロセッサの説明の前振りに―DINCという当時の流行語に掛けてー
Reduced Income, Same Children
とぶちあげて一同きょとん。
「オープニングジョークがまったくウケなかったのでさっそく商品紹介を進めます」
と続けたプレゼンテーションがあって、わたしは大いに感銘したのであった。
abekkanさん、nsh1960様、
コメント、ありがとうございます。
ここ1週間、体調を崩してぶっ倒れてました。。。
オチの付け方ですが、私の場合、オチから先に話を考えることが多いです。
例えば「ドラえもんって必ずしもハッピーエンドの話ばかりじゃないんですよ」というのをオチに持ってきたとします。
そこからフリを考えますが、実際の所、フリはある程度どんな話でもOKです。
大事なことはフリとオチを繋ぐ言葉がしっかりつくっておけば上手く話をつなげられることが多いです。
そして、オチに納得してもらえたときはそのまま話を続けますが、オチに反応がなかった場合(nsh1960様の仰る「オチが受けなかった場合」)、
そこからもう一つ別のオチを用意しておき、それを使います。
今の場合ですと、
「ドラえもんって必ずしもハッピーエンドの話ばかりじゃないんですよ」
↓
(周りがシーン)
↓
「周りがシーンとしてしまいましたね。正にドラえもんだけに…浮いた話でした」
のような感じです(笑)
これでもウケなかったときは、「さっ、この話題はとっとと終わって、次に行きましょう!」と無理やり自分から場の流れます。。。