第133回 人のために行うキャリア
こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。
一般的にキャリアをつくるという行為は自分のためにあります。しかし、中には人のためにキャリアづくりをしようとするケースもあります。今回はそんなお話です。
■自分のことより周りを幸せにしたい
その人は江里さん(仮)といいます。江里さんはあるベンチャー企業で働くITエンジニアです。その会社は設立されて3年と年数の浅い会社で、江里さんはそこで社員をまとめる立場で働いていました。江里さんはこのように話されました。
「私の目的は、会社を大きくすること。そして、会社で働くうちの社員を幸せにすることです。私のことは二の次で構いません。いうなれば、それが今の私のキャリアでしょうか」
江里さんは自分のことより会社を大きくしたり、会社で働く社員を幸せにしたいと強く望んでおられます。そのためには自分のことは二の次でも構わないそうです。江里さんは更に話を続けられました。
「私は自分の会社が好きです。まだまだ小さな会社ですが、そんな会社を信じて集まってきてくれたのが今の社員です。彼らの技術レベルは決して高いとはいえません。しかし、うちの会社では社員が皆同じ方向を向き、会社を大きくしようと一人ひとり頑張ってくれています。だからこそ、私は会社を大きくして彼ら(社員)に還元したいのです。そのためには、私のことは後回しで構いません。今は私のことより、会社のことや社員を幸せにするような働き方がしたいんです」
■人のために行うキャリア
江里さんは自分のことは二の次で、まずは会社を大きくし、会社で働く社員に幸せになってもらいたいと考えています。このような考え方は経営層や部下を持つ立場の人に見られることがありますが、体感的に自分のことをあまり気に掛けない人が多いような気がします。しかし、当人はその仕事のスタイルが気に入っており、そのスタイルに不満を見かけられませんでした。
私は、キャリアとはその人が本当に目指したいと思える想いが込められたモノであると考えています。その人の強い想いが込められているからこそ、本気でそのキャリアを実現しようという動機づけが働き、実現に向けて動き出せるのだと考えています。
江里さんの場合は、既に江里さんが目指したいと思えるキャリアを実現されているのだと思います。江里さんのキャリア、それは会社を大きくし、社員を幸せにすることが可能な立場で仕事をすることです。そのポジションに就かれて仕事をされているからこそ、江里さんは仕事に対して不平不満などを抱かず、本気で会社を大きくし、社員を幸せにしたいと考えることができるのでしょう。このことを江里さんに話すと、江里さんは大きく納得されました。そして、笑ってこのようにいわれました。
「今でもそうですが、私は社員の幸せを考えて仕事をしています。そこに自分のことは含まれていないように思っていました。そうしゃなきゃならないと思っていました。しかし実際は逆で、私自身がこのような働き方をやりたいからやらせてもらっているんですね。そう考えると、私は既に幸せな仕事の仕方をさせてもらっているのかもしれません。
これからも、私は自分の働き方を続けていきます。そうして、今の私が幸せであるように、会社の社員全員も幸せにしていきたいですね(笑)」
その後、江里さんは週末に行われる会社の忘年会の出し物について、楽しそうにいろいろと教えてくださいました。