第132回 ITエンジニアが必要とするモノ
こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。
先日、あるITエンジニアの方にキャリア相談をさせてもらいました。そのとき、ITエンジニアにとって何が必要か？ という話が出てきましたので、今回はこれをネタにコラムを書いてみたいと思います。
■ITエンジニアは技術力あってのモノでしょう！
その方をここでは仮に飯田さんとお呼びします。飯田さんは過去にも私のキャリア相談を受けられたことがあり、今回は約5年ぶりにキャリア相談でした。以前の飯田さんは職人気質のITエンジニアで技術力を高めることこそがこの世界で生き残っていく術だと考えていました。そのため、そのときのキャリア相談では、
- どのようにして技術力を磨いていくか？
- 身につけた技術力をどうやって仕事に生かしていくか？
といった内容でキャリアプランを考えました。でき上がったキャリアプランは技術の習得がてんこ盛りで、かなり難しい技術の習得も入っていました。しかし、当の飯田さんは嬉々としてこれを受け入れ、次々と技術力を習得されていきました。また、その努力が実り、新しく身につけた技術を生かした幾つかの仕事に就くこともできました。
■ITエンジニアは営業力あってのモノでしょう！
しかし、先日お会いした飯田さんは少し様子が違っていました。何というか、職人気質の角が尖った感じのような雰囲気が幾分柔らかくなっており、話を聞くことが上手になっている印象を受けました。そこで、このことを飯田さんに話すと、飯田さんはこのようにいわれました。
「これまで、私はITエンジニアにとって大切なことは技術力だと考えてきました。高い技術力が求められるプロジェクトにも幾つか参加させてもらいました。しかし、それ以外のほとんどのプロジェクトでは、それ程高い技術力が求められることはありませんでした。こういう状況が続くと私は何のために高い技術力を求めてきたのかが分からなくなってきたんです。そこで、もう一度キャリア相談を受けさせてもらいにきました」
飯田さんはITエンジニアに求められる技術について、ご自身が苦労して身につけた技術力を生かす場が少なかったため、高い技術力を身につける意味が分からなくなったそうです。そのため、もう一度ご自身のキャリアパスを見直すためにキャリア相談に来られたのだそうです。そこで、飯田さんが想い描く理想ITエンジニア像を考えてもらうと、このように答えられました。
「今までITエンジニアは営業が取ってきた仕事だけをやっていればよいと思っていました。しかし、技術のことが分かっていない営業が取ってきた仕事は、コストや納期に歪みがあることが多いんです。もちろん、仕事を取ってくる上で多少なりとも無理をしなければならないことは理解しています。ですが、もし、技術力のある営業が仕事を取ってくることができれば、もっと開発がスムーズに行えるんじゃないかというプロジェクトも幾つかありました。
そこで、これからのITエンジニアには営業力、営業SE的な仕事の仕方が求められるのではないかと思うんです。また、ITエンジニアだけだと将来食いっぱぐれるかもしれませんが、営業ができて仕事が取ってこれるようになれば、いざというとき、何とかなるんじゃないかなって感じもするんです」
つまり、飯田さんはこれからのキャリアプランに営業SEを目指すことを考えられているようでした。そこで、
- 営業SEに必要なスキルの習得方法
- どうやって営業SEとして仕事をしていくか？
この2点について飯田さんにじっくり考えてもらい、新しいキャリアプランを作成してもらいました。そうして、現在、飯田さんはご自身が作成されたキャリアプランに基づき、日々営業SEになるための取り組みを行っておられます。
■ITエンジニアが必要とするモノ
今回の飯田さんのように、その時々によってITエンジニアが必要とするモノが違ってくる人は結構おられます。しかし、私はそれは当たり前のことだと思います。例えば、年齢という枠組みで考えても、20歳台と40歳台とでは物事の捉え方が違いますし、職種という枠組みで考えても、プロジェクトマネージャとプログラマとでは見る視点が明らかに違ってきます。それを結果論で「○○の方がよかった」とか「■■にしておいてよかったといった」と論じることはあまり意味のないことだと思います。
それより、飯田さんのようにその時々に本当に目指したいものをシッカリ定め、そこに到達できるよう日々努力をする。そうやって、その時々においてベストと思えるキャリアを目指すことこそが、結局はその人にとって最善のキャリアパスに成り得るのではないかと思います。