第120回 資料作成スキルの磨き方
こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。
ITエンジニアは設計書や報告書、提案書などたくさんの資料を作成しますが、実際にこれらの資料を作成してみると、なかなか思うように書けなかったりします。そこで、今回は資料を作成するスキルについて考えてみたいと思います。
■ビジネスマナーから考える資料作成能力
私が普段行う研修の中にはビジネスマナーに関する研修もあるのですが、大きくは接客、電話応対、名刺交換などといったコミュニケーションに関する研修と、報告書、Eメール、企画書などを作成する資料作成に関する研修に分けられます。
ビジネスマナーにおけるコミュニケーション系研修では、実際の接客、電話応対などでの正しいマナーを最初に学んでもらいます。例えば、お辞儀の仕方では、会釈、敬礼、最敬礼と3つのパターンがあり、それぞれに用途が違うことを知ってもらいます。その上で、実際にお辞儀の練習を行います。これは、接客、名刺交換、電話応対などにおいてもすべて同じやり方でやっています。
一方、資料作成系研修においても、コミュニケーションのときと同様に実際に資料を作成する上での方法を最初に学んでもらい、その後練習をします。こうやってみると、コミュニケーション系、資料作成系、どちらも同じような流れで研修を行っていることになるのですが、受講者に聞いてみると圧倒的にコミュニケーション系を苦手としている人が多いのです。これは、ITエンジニアの仕事が接客業のように常時コミュニケーションを必要とするような職業ではないからという側面があるからだと思いますが、それとは別に、これら2つのスキルの習得方法にも違いがあるからではないかと考えています。
■コミュニケーション能力と資料作成能力の習得方法の違い
コミュニケーション系研修では、最初にやり方を知識として覚えたとしても、身体がそれについていかなければうまくできません。「頭の中では分かっているのに身体が動かない」といったことがコミュニケーション研修では起こります。そのため、知識を身体に馴染ませるために、何度も何度も練習が必要になることもあります。
一方、資料作成系研修では、覚えた知識がそのままスキルとして活用することができます。もちろん、そのスキルを使いこなすためにはコミュニケーション系研修同様練習しなければならない部分もありますが、多くは知識として知っていれば資料は作れてしまいます。そのため、これは私の体感ですが、資料作成系研修はコミュニケーション系研修と比べて比較的習得しやすいのではないかと思います。
ただ、そのためには正しく資料を作成するためのつくり方(知識)をどこかから入手しなければならないという問題があります。研修では正しい資料の作り方をレクチャーしますので、その情報を頭に入れて資料をつくればそれだけで資料作成能力がアップさせることとができますが、研修に参加していない人は、まず最初にどうやったら正しい資料が作成できるのか、その知識を入手する所から考えなければなりません。
■文書作成能力を上げるためのツール
そういえば、最近、エンジニアライフのコラムニストの方で話題になっている『外資系コンサルが実践する資料作成の基本』という本があります。この本はMicrosoft Officeを使った資料を作成するためのノウハウがたくさん書かれています。私も一通り読みましたが、実際に私がこれまで報告書、提案書、プレゼン資料などを作成する中で身につけたノウハウと同じようなことがたくさん載っていました。正直よくここまで細かく書けたなぁと感心しましたが、それだけ資料を作成する上で使える情報がたくさん載ってるような印象を受けました。
正しい資料をつくるためには正しい知識が必要になります。この本はそのための一助となるのではないかと思います。ただ、この本は少し扱い方が難しいようにも感じました。万人が読みやすくなるような配慮もされているのですが、辞書的に使われることも想定された構成になっているのか、最初から通読していくのが結構シンドイような気にもなりました。
そのため、この本は予め何かしらの資料を作成する必要のある人が、資料を作成する前にノウハウを習得したり、辞書がわりに使うのが効果的ではないかと思います。この本は人を選ぶかもしれませんが、この本をベースに繰り返し資料を作っていくことで、資料作成能力は格段に向上するのではないかと思います。
資料の作成はコミュニケーションと違い、知識があればそれだけつくることができます。そして、正しい資料をつくるためには正しいという拠り所があった上で作成することが最良の手段です。ですので、資料がうまくつくれないという方は、この本を拠り所にしてみては如何でしょうか?