第116回 ITエンジニアにとっての需要と供給
こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。
ITエンジニアが技術やスキルを習得する上で需要と供給を意識することは多いと思います。そこで今回はこの需要と供給について思うことを書きます。
■そもそもなぜ技術やスキルを身につけるのか?
ITエンジニアが技術やスキルを身につけるには大きく理由が3つあると考えます。
1つは今働いている、またはこれから働くであろう職場で必要とされる技術やスキルがあり、それを習得しなければ仕事をこなせない場合です。この場合、習得することが仕事に就くための条件ともなるため、習得した技術やスキルが無駄になることはありません。
2つめはIT業界のトレンドとしてニーズの高い技術やスキルを習得しようとする場合です。例えば、2008年のリーマンショック時はシステム開発系の技術やスキルのトレンドが抑え込まれ、インフラ系の技術やスキルのトレンドが伸びてきたそうです。しかし、ここ数年景気の回復に伴い再びシステム開発系のトレンドが伸びてきたそうです。このようにその時期によってIT業界で求められるトレンドをうまく察知し、その技術やスキルを習得することで、上手に時代の波に乗っていこうという場合です。
3つめは自分が自発的に学びたいという意欲をもち技術やスキルを習得しようとする場合です。この場合、それが顧客のニーズと合致していればそのスキルを使うことはあると思います。例えば、Androidアプリをつくりたいという想いから、Androidアプリ開発の技術やスキルを習得したとします。もし、顧客がこの先Androidアプリ開発を行うニーズがあるのであれば、そのスキルを生かすことができますが、そうでなければ仕事でAndroidアプリ開発の技術やスキルを活用することが難しくなります。
■需要と供給を考える
先ほどあげた3つの例を需要と供給の視点から考えてみます。
最初の例では顧客のニーズが「需要」にあたりますので、技術やスキルを習得することは顧客のニーズを満たす「供給」にあたります。次の例ではIT業界のトレンドが「需要」にあたり、その技術やスキルを習得することは市場のニーズを満たす「供給」にあたります。それでは、最後の例はどうでしょうか?
自分が学びたいと考えている技術やスキルは、自分の想いが出発点であり、他者からのニーズに答えたモノではありません。そのため、このケースにおける「需要」は自分自身の想いになります。そして、その技術やスキルを習得することは自分自身の想いを満たす「供給」にあたります。
一見すると、ITエンジニアが技術やスキルを学ぶには顧客や市場のニーズを捉えた方がよいのではないか? と捉われてしまいがちになりますが、実際はそうではありません。寧ろ、キャリアをつくる上では最後の例こそが重要になってきます。
キャリアをつくる上で最も重要になってくるのはその人の想いです。この想いを具体的な形として実現させるキャリアこそが、私はその人にとって最良のキャリアになると考えています。最後の例は、その人が自発的に学びたいと思っている技術やスキルなのですから、これはキャリア形成を行う上で重要なポイントになります。しかし、この例では、学んだ技術やスキルに対するアウトプットが自己満足しかなく、それ以上のモノがみつけられていないことが問題になります。そのため、このケースで技術やスキルを学ぼうとする場合、自己満足以外の新たなアウトプットを探し、それを新たなキャリアとするのです。
例えば、先のAndroidアプリ開発を例に取るならば、
- Google Playで公開する
- Androidアプリ開発を習得したいと思っている他のITエンジニアに向けて情報を発信する
- 顧客に対してAndroidアプリ開発の提案を行う
など、いろいろな方法が考えられます。ここであげた方法はほんの一部ですが、ここでのポイントは無理に仕事と連動させる必要はありません。どのようにすれば自分自身の想いを実現させるを考え、それを具体的な形としてつくり上げることが重要です。
■供給から需要をつくり出す
このようなやり方はキャリアづくりではよく行われることですが、今回のテーマである需要と供給から考えると、「供給」から新たな「需要」をつくり出すともいえます。これからの時代、ITエンジニは顧客や市場のニーズから「需要」を拾っていくやり方だけではなく、自らの技術やスキルからどのような「需要」をつくり出していくことができるのか? いつの日かそういった能力が必要になってくることが当たり前になる日が来るかもしれませんね。