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第94回 ソフトパワーのしくみ

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 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。

 先日、LPI-Jpan成井理事長の講演を聞く機会がありました。非常にタメになる公演だったのですが、その中でソフトパワーについて話されており、非常に共感しました。そこで今回はソフトパワーについて思う所を書きます。

■ソフトパワーとは

 ソフトパワーをWikipediaで調べてみるとこのように書かれています。

ソフト・パワー(Soft Power)とは、国家が軍事力や経済力などの対外的な強制力によらず、その国の有する文化や政治的価値観、政策の魅力などに対する支持や理解、共感を得ることにより、国際社会からの信頼や、発言力を獲得し得る力のことである。対義語はハード・パワー。

 この解説からわかるように、ソフトパワーとは元々国の外交戦略の一環として用いられる手法の一つのようですが、そこに留まらず、色々な方面にも使われているようです。成井理事長のお話ではAppleのiTunes Uのことを例にあげ、以下のように話されていました。

 iTunes UのUはUniversity、つまり「大学」の意味で、日本を含む世界26カ国の大学の講義や講義資料をその国の言語で無料で閲覧することができます。これに対してAppleは大学に対して一切資金を提供していないし、大学に対してコンテンツをアップしてもらうような依頼もしていません。それにも関わらず、既に50万のコンテンツが集まっています。

 教授はiTunes Uに自分の講義をアップすることでたくさんの人に自分の講義をみてもらうことができます。それによってたくさんの人に自分の講義を知ってもらい、自分の講義を受けにくる受講生を増やすことにも繋がります。

 しかも、iTunes Uには視聴ランキングが設定されており、よく閲覧されるコンテンツが上位に上がるしくみになっています。これによって、教授は自分の講義の人気度が分かります。そうすると、自分の講義に人を集めるためにはランキングが高い方が説得力がありますので、より魅力的な講義をつくってアップしようとします。その結果、自然とiTunes Uには良質の講義が無料で集まり、そこに人も集まってきます。これはまさにソフトパワーといえるでしょう。

 確かに、なるほどなぁと思います。もし仮にひとつの会社でこれだけのコンテンツを用意しようととなると、莫大な時間と費用がかかるでしょう。しかし、Appleはソフトパワーを上手く使うことで、無償で良質のコンテンツを大量に生み出すことに成功しています。

■ソフトパワーのしくみを考えてみる

 ソフトパワーの反語はハードパワーですが、ハードパワーは強制力をもって相手との交渉事をを優位に働かせます。しかし、ソフトパワーは相手に対して何ら強制力をもちません。むしろ、相手が臨んでこちらの優位になるように行動させます。これは、一体どうやっているのでしょうか? 少し調べてみたのですが、それらしいモノがみあたらなかったので自前で考えてみました。

 まず一つ言えることは、ソフトパワー云々の前に、相手と自分が互いにWin-Winの関係をつくりださなければならないことがあげられます。そのためには、最初に相手の利になることを提供することが考えられます。先のiTunes Uの例でいえば、自分のコンテンツをアップすることでたくさんの人が自分の講義をみてもらえるようになること、これが教授にとってのWinになります。

 そして、相手のWinによって自分のWinをつくりあげること、これが2つ目にすべきことです。iTunes Uの例でいえば、たくさんの教授からコンテンツが集まってくること、これがAppleのとってのWinになります。

 さらに、ここから相手が利を享受し続けるしくみをつくりあげること、これが3つ目にすべきことで、ここにソフトパワーを仕込まれます。iTunes Uの例でいえばランキングです。i Tunes Uにランキング制度を導入させることで、ランキングを気にする教授はランキングを1つでも上げようと良質のコンテンツを提供し続けます。それにより教授同士でランキングを競い合わせるというしくみができ上がります。そうなると、Appleは何もせずとも、自然とそこにソフトパワーが働いていきます。

 つまり、ソフトパワーを働かせるためには…、

  1. 最初に相手にとって利のあることを提供する(iTunes Uで自分の講義をアップし、たくさんの人に視聴してもらえること)
  2. それによって自分にも利を享受できるようにする(iTunes Uにたくさんの講義がアップされること) → Win-Winの完成
  3. 相手がそれを自ら続けなければならないと思える状況をつくる(ランキングを維持するために良質の講義をアップし続けること) → ソフトパワーの完成

この3つの段階が必要になるのではないでしょうか。

■リーダーこそソフトパワーを生かそう

 このソフトパワーは私たち一般社会で生活している人にとっても有効な手段だと思います。特に、組織を束ねるリーダーにとって、ソフトパワーが使いこなせるようになると、メンバーが活発になり組織は自然と活性化していくのではないでしょうか。これってすごく魅力のあることだと思いますので、早速私も使ってみようと思います!

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