第82回 研修の限界とその先
こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。
前回、研修について思うところを書きましたが、少し書き足りない感じがしていました。そこで、今回も研修について書きたいと思います。
■何のために研修があるのか?
そもそも研修は何のためにあるのでしょう? 答えは簡単、何かしらの問題を解決するためです。足りない技術やスキルの習得から、コミュニケーション能力の向上まで、受講者が不足しているモノ、身に付けたいと考えているモノを提供することが研修のおおまかな目的です。
それでは次。研修を受けた受講者に対して、「研修を受けた結果、その問題は解決しましたか? 」と質問するとどのような答えが返ってくるでしょう? 恐らく「解決した」「解決していない」の2つに割れるのではないでしょうか。これは何かしらの研修を受けらたことのある人ならイメージできると思いますが、どれだけ満足度の高い研修を受けたとしても、それで問題が解決できなかったことはよくあります。つまり、研修の満足度と受講者自身が抱えている問題が解決するかどうかは、必ずしも一致してしないのです。
■研修講師の言い分
しかし、研修講師の評価は受講者に満足のいく研修を提供したかどうかで決められます。このことを深読みすると、
研修講師は受講者に満足のいく研修を提供することができていれば、受講者の問題が解決できようができまいが評価される
のようにも受け取れます。この意見には当然反論もあるでしょうが、筆者の経験上、このような風潮は強くあるように思います。研修講師のミッションはあくまで目の前の研修をパーフェクトに遂行することであり、受講者の問題はあくまで受講者側で解決すべきモノだ、という考え方です。この考え方は、研修は受講者が抱えている問題を解決する1つの方法に過ぎず、その方法を使ってどうやって問題を解決させるか、その計画(プランニング)を立てるのは受講者自身で考えてください、という立場に立っています。
■研修の限界
この考え方の是非をここで論じるつもりはありません。例え、研修しか提供できなかったとしても、
- 「この研修で技術力が付いたことを実感した! 」
- 「話すのがうまくなった! 」
- 「研修を受けて人生感が変わった! 」
受講者からこのように絶賛される研修をされている講師は数多くおられます。しかし、これはあくまで研修が素晴らしかったことへの感想であり、その研修によって問題が解決できていることではありません。人は研修を受けている時間より、研修を受けた後の時間の方が圧倒的に長いのです。目からウロコの研修だったとしても時間が経てば記憶や感動が薄れ、いずれは風化していきます。だから、どれだけ素晴らしい研修ができるとしても、その1回の研修で人の行動変容を起こすためには相当難しいのです。そして、ここに研修の限界があると筆者は思っています。
■限界の先にあるモノ
だからといって研修そのものを否定するつもりはありません。研修には人の価値観や行動を大きく変える力があります。しかし、研修だけでは受講者の問題を解決できないことがあるのも事実です。それではどうすればよいのか?
研修講師は自分が行った研修の先にあるモノ、つまり、自分の研修を受けた受講者がその後どうやって問題を解決していくのか、その方法を知っておかなければなりません。それらを分かった上で研修講師としての役割を果たし、研修が終わった以降、受講者がやらなければならないことを指し示してあげる必要があるのではないかと思います。
そして、もし可能ならば、事前に受講者が抱えている問題について問題解決手法(論理思考、水平思考)、コーチング、キャリア・コンサルティングなどを使い、問題の分析、解決方法の検討などを行った後、予め決められた計画の1つとして研修を受講する。これこそが本来あるべき研修の姿なのではないかと思います。