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第78回 コーチングのススメ11 相手を認める言葉~Iメッセージ~

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 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。

 前回までに4Sコーチングの話す内容から「考察」と「承認」のスキルを紹介してきました。今回は最後の1つである「意見」のスキルを紹介します。

■コーチが意見することの必要性

 4Sコーチングにおいて、コーチはクライアントにもコーチにも寄らない中立の立場が求められることを以前お話しました。しかし、コーチが意見をするということはコーチの主観をクライアントに伝えることですから、中立に立っていることにはなりません。これは一体どういうことなのでしょうか?

 コーチングでコーチの主観が入ると、コーチの想いでコーチングが進んでしまう可能性があるため、通常はコーチの主観を含めず、中立の立場でコーチングを進行させます。しかし、コーチの主観を利用することでクライアントに深い考えや気づきを与える可能性がある場合に限ってのみ、意見のスキルを使い、コーチの主観をクライアントに伝えることができます。

 いい方を変えるならば、意見のスキルで使われるコーチの主観は、コーチのためではなく、クライアントのためにあります。つまり、クライアントの目的を達成させるために、あえてコーチの主観を利用するのです。それに対して、一般的な会話で意見を述べる行為は、意見を述べる側、つまり話し手のためにあります。この点が大きな違いとなります。

 コーチの主観を客観的に利用すること、これが4Sコーチングにおける意見のスキルです。

■Iメッセージ

 4Sコーチングではコーチの意見を述べる際、Iメッセージと呼ばれる方法で意見を述べます。Iメッセージはコーチの考えや主観を、コーチの言葉でクライアントに伝える伝え方です。そして、このIメッセージを使う場合、原則としてその前段階でYouメッセージを使ってから行います。これは、Youメッセージでクライアントの客観的な状態を伝えた上でIメッセージを使うことで、Youメッセージの効果をより高める意味合いがあります。以下は、YouメッセージからIメッセージにつなげている例です。

  • (Youメッセージ)「今日はジーンズを履いていますね」

(Iメッセージ)「そのジーンズ、すごくお似合いですね」(ジーンズに対する意見を述べています)

  • (Youメッセージ)「あなたは今日10時間作業をされたんですね」

(Iメッセージ)「かなりお疲れのようですね」(作業について意見を述べています)

  • (Youメッセージ)「あなたがルールを決めたのですね」

(Iメッセージ)「それは成功するでしょうね」(ルールを運用した結果について意見を述べています)

  • (Youメッセージ)「拾った財布を交番に届けたんですね」

(Iメッセージ)「とてもいいことをしましたね」(財布を交番に届けた行動について意見を述べています)

 Iメッセージを作るためには、先に話されたYouメッセージに主観的事実のレベルを組み合わせることで意見の内容を作り出します。主観的事実のレベルとは、コーチがYouメッセージの内容を主観的に捉える捉え方ことで連結推測判断のレベルに分かれています。

主観的事実のレベル

  • 連結レベル … Youメッセージによる客観的な事実とクライアントをつなげたときのコーチの考えや主観を意見するレベル
  • 推測レベル … Youメッセージによる客観的な事実から推測されることをコーチの考えや主観で意見するレベル
  • 判断レベル … Youメッセージによる客観的な事実をコーチが判断した結果を意見するレベル

 連結レベルとは、Youメッセージによって得られた客観的な事実とクライアントをつなげたときのコーチの考えや主観としてクライアントに伝える方法です。このつなげ方がクライアントにって意識していないところにあればあるほど、Iメッセージの効果が強くなります。また、連結レベルでは客観的事実とクライアントとの間には時制(時間の流れ)が発生しないようにつなげます。

Iメッセージ(連結レベルの例)

  • (Youメッセージ)「スマートフォンをもっていますね」

(Iメッセージ)「そのスマートフォン、お似合いですよ」

  • (Youメッセージ)「子育てをされているのですね」

(Iメッセージ)「気苦労が多そうですね」

  • (Youメッセージ)「待ち合わせには、いつも10分前に到着していますね」

(Iメッセージ)「スケジュールには厳しいのでしょうね」

 推測レベルとは、Youメッセージによって得られた客観的な事実から推測されること、つまり、原因や結果をコーチの考えや主観でクライアントに伝える方法です。例えば、Youメッセージに原因を置いた場合、結果は推測レベルで意見することになります。逆に、Youメッセージに結果を置いた場合、原因を推測レベルで意見することになります。そのため、先の連結レベルには時制(時間の流れ)がなかったですが、この推測レベルには時制(時間の流れ)が発生します

Iメッセージ(推測レベルの例)

  • (Youメッセージ)「今、部屋に入られましたね」

(Iメッセージ)「あなたが部屋に入ると、空気が変わりますね」

  • (Youメッセージ)「彼女が転職に成功しましたね」

(Iメッセージ)「彼女の未来は明るいですね」

  • (Youメッセージ)「パソコンがフリーズするのですね」

(Iメッセージ)「乱暴に扱われているかもしれませんね」

 判断レベルとは、Youメッセージによって得られた客観的な事実をコーチが判断し、コーチの考えや主観でクライアントに伝える方法です。判断には、善悪(良い・悪い)、真偽(正しい・間違っている)、選択(複数の選択肢から選ぶ)などがあります。判断レベルの意見は、他のレベルと比べて、直接的にクライアントに響きやすい意見になります。効果が大きい分、クライアントに与える影響も大きくなりますので、マイナス方向の意見ではなく、プラス方向の意見で使うように心がけます。

Iメッセージ(判断レベルの例)

  • (Youメッセージ)「妊婦さんに席を譲られましたね」

(Iメッセージ)「あなたは素晴らしい行動をされましたね」

  • (Youメッセージ)「会議中に寝ていましたね」

(Iメッセージ)「あなたにとってこの会議は退屈なのでしょうね」

  • (Youメッセージ)「コーチングを学んでいますね」

(Iメッセージ)「あなたは人生にプラスになることを学んでいますよ」

■意見を伝えることの大切さ

 今回は話す内容の「意見」のスキルからIメッセージという方法を紹介しました。私たちは、これを話すことで相手の気を悪くしないか? これを話すことで相手のモチベーションを下げたりしないか? といったことを考えながら話すことがあります。そう考えると、私たちは相手に自らの意見を伝えるという行為が相手の行動を変容させる可能性をもっていることを心のどこかで理解しているのかもしれません。4Sコーチングではこのことを明示的に意見のスキルとして使います。クライアントが目標に達するために意図してコーチの意見を利用し、クライアントの行動変容を促します。意見のスキルを訓練していると、普段の日常会話でも自分の意見を伝えやすくなります。よかったら参考にしてみてください。

 今回で4Sコーチングの3つ目のSであるSkillの紹介がすべて終了しました。次回は最後SであるStrategyについて紹介したいと思います!

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