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第76回 コーチングのススメ9 気づきを促す質問~客体のスライド~

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 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。

 前回は4Sコーチングの「考察」のスキルから「主体のスライド」を紹介しました。今回は、これと対になるスキルである「客体のスライド」を紹介したいと思います。

■客体のスライド

 主体のスライドのときと同様に、客体もWikipediaで調べてみると、客体とは「感覚を通して知ることができるものであり、いわゆる物である」と定義されています。これを4Sコーチングに置き換えると、クライアントが見ている物(対象物)となります。主体のスライドとは逆に、客体のスライドでは、クライアントの視点はそのまま(=クライアントが見ている状態)で、対象物の捉え方だけをスライドさせます。例えば、ここにスマートフォンが置いてあるとして、これを客体のスライドで見てみます。

  • この家電にはどのくらいの人々の生活を豊かにするのでしょうね? 」(スマートフォンを「家電」という括りで捉えています)
  • このインターネット端末って便利だと思いませんか? 」(スマートフォンを「インターネット端末」という括りで捉えています)

 この例のように、スマートフォンという機械に対して、それを「家電」や「インターネット端末」といった捉え方をしています。このように、モノは同じでも捉え方をスライドさせることを客体のスライドといいます。

■チャンク

 客体のスライドを作るためには、話そうとするキーワードとチャンクのレベルを組み合わせることによって質問の内容を作り出します。チャンク(chunk)とは、英語で「大きな塊(かたまり)」を意味する言葉で、4Sコーチングでは対象物を捉える範囲になります。4Sコーチングではチャンク(対象物を捉える範囲)を大きくしたり、小さくしたりすることで、対象物の捉え方をスライドさせていきます。

 このチャンクの大きさをチャンクのレベルといい、ビッグチャンクミドルチャンクスモールチャンクの3種類のレベルに分けられます。通常、クライアントが捉えている状態をミドルチャンクに置き、そこからチャンクのレベルを上げたり、下げたりします。このチャンクのレベルを上げることをチャンクアップ、チャンクのレベルを下げることをチャンクダウンと呼びます。

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 一般的にチャンクはその人の捉え方、固定概念であるといえます。このチャンクを上げたり、下げたりすることは、その人の捉え方、固定概念を崩すことに繋がり、それによって考えや気づきを促すことに繋がっていきます。

 チャンクアップとは、現在捉えているチャンク(=ミドルチャンク)より大きなチャンクにスライドさせることをいいます。具体的にはキーワードを大きな括りで捉えたり、抽象的、概念的な考え方に近づけていきます。

客体のスライド(チャンクアップ)の例(キーワードを「ノートパソコン」にしています)

→ (オープン・クエスチョン)「ノートパソコンを今より大きな括りで捉えると、何になりますか?

→ (クローズド・クエスチョン)「ノートパソコンは大きな枠組みでいえば機械ではありませんか?

 チャンクダウンとは、現在捉えているチャンク(=ミドルチャンク)より小さなチャンクにスライドさせることをいいます。具体的にはキーワードをより細かな括りで捉えたり、具体的、現実的な考え方に近づけていきます。

客体のスライド(チャンクダウン)の例(キーワードを「かっこいい」にしています)

→ (オープン・クエスチョンの場合)「かっこいいということをもう少し噛み砕くと、どういうことになりますか?

→ (クローズド・クエスチョンの場合)「かっこいいということを具体的にいうと、「物怖じをしない」ということですか?

■チャンクを意識した会話をしよう!

 今回は「考察」のスキルから客体のスライドについてお話ししました。私たちの会話には曖昧な言葉がたくさんでてきます。それを意味の分かるような言葉に掘り下げることはコーチングでなくてもよく行われています。また、枠を広げて考えることで新しい発想や考えを生み出すことも、意識せずにやっていることが多いと思います。

 しかし、普段の会話にチャンクを意識してみると、チャンクアップ、チャンクダウンさせることで相手に考えや気づきを促している実感が湧くと思います。興味のある方はぜひやってみてください!

 それでは、次回は「話す」スキルの2つめである「承認」のスキルを紹介したいと思います。

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