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第62回 守破離でスキルを身に付ける

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 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です

 前回、『序破急』に絡めた話し方について書きました。この『序破急』には関連する言葉として『守破離』があります。今回は、この『守破離』という考え方からスキルを身に付けることについて考えてみたいと思います。

■序破急と守破離

 『序破急』は能の大家である世阿弥によって書かれた『風姿花伝』に書かれている言葉で、雅楽における楽曲を構成する3つの要素として紹介されています。これが現在においてたくさんの意味合いを持つ言葉として扱われてるようになっていることを前回のコラムで紹介しました。

 対する『守破離』は、戦国時代の茶人千利休によって詠まれた歌である

規矩(きく)作法 守りつくして 破るとも 離るるとても 本(もと)を忘るな

にその言葉の原型を見出すことができ、それから約200年後の18世紀江戸時代の茶人川上不白がその言葉を確立したといわれています。

原型を見出すことができ:一説には、戦国時代の武将高坂昌信が記した『甲陽軍鑑』にその語源があり、それを千利休が読み、上記の歌を詠んだという説もあるそうです。

 このような守破離ですが、そもそもはこのような意味があります。

  • ・・・師匠から言われた基本的な型を「守る
  • ・・・その型に自分の創意工夫をすることで、既存の型を「破る
  • ・・・自分の世界を作り出すために、型そのものから「離れる

 この考え方は物事を学ぶ上での基本的な精神として、今日は能楽や茶道だけでなく、武道や芸事などにも受け継がれています。この『守破離』という思想、一説には世阿弥の『風姿花伝』にその思想を読み取ることができるという説があるそうです。ただし、『風姿花伝』には『守破離』という単語そのものは出てきませんのでその真偽は分かりませんが、『守破離』は序破急を根底とした思想であるともいわれています。

■守破離をITエンジニアに当てはめてみると……

 『守破離』という考え方は物事を修得する段階と読み取ることもできるのですが、これをITエンジニアに置き換えてみると、案外しっくりきます。例えば、プログラム言語の修得の過程を『守破離』で考えてみます。

  • ・・・プログラム言語の仕様を覚え、教科書に書かれてあるアルゴリズムやロジックを覚えていく段階
  • ・・・プログラムの仕様にも慣れ、独自にプログラミングができてくる段階。要求される仕様を実現するために最適化されたプログラミングを行う段階
  • ・・・修得したプログラム言語だけすることなく固執せず、仕様を実現する上で最も適した実装手段を独自に選択し、実装が行える段階

 このようにみると、『守』→『破』→『離』になるにつれて、要求される技術レベルが格段に上がっているのが分かります。そして、筆者はここに技術スキルを修得するためのヒントが隠されているように思います。

 一般的なシステム開発を想定してみると、ITエンジニアに要求されるレベルは、『守』、『破』、『離』でいえば『破』以上のレベルです。しかし、未経験者が技術スキルを資格や独学で修得しようとする場合、どうしても『守』のレベルで留まってしまうことが多いように思われます。それは、『破』レベルの技術スキルを修得するためには主に実務経験を伴うからなのですが、そうすると、未経験者はいつまで経っても実際のシステム開発で使える技術スキルが身に付けられないという問題が出てきます。

 そのためにはどうすればよいのか? 実はそのための方法論については、既に過去のコラムで語らせてもらっています。それは、意思決定の3フェイズの第2フェイズにあたる「目指すキャリアに必要な能力・スキルを考える」のb.実務的能力・スキルの修得です。

過去のコラム:詳しくは、『第6回 あなただけのキャリアを設計する(2)』をご参照ください。

 つまり、『破』レベルの技術スキルを修得するために実務経験が必要なのであれば、それを実務経験と同様の(もしくは近い)技術スキルを何かしらの方法で修得し、それを雇用主に認めてもらうのです。

■先人たちがもち合わせていた物事の本質を見極めるスキル

 それにしても、このような考え方が今から何百年も昔に存在していたのは本当にすごいことだと思います。

 当時は今ほど文明も発達しておらず、人々の考え方も今ほど論理的、合理的ではなかったと思います。それにも関わらず、今日まで通用する考え方がこの時代に確立されたのは、ひょっとしたら、その当時の人たちは物事の本質を見極めるスキルをもち合わせていたからではないでしょうか。それを理論で説明することはできなかったかもしれませんが、体感や体験によって物事の本質を知り、そこにたどり着りつこうとしていたのではないかと思います。

 そして、それは、この現代においてもっとも必要とされるスキルの一つになっているように思います。そう考えると、私たち現代人は、もっと先人の残したモノに目を向け、そこから本質を学ぶことが必要なのかもしれませんね。

Comment(2)

コメント

匿名

・守:決められた技術と仕様にしたがって、淡々と作業をこなし、一般的なエンジニアとしてのスキルをつけていく段階
・破:システムの観点から、仕様の不備を改めるため時には業務要件をひっくり返し、運用設計・方式設計からやり直させ、賢明な判断でプロジェクトを途中で終了させることもできる段階
・離:会社組織を離れて独立し、外部の専門家として幾多の企業に対し、技術顧問として技術相談・技術指導を行う段階

キャリアコンサルタント高橋

匿名さま、


かなり昔のコラムですが、コメントをいただきありがとうございます。


このときの守破離はどちらかと言えば狭い範囲でのITエンジニア、例えるならばシステム開発における下流工程~上流工程における技術スキルについて書かせていただいたと思います。


匿名さまがお書きになられた守破離はもっと広い意味でのITエンジニア、どちらかといえばITアーキテクト、超上流工程までも見渡した守破離なのかもしれませんね。

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