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第38回 四方山話(20) 水平思考のススメ2

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 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。

 前回、水平思考についてご紹介しましたが、思いのほかたくさんの方にご覧いただきました。これは現代社会という荒波を乗り越えるためのツールとして水平思考が見直されているということの表れなのでしょう! ……というといい過ぎですが、せっかくの機会ですので少し予定を変更し、筆者が研修で使っている水平思考ネタを何回かに渡ってご紹介したいと思います。

■水平思考と論理思考の違い

 前回、『年老いた醜い金貸しに借金した父親と娘の話』から水平思考と論理思考の違いを軽く説明しました。水平思考、論理思考とも何かしらの問題を解決するための方法なのですが、ここでもう一度整理しておきます。

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 ここでは、水平思考と論理思考を思考方法、論理の整合性、解答、有効なケースの切り口で違いをみています。こうやってみてみると、水平思考と論理思考は対局の考え方にあることが分かります。

 例えば、プレゼンテーション折衝など、与えられた前提を掘り下げ、解答を導き出すことが有効とされるケースでは、論理思考の考え方が有効に働きそうです。

 逆に、新商品開発新運用の策定など、創造性によって既存にない革新的な解答を導き出したいケースでは、水平思考の考え方が適しています。

 前回もお話ししましたが、水平思考と論理思考は互いに相反する関係にありますが、どちらが優れているということはありません。それぞれの特徴を理解し、短所を補い合うことで、よりレベルの高い問題解決が行えるようになるものだと筆者は考えています。

■水平思考の4手法

 水平思考にはたくさんの解決方法があります。その中でも筆者は4つの手法に絞って水平思考を考えるようにしています。前回、『年老いた醜い金貸しに借金した父親と娘の話』を解決する際、「解決させる目的をハッキリさせる」という考え方を使いましたが、これもその一つです。

《水平思考の4手法》

  1. 解決する目的をハッキリさせる
  2. 前提を疑ってみる
  3. 視点をスライドさせる
  4. アイデアを組み合わせてみる

 これらの手法はそれぞれが独立しており、その手法だけで解決できることもあります。しかし、先ほどの水平思考と論理思考の比較をもう一度みてください。水平思考の解答は一つとは限りません。ある手法で導き出された解答より、別の手法を使った方がよい解答が生まれることもあります。また、複数の手法を組み合わせて解答を導き出すこともあります。そのため、たくさんの手法を知っている方がより多角的に問題を解決しやすくなります。

■それでは、ここで問題です!

 それでは、ここで問題をやってみましょう! 今回はこんな問題をご用意してみました。

――

《2つの道の話》

ここに2つの道があります。

それぞれの道はスタート地点から分かれ、ゴール地点で合流します。

一つの道は山あいの道です。

山道のため道幅は狭く、ものすごくうねっています。そのため、スタート地点からゴール地点までの距離は20キロメートルあります。

もう一つの道は舗装された道路です。

この道路アスファルトで舗装された見晴らしのいい一本道です。そのため、スタート地点からゴール地点までの距離は3キロメートルでした。

ここで同じタイミングで同じ性能を持つ2つの自転車が同時に山道と舗装された道をスタートしました。両車とも1キロメートルの速度で進んでおり、スタート地点からゴール地点までに渋滞などによる車の停車はなく、自転車の速度は常に一定でした。

数分後、先にゴール地点に着いたのは山道をとおった自転車でした。

なぜ、このようなことが起きたのでしょうか?

(独自問題)

――

 今回はこの問題を「前提を疑ってみる」ことで解決してみます。まず、この問題の前提条件をあげてみるところからやってみましょう。いろいろな前提条件が出てくると思いますが、ここでは2つの前提条件に着目してみます。

《『2つの道の話』の前提条件》

  1. 自転車は1キロメートルの速度
  2. 数十分後にゴール

 この前提条件をよくみてください。どこかにおかしなところはないですか?

 前提条件1.をよくみてみると、速度の単位が明確になっていないことが分かります。「1キロメートルの速度」は時速なのか、分速なのか、はたまた秒速なのかが分かりません。ここにピンと来たあなた! 目の付けどころが素晴らしい! 気づかなかったあなたは、ひょっとしたら無意識に「1キロメートルの速度=時速1キロメートル」と置き換え、スルーしていたのかもしれませんね。

 また、前提条件2.の「数十分後にゴール」もよく見直してみてください。仮に、時速1キロメートルで走っていたのであれば、20キロメートル先のゴールに辿りつくためには、20時間もかかってしまいますので、到底数十分で到着することはできません。そう考えると、山あいを走っていた自転車の速度は時速1キロメートルではないことが分かりますね。

 これら前提条件の抜け、漏れ、矛盾に気付くことができれば、

山道を走った自転車の速度が分速1キロメートル(時速60キロメートル)、舗装された道を走った自転車の速度が時速1キロメートルだったため、山道を走った自転車の方が早く着いた

という解答にたどり着くことができるのではないでしょうか。

■「前提を疑ってみる」コツ

 ここでは「前提を疑ってみる」手法で問題解決を試みましたが、これを実際に使うには、ある種のコツがあります。

《「前提を疑ってみる」手法のコツ》

問いかけに対して、以下のような考え方で捉えてみる。

①問いかけで語られている前提条件をあげる

②前提条件に疑いを向け、前提条件の漏れ、抜け、矛盾を探す

  『本当に~なの?』、『本当に~しなければならないの?』

③前提条件の漏れ、抜け、矛盾があった場合、その情報と問題とを結びつけ、解答が導き出せるかを考えてみる

  『ということは?』

 前提条件には、その人の思い込み、癖、感情などが含まれている場合があります。これは一見すると見分けがつかないこともあります。その前提条件を疑うことで、不要な情報を遮断し、ありのままの事実のみを受け入れられるようになります。その結果、新しい答えがみえてくることがあります。そのためには、前提条件一つ一つに対して、

『本当に~なの?』、『本当に~しなければならないの?』

のフレーズを使い、疑いの目でみるようにしてみてください。そうして、前提条件に、抜け、漏れ、矛盾が見つかった場合、そこから話を繋げて解法に導きます。その際、

『ということは?』

のフレーズを使い、答えが導き出せるようなアプローチをしていくとスムーズに行えます。

含まれている場合があります:この例では『1キロメートルの速度』を『時速1キロメートル』と読み変えてしまったところが、思い込みにあたります。

■「解決する目的をハッキリさせる」手法のコツ

 「前提を疑ってみる」手法と同様に、「解決する目的をハッキリさせる」手法にもコツがあります。前回ご紹介していなかったので、あらためてここでご紹介します。

《『解決する目的をはっきりさせる』手法のコツ》

問いかけに対して、以下のような考え方で捉えてみる。

①問いかけで曖昧な箇所を明確にする

②前提条件を無視し、メリット(利点)だけを考えてみる

 この考え方を使って、前回ご紹介した『年老いた醜い金貸しに借金した父親と娘の話』をもう一度考えてみましょう。

問いかけ:さて、娘はどのように行動するのが賢いでしょうか?

コツ①:あいまいな箇所はどこか?

     ↓

    「行動する」ってどういうこと?

     ↓

    「白い石を引くこと」では!

コツ②:問題を解決するメリット(利点)は?

     ↓

    「父と娘が助かること」では!

 これら2つの答えをまとめると、解決する目的は以下のようにいいかえられます。

《解決する目的》

父と娘が助かるために、娘はどのように行動すれば白い石を引き当てることができるでしょうか?

 このように解決する目的をハッキリさせるだけでも、そこから解決の糸口をみつけられる場合があります。もしみつけられなかった場合、「前提を疑ってみる」手法を先に行うことで浮かび上がってくることもあります。また、先に目的をハッキリさせた場合でも「前提を疑ってみる」ことで、違う目的に変わることもあります。そのため、「解決する目的をハッキリさせる」手法と「前提を疑ってみる」手法は一緒に行ってみる効果的です。

問いかけ:ここでは、水平思考の考え方が一つではないことをご紹介するために、あえて前回ご紹介した「賢い」というキーワードを省いて考えています。

■いつやるの? いつやるの? 今でしょう!

 前回もお話ししましたが、思考法を習得するためには普段から使い続けるしかありません。考え方を学ぶという意味では、シチュエーション・パズルや頭の体操を使うのもアリだと思います。しかし、これらはあくまでクイズですので、これだけで実際に起こる問題に対応するのは少し難しいように感じます。

 筆者が思う一番良い思考法の習得方法は、普段から思考法を使って物事を考える癖づけをすることです。最初は完ぺきでなくても大丈夫です。使い続けることを意識していると、おのずと身体の中に思考法が染みついていきます。そうなると、後はいくらでも応用が利くようになってきます。水平思考をマスターしたい! と思われいる方はぜひチャレンジしてみてくださいね。

Comment(4)

コメント

今更?

記事の掲載からかなりたった状態でたまたま見つけました。

「両車とも1キロメートルの速度」
なので単位はそろっているものとして別解。

「山道のため道幅は狭く」ゆえに20km先には必ずゴールがある。
「この道路アスファルトで舗装された見晴らしのいい一本道」だが、
ゴール地点から先も舗装された道幅は50km。
ゴール地点は自転車1台分の穴が開いて山道の下り坂が存在する。
山道コースは地下に潜るかのごとく下り、狭い道を20km進めば、
アスファルト舗装の3km先ゴールにひょこっと顔を出してゴールする。

いかがでしょうか?

今更?さま、

コメントありがとうございます!
古い記事でしたが、お読みいただいてうれしいですっ!

さて、今更?さまの回答ですが、ちょっと意味が分からない部分があり、私の脳内で補完させていただきました。(間違ってたらゴメンなさい)

> ゴール地点は自転車1台分の穴が開いて山道の下り坂が存在する。
> 山道コースは地価に戻るかのごとく下り、狭い道を20km進めば、
> アスファルト舗装の3km先ゴールにひょこっと顔を出してゴールする。

とあるので、ひょっとしたら、山道コースのスタート地点に穴が空いているような設定に思えました。
また、「アスファルト舗装の3km先ゴール」がどの地点からの3km先からが分からなかったので、アスファルトコースのゴール3km手前の地点に出てくると推測すると、今更?さまの仰るように穴に入って超スピードで駆け下りてゴール
するようになるので、この答えはもちろんアリですね!

ただ、

>ゴール地点から先も舗装された道幅は50km

があり、すごくイイ着眼点だと思ったのですが、これがどのような形で答えに活かされているのかが分からなかったです。。。
でも、この着眼点は水平思考ならではの着眼点ですばらしいです!!!

今更?

スタート地点は、南北に線を引き
東側に広大なアスファルト舗装コース、
西側に切り立った山に挟まれる自転車1台分のコース。
アスファルト舗装はスタート地点から3km先にたしかにゴールがあるが、
道幅が異常に広いため、円弧上に探索が必要。
道幅は50kmである必要な無いですが、
現在地と方位を知る術がなければ探索不能で
砂漠にダイヤを見つける状態。
山道側はスタートしてすぐ下り坂 というのは、
いずれトンネルに入り、トンネル状の上り坂を抜けたら
アスファルトに囲まれたゴール地点にひょこっと顔を出す状態。
アスファルトコース側から、見晴らしがよいが見つけにくいゴールであり、
ゴール部は山道コースにつながる小さい穴(トンネル)状の傾斜であればよい。
ゴールフラッグの必要はなく、地面に小さくゴールと書かれてあるか
あるいは、穴状傾斜をふさぐようにチェッカーフラッグを敷いてあれば
山道(トンネル)の終わり=山道ゴールとなる。
と考えました。

文字に起こして説明してみるって、けっこう大変だということと、
図にすればすぐわかることを人に伝えるのが難しいことだと、
改めて思い知らされました。

今更?さま、

補足説明ありがとうございます。
状況がよくわかりました!

道幅50Kmの視点も素晴らしいと思いましたが、道幅が異常に広いため、探索しながら進まなければならないという視点も思わず「なるほどっ!」と声をあげてしまいました(笑)
字面で考えるとただ直線に進めばいいと思いがちですが、実際に自分がそこに立ってみると広大な大地の遥か無効にゴールがあり、そこまでまっすぐ進める保証はありません。そう考えると、探索しながら進まなければならないという考え方は大いに納得できます。

そこに着眼されたのは本当に素晴らしいと思いました。お見事です!

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