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第30回 四方山話(13) 新天地に旅立つ君へ

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 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。

 筆者は、大学生の方とお話をする機会があります。筆者に限らず、社会人と知り合いになる大学生の方は大勢いますが、このような方は皆アクティブに活動されており、とても頼もしいと感じます。今回はこれから社会人として活躍される学生の方について書きたいと思います。

■学生時代に活躍していた人が社会人になったら

 学生時代、学業の他により良い将来を創り出すために自己啓発的な活動に精を出される方がおられます。学生の時分からたくさんの社会人と触れ合い、交流を深め、社会人になったときの思いをはせ、アクティブに活動されるそのバイタリティは、学生ならではのパワーだと思いますし、その想いや理想が現実のモノとなればいいと心から思います。しかし、同時にその想いの強さ故の危うさも感じずにはいられません。これは社会人であれば誰しもが感じることではないかと思いますが、学生時代の頑張りや活躍と社会人になってからの役割とはまったく別ものだからです。

 例えば、学生時代、全国規模のサークル活動を組織し、たくさんの人を巻き込み、自分の心血を注いでサークル活動に勤しんでいた人がいたとしましょう。その人は社会人になってからも自分の選んだ会社でサークル活動時代のように活躍し、会社を大きくし、自らも大きくなり、充実した社会人をイメージしているかもしれません。しかし、実際に社会人になって配属された場所が自分が想い描いていた仕事と違い、まったく活躍できる場所がないとしたら、その人はどうなっていくでしょう?

■1年後の新卒社員の姿

 筆者の会社でも、毎年新卒社員が入社します。社会人になりたての新卒社員は皆生き生きとしており、大きな夢や理想を語ってくれます。しかし、1年経った後に同じことを言ってくれる人はほぼ誰一人としていません。現実を直視し、現実の中でうまく立ち振る舞うようになったその姿は、もはや1年前の新卒社員ではありません。それだけITエンジニアの仕事が大変といえばそれまでかもしれません。また、そのように立ち振る舞うことが社会人としての在り方だといってしまえば、それまでかもしれません。しかし、筆者はこれが現実だと思います。

■学生時代のように立ち振る舞えない理由

 このようになってしまう理由として、筆者は以下の3つがあると考えます。

《学生時代のように立ち振る舞えない理由》

  • 目標の立て方
  • 活動時間の取り方
  • 交渉の仕方

 「目標の立て方」とは、今のあなたがやるべき適切な目標は何なのかを考えることです。学生時代、サークル活動を組織していたりすると、いきなり社内のマネジメントに手を出そうとか、社内の管理ルールを改善しようだとかを考えつくかもしれません。また、いきなり経営視点に立ち、会社の経常利益50%アップを目指す! といった目標を掲げようとするかもしれません。その発想自体は間違いではない場合もありますが、それを新卒社員が行うには現実的ではありません。始めから対処しきれない目標を立てたとしても、それは実現できない目標にしかなりません。新卒社員には新卒社員なりの立場があり、その人だけが行える目標があるはずです。まずは、今のあなたにとって適切な目標を立てる必要があります。

 「活動時間の取り方」とは、あなたの目標を実現するための活動時間をどうやって捻出するかを考えることです。学生の時分と違い、社会人になると、仕事で拘束される時間が飛躍的に多くなります。特にITエンジニアはその傾向が高く、通勤時間を含めると、1日16時間(7時~22時ごろ)拘束されるケースもあります。こうなると、平日は目標を実現するための時間を作り出せなくなり、休日の時間を使わざるを得ません。しかし、休日に何か別のことをやっていると、そちらが犠牲になることもあります。このように、社会人になると時間の使い方を考えなければならないため、目標に応じた活動時間を作り出すことを考えておく必要があります。

 「交渉の仕方」とは、一人で目標を達成できない場合、どのようにして他人の協力を仰ぐかを考えることです。学生の場合、基本的に協力を要請するのは対学生になるので、それほど几帳面に考える必要はないかもしれません。また、対企業や対社会人へ依頼するにしても、相手は学生からの依頼であることを前提に話を聞いてくれますので、ある程度は寛容に対応してくれるケースが多いと思います。

 しかし、社会人になってからは、依頼する人に応じた依頼の仕方をしなければなりません。例えば、協力を依頼する人が同僚や気心の知れた人ならば、学生時代のように口頭で依頼するのもいいでしょう。ところが、依頼する人が上司であったり、ときには社長や役員である場合には、きちんと段取りを踏み、企画書や提案書を準備しプレゼンテーションをしなければならないかもしれません。しかし、こういった経験がないと、交渉事自体行うことができません。このように、交渉の仕方については、相手に応じた適切な対応が必要になります。

 この3つの理由をクリアすることができれば、その人は社会人になってからも自分の夢や理想を1つずつ実現していくことができるでしょう。しかし、これらの理由から、その実現には困難がつきまとうことは容易に想像できます。

■新天地に旅立つ君へ

 これから新しく社会人になる人たちは新しい場での活躍に思いをはせる反面、自分の想いや理想が実現できるかどうかの不安もあることでしょう。そして、社会人になってからは、現実の壁にぶち当たり、挫折しそうになることもあるでしょう。忙しい毎日に忙殺され、自分のやりたいことを忘れてしまうこともあるでしょう。そんなとき必要になるのは、学生時代に持っていたあなたの想いです。そこに立ち返ってみてください。そのうえで、

  • 想いや志を実現する形は1つではないということ
  • 無理だと感じたら、今できることが何かを考えてみる
  • あきらめるのはもうちょっと後にして、今ある環境でやれることを精いっぱいやってみる

を意識し、先に挙げた3つの理由をもう一度見直してみてください。

 あなたの想いや志を実現することこそがあなたにとっての唯一無二のキャリアになります。あなた自身の可能性を信じて、がんばってください!

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